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気鋭の若手たちが制作するアニメ『異世界ワンターンキル姉さん』 現場づくりのカギは「信頼関係」

マグミクス / 2022年10月24日 12時0分

気鋭の若手たちが制作するアニメ『異世界ワンターンキル姉さん』 現場づくりのカギは「信頼関係」

■自分自身の目で見て信じた「才能」を起用する

 毎クール、次々に生み出されるTVアニメ。その制作を担うクリエイターにも、新進気鋭の若手が登場しています。2023年放送予定の注目作『異世界ワンターンキル姉さん ~姉同伴の異世界生活はじめました~』を中心になって手がけるのは、アニメ制作を本格的に開始したばかりのスタジオ「月虹」に集った若いスタッフたちです。

 同作品で監督をつとめる高木啓明さん、キャラクターデザインを担当する濱田悠示さん、制作統括の野田涼平さんに、若いスタッフとスタジオならではの、アニメ作りにかける目標や意気込みについて聞きました。

* * *

──高木さんが監督、濱田さんがキャラクターデザイン、野田さんが制作統括……それぞれの役職を務められるのは今回初めてだと聞きました。

野田涼平さん(以下、野田) そうですね。濱田くんとは新人時代からの付き合いで、高木さんと知り合ったのは3~4年前になるでしょうか。濱田くんは昔からキャラクターデザインをやりたいと口にしていましたし、高木さんからは、監督になるにはどうしたら良いのだろうと相談を受けていました。

──その縁があって、野田さんから声をかけたのですね。

野田 たとえ未経験であっても、自分自身の目で見て才能を信じた人を起用したいと思ったんです。そのこと自体、経験や実績ばかりを重視する昨今のアニメ企画側の潮流に、一石を投じる意味があると考えました。それに、月虹の代表の平田さんからは、お前の好きなようにやって良いとお墨付きをもらっていますから(笑)。

──皆さん全員が30代になったばかりです。TVアニメの制作現場を引っ張るメインスタッフとしては、異例とも言えるほど年齢構成が若いように思います。そのうえ、この作品は、月虹としては初めての元請作品です。プレッシャーはありませんか?

濱田悠示さん(以下、濱田) 正直、ありますね。キャラクターデザインには、作品の絵における正解はこうだと、一定のクオリティを保ちつつ他のスタッフに示す責任がありますから。ただ、その責任を担うからこそできることがあるとも感じています。自分自身の美的センスやフェチ的なものを最終的な画面に乗せることができるのは、キャラクターデザイン、つまり総作画監督ならではだと思います。

──制作現場のトップに立つ監督は、重圧を一身に負う最も孤独なポジションです。高木さんはそのなかで、どのような想いや信念を持って初監督作品に臨まれていますか?

高木啓明さん(以下、高木) 作品の質を引き上げるよう努力しつつも、予算やスケジュールは遵守しなければならないという問題は、常について回ります。そのせめぎ合いを続けつつ、ギリギリまで自分の望む表現を求めたいと思っています。

野田 大切な原作をお預かりしているわけですからね、限られた条件であっても最善を追求するのは、アニメ制作スタッフの責任とも言えるのではないでしょうか。

「上下関係」の否定ではない 締めるべき場所にベテランの力も

──若いスタッフやスタジオだからこその、動きやすさなどはあるのでしょうか?

高木 理不尽な上下関係で押さえつけられる……といったようなことはないので、色々なポジションにいる人が平等に意見を出し合える良さがあると思います。とても作業しやすい環境をつくってもらえていますね。

野田 実は演出に限らず制作でも、「上の意見は絶対だから」という理由で物事が決まってしまう例は少なくないですからね。

濱田 アニメーターの場合は、スタジオにデスクを置いて仕事をしていても、2~3年経てば他へと渡り歩いていくことが多いんです。そのため、誰か1人を「師匠」と仰いでそこに上下関係が生まれるような例は、むしろ少ないかもしれません。

──濱田さんもスタジオを渡り歩く過程で、野田さんと知り合ったのですか?

濱田 最初に入った制作スタジオで、意気投合したのが野田さんでした。古くからの上下関係には良かれ悪しかれ従わざるを得ない面もあるでしょうが、それだけでなく、「ちょっと手伝ってよ」「相談に乗ってよ」と語り合える人間関係を築けるかどうかが、とても大きいと思います。

高木 自分も上下関係で苦労してきた方ではないですが、上下関係でなく信頼関係で相談に乗ってくれる仲間がいるのは、本当にありがたいと思いますね。

──『異世界ワンターンキル姉さん』では、監督や作画監督や制作統括だけでなく他のポジションも、若いスタッフで固めているのでしょうか?

野田 今のアニメ制作工程でとりわけ重要視されるようになった「撮影」などは、経験豊富なベテランの方にお願いしています。若いスタッフ同士の仲間感覚を強みにするのは意図していますが、それだけで現場は持ちませんから。先輩方に厳しく締めるべきところを締めていただくというのも、仲間感覚と同じように重視しています。

──上下関係を否定するというのではなく、必要な部分は取り入れるというわけですね。非常にバランスの取れた現場づくりをされている印象を受けます。

野田 何もない状態から制作ラインを立ち上げ、ここまでの状態まで持ってこられたのは、全員の力があってこそだと思います。感謝の気持ちしかないですね。

■アニメーションとしての基本に立ち返る

『異世界ワンターンキル姉さん』主人公の少年、軍場朝陽。現実世界で交通事故に巻き込まれたことがきっかけで、姉の真夜とともに異世界を冒険することに (C)2023 このえ・田口ケンジ/小学館/「異世界ワンターンキル姉さん」製作委員会

──皆さんがそれぞれ初めて務めるポジションで、『異世界ワンターンキル姉さん』という作品を通して成し遂げたい目標のようなものはありますか?

濱田 キャラクター設定を起こしはじめた時から、あくまで原作のテイストを残しつつ、描き味(あじ)はシンプルにしたいという目標を持っています。瞳の中のハイライトを何重にもかさねるといった重たい豪華さは避けたいなと。コメディーパートも多い作品ですから、デフォルメ調のギャグ顔を画面に出しても違和感が少なくなるように、作画的な振れ幅も持たせておく必要があると考えています。

──最近のアニメは、キャラクターの瞳が非常に複雑に描かれる傾向がありますね。

濱田 『異世界ワンターンキル姉さん』では、意識してそれに逆行してみたいんです。アクション作画のためにも動かしやすさを重視するという、いわばアニメーションとしての基本に立ち返る方針です。

高木 もちろん、演出上の意図から画面を豪華にしたい部分では、思い切りそちらに振ってもらってもいますよ。

濱田 キャラクターの体つきを、それぞれの個性が出るようきちんと描き分けたいという目標もあります。鍛えていて強いのであればできる限りそれらしくしたいし、筋肉の影のつけ方なんかにもこだわりたいでですね。自分は子供の頃に絵を描きはじめた頃から大好きな『北斗の拳』の影響もあるのかもしれません。

高木 『異世界ワンターンキル姉さん』は、コミカルが基本路線です。昔からそういう作品が好きで、自分もそういったアニメを演出してきた経験があります。原作の持ち味を最大限に活かしつつ、自分なりのコミカルさも追及したいですね。

──コミカル作品のなかで、影響を受けたり印象に残っていたりするものはありますか?

高木 いくつもあるので絞るのは難しいですが、『ミュークルドリーミー』という作品では、強い思い入れをもって演出をやらせていただきました。そこで経験したことや学んだことを、『異世界ワンターンキル姉さん』でも活かしていきたいですね。

※高木啓明さんの「高」は、ハシゴの高が正しい表記となります。

(取材/構成:おふとん犬)

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