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TVアニメ『異世界ワンターンキル姉さん』 制作を主導する若手たちの「コミュニケーション術」とは

マグミクス / 2022年10月25日 13時0分

TVアニメ『異世界ワンターンキル姉さん』 制作を主導する若手たちの「コミュニケーション術」とは

■「話しやすさ」や「意見の出しやすさ」が大事

 2023年に放送予定のTVアニメ『異世界ワンターンキル姉さん ~姉同伴の異世界生活はじめました~』は、小学館の運営するマンガアプリ・サンデーうぇぶりに連載中の人気「姉」漫画が原作。気鋭のスタジオ「月虹」に集った若いスタッフが、そのアニメ化に挑んでいます。

 それぞれが初めて職務を担うことになる、監督の高木啓明さん、キャラクターデザインの濱田悠示さん、制作統括の野田涼平さんに、引き続きお話を聞きます。

* * *

──『異世界ワンターンキル姉さん』には、コミカルな場面だけでなく、迫力あるバトルシーンなどアクションの見せ場も多くあります。その点を演出するにあたって、こだわりなどはありますか?

高木啓明さん(以下、高木) アクションに限った話ではないですが、子供の頃に夢見たアニメに少しでも近づけられるよう、精いっぱいの努力をしているつもりです。ワクワクしながらテレビをつけて、期待していたのとちょっと違っていたら思わず腹を立ててしまうような子供でしたから(笑)。視聴者の皆さんに真摯に向き合いつつも、あの頃の自分自身を満足させるものを作りたい……いつもそう考えています。

──そんな監督の夢を形にするために、制作統括の野田さんは、どんな方針で現場を運営されているのでしょうか?

野田涼平さん(以下、野田) 打ち合わせの冒頭から、スケジュールや予算を突きつける言い方はしないように心がけています。もちろん、この作品にも厳しい制限は課せられています。それでも、「だから分かってるだろうな?」というように上下関係を盾にした要求だけをしてしまえば、それだけで意見が出にくくなってしまうからです。

──アニメーションの制作現場は打ち合わせの連続ですから、「話しやすさ」や「意見の出しやすさ」は大事になってきそうですね。

野田 おっしゃる通りです。信頼関係と上下関係のバランスを取りやすい環境を、月虹というスタジオに整えてもらえています。環境づくりという面では、原作者さまや小学館さまにも協力をいただいていますから、これから佳境に入っていく『異世界ワンターンキル姉さん』の制作に最大限活かしていきたいですね。

──お互い、新人の頃から一緒に仕事をしたり、将来の夢や目標について相談し合う仲だったというのも、信頼関係を強めるための大きな要因になっているように感じます。

野田 それはありますね。どれだけ口で立派なことを言っても、苦しい仕事を協力してやり遂げたり、親身になって助け合ったりした経験には及びませんから。

■コミュニケーションを通して見えてくるもの

作中で圧倒的な力を振るう姉の真夜は、ただ強いだけではない、多彩な表情や魅力が描かれる (C)2023 このえ・田口ケンジ/小学館/「異世界ワンターンキル姉さん」製作委員会

──『異世界ワンターンキル姉さん』には、メインヒロインの軍場真夜(いくさば まや)をはじめ、魅力的なキャラクターが多数登場します。キャラクターを描くにあたって、心がけている点やこだわっている点はありますか?

高木 例えば真夜は、最強のチートステータスで弟を守る、強くてカッコイイ女性です。そして、弟を心の底から溺愛しています。その溺愛のしかたが原作で示されているラインを越えてしまわないよう心がけつつ、強くてカッコイイだけでない一面も描いていけたらと思っています。

──真夜は媚びたような表情は見せないものの、意外と乙女だったりしますよね。

高木 時には恥じらいをもって照れることもある、そんな可愛らしい一面も、視聴者の皆さんにお見せできれば嬉しいですね。

濱田 単に強いのではなく、美しくしなやかな女性というのが真夜なんです。彼女の強さは鍛え上げて身につけたものではなく、普段の生活の中で身についたものを、意識してコントロールしている感じだと思います。ですから、しっかりと強さは見せつつもマッチョにはならないよう、しなやかさを意識して作画しているつもりです。

野田 弟の軍馬朝陽(いくさば あさひ)を溺愛しつつ、それだけではないのも面白いところですよね。実はちゃんと、朝陽の男の子としての気持ちは理解しているし、無敵の力で守りつつも成長の後押しをしてくれる。もうひとりの姉とも言える、キルマリアについてもそうです。

濱田 身内である朝陽が強くなっていくのを、愛情をもって見守り喜んでくれる人がいる。完成したシナリオを読んで、一番良いなと思ったのはそこですね。

高木 新型コロナウイルスの感染拡大によって、アニメーション制作の現場における意思疎通のハードルが上がっているのは事実です。それでも、上下関係とは異なるコミュニケーションを通して、こんなふうにキャラクターや作品全体について話し合う機会はあります。そういった会話を通して見えてくることは、とても多いんじゃないかと思っています。

──例えば制作現場に入ったばかりの新人であれば、監督やキャラクターデザインに対しては、上位のポジションだから積極的には声をかけづらいと感じるはずです。その壁がないというのは、大きいかもしれませんね。

野田 時々、「おしゃべりし過ぎで作業の手が止まってるよ?」と、注意したくなる時はありますが(笑)。

■必要不可欠な視野の広さ

──監督やキャラクターデザインや制作統括という立場であれば、皆さんの年齢であっても、他のスタッフに対して注意や指導をしなければならないこともあるはずです。

野田 ありますね。自分がこれまでに学んできたことを活かして、その責任についてもきちんと果たせるように心がけています。

濱田 最初にお世話になった制作スタジオに、作画室という部署があったんです。そこの室長の方には、作画技術だけでなく注意や指導の仕方についても、たくさんのことを教わりました。人間というのは間違いを犯すものですし、同じ間違いを繰り返すこともあります。それに、ひとりひとり違うのが人間ですから、個人差もあります。だからこそ、怒ってはいけない。目の前にいる人に、どうしたら良い方向に進むかを、忍耐強く伝えなければならない。

──制作現場を動かすための精神性のようなものも学ばれたんですね。

濱田 アニメーターのように腕一本で現場を渡り歩く技術職であっても、人間としての視野の広さは必要不可欠であると、その方から教わりました。本当の意味でものの見方が定まっていれば、たとえ上下関係があったとしても、そう簡単に怒ったり意見を無理強いしたりはしないはずです。

高木 自分とは違う感覚や考え方でも理解しようと努力し、説得力があると思えば受け入れる。そうしなければ、どうしても現場は回っていかないですからね。また、受け入れることで作品をより面白くするのが、監督としての役割だとも思っています。もちろん、クリエイターとして譲れない一線は持っていますし、避けがたい意見のぶつかり合いというのもあります。けれど、それがスタッフ間の軋轢(あつれき)として尾を引かないのが、この現場の一番良いところではないでしょうか。

──良い雰囲気の良い現場でアニメ化された『異世界ワンターンキル姉さん』を見るのが、今からとても楽しみです。

高木 スタッフのこだわりを詰め込んだ、楽しい作品になっているはずです。

濱田 楽しんでいただくことが、何より大切ですからね。たくさんキャラクターが出てきますから、それぞれのお気に入りを見つけてくれると嬉しいですね。

野田 原作の面白さを最大限映像化しつつ、ここにいる3人だけでない、スタッフ全員のこだわりも各話ごとに盛り込んでいます。ぜひ、放送を楽しみにお待ちください。

※高木啓明さんの「高」は、ハシゴの高が正しい表記となります。

(取材/構成:おふとん犬)

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