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初代から10年後に放送開始した『あしたのジョー2』 再スタートには「紆余曲折」も

マグミクス / 2022年10月14日 7時30分

初代から10年後に放送開始した『あしたのジョー2』 再スタートには「紆余曲折」も

■「絶対にほかの人にやらせたくない」の熱意

 1970年に放送され、最高視聴率29.2%を記録するほどの人気となったアニメ『あしたのジョー』は、アニメ版が連載の内容に追いついてしまったことから、カーロス・リベラ戦を終えた後に矢吹丈(以下、ジョー)が放浪の旅に出るシーンで放送終了となりました。

 それから約10年の時を経て、1980年10月13日に放送開始したのが、アニメ『あしたのジョー2』でした。『あしたのジョー2』第1話は、ジョーが放浪の旅を経て東京へと戻ってきたシーンから始まります。同作はジョーが力石を喪ってから放浪の旅に出たことが示唆される状況から始まっており、ストーリーとして初代アニメとの連続性はないのですが、まるで初代の続きを見ているような錯覚を覚えます。

 初代アニメで監督(チーフ・ディレクター)を務めた出崎統氏は、『2』では演出として参加しています。アニメーションの絵の設計図ともいえる絵コンテも、1話を含め大半の回で出崎氏が「さきまくら」の名義で担当しています。「放浪からの帰還」というシチュエーションの連続性は、制作スタッフが同じだったことから可能になった演出なのかもしれません。

 ただし、出崎氏の参加は簡単な話ではありませんでした。初代を制作したのは手塚治虫氏が設立した虫プロダクションでしたが、同社の経営悪化に伴い、出崎氏は1972年に初代のプロデューサー・丸山正雄氏をはじめとする『あしたのジョー』を作り上げたスタッフとともに独立し、アニメ版『DEATH NOTE』などで知られる制作会社「マッドハウス」を立ち上げていたのです。

 なお、丸山氏はマッドハウスの後に『呪術廻戦』のアニメ化などで知られる「MAPPA」を設立しています。50年前の人の動きが、現代のヒット作に直接つながる動きとなっているところに歴史を感じます。

 マッドハウス立ち上げの際には東京ムービー(現:トムス・エンタテインメント)の援助を受けており、出崎氏は『エースをねらえ!』『空手バカ一代』『はじめ人間ギャートルズ』『ガンバの冒険』『元祖天才バカボン』など東京ムービーが手掛けた歴史に残る名作に数多く携わり、天才演出家として名を馳せました。

 しかし『あしたのジョー2』が企画された際に、「絶対『2』はやらない、あれは『1』だけでいいんだ」と考えた丸山氏と、「『あしたのジョー』は絶対にほかの人にやらせたくない」と考えた出崎氏の間に亀裂が入ってしまうのです。

■メイン声優陣も続投し、満を持して放送開始へ

ホセ・メンドーサとの戦いまでを描き切り、ジャケットにも真っ白に燃え尽きたジョーが描かれる、「EMOTION the Best あしたのジョー2 DVD-BOX 2」(バンダイビジュアル)

 結局、出崎氏はマッドハウスを飛び出して「スタジオあんなぷる」を設立し、『2』の制作に参加することとなったのです。その後は長く丸山氏と出崎氏がともに仕事をすることはありませんでしたが、2008年の『ウルトラヴァイオレット:コード044』で、出崎氏が監督・脚本・絵コンテを務める形で28年ぶりにタッグを組み、翌2009年も『源氏物語千年紀 Genji』で同様のポジションを務めています。出崎氏が2011年に亡くなられたことが大変に残念です。

 さて、話を『あしたのジョー2』に戻します。

 初代アニメから約10年後の制作にも関わらず、声優陣は矢吹丈役のあおい輝彦氏、丹下段平役の藤岡重慶氏らが続投となっており、あおい氏と藤岡氏がどれほどのはまり役だったのかがわかります。もし万一、このふたりが交代となっていたら、新聞の読者投稿欄に大量の抗議の声が寄せられていたことでしょう。

 本作のヒロインである白木葉子役についてはオーディションが行われた結果、田中エミさんと森脇恵さんが同点合格し、陽子役は田中さんが、紀子役は森さんが担当することとなりました。

 ストーリー面については先述した通り、力石が死に、放浪の旅に出ていたジョーが再び東京に姿を現すところから始まります。街をさまよっていたジョーは、かつて死闘を繰り広げたウルフ金串がチンピラの用心棒に身を落としたことを知ってしまうのです。

 もめごとの末にウルフはゴロマキ権藤を名乗る喧嘩屋に叩きのめされたところにジョーが割って入り、権藤をボディーブローで殴り倒します。しかしそこに警察がやってきたためジョーと権藤は一緒に逃げ出し、別れる間際に権藤は「あんたの試合、できたらまた観てぇ」と言い残していったのです。

 そしてジョーは、泪橋の丹下拳闘クラブへと久々に顔を出し、マンモス西と丹下段平に驚きと喜びをもって迎えられたのです。

※出崎統氏の「崎」の字は、正しくは「立さき」になります。

(早川清一朗)

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