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初代ガンダムの「盾」、ナゼ必要? 「攻撃から身を守る」だけではない、重要な役割

マグミクス / 2022年10月28日 6時10分

初代ガンダムの「盾」、ナゼ必要? 「攻撃から身を守る」だけではない、重要な役割

■制作上でも重要な役割があった!

『鉄腕アトム』から始まる日本のTVアニメーションに登場するロボットたちは、常に「戦う」存在として位置づけられてきました。そこには無線操縦するものから、人が乗り込んで操縦するもの、人工知能を持った意識のあるもの、変形や合体をするもの、人間の等身大ロボット、何十メートルもある巨大ロボットなど、さまざまなものがあります。特に1970年代後半から2000年代にかけてのアニメ番組には、数多くの「戦闘用人型ロボット」が登場しました。なかでもサンライズ(現・バンダイナムコフィルムワークス)では、まるで人間のように銃器や刀などを使いこなし、豪快で華やかなアクションを繰り広げる巨大ロボット作品を数多く制作しています。

 そんななかには、いわゆる「盾」を持ったロボットもありました。でも、相手の攻撃から身を守るために使われる盾を、本来、丈夫なはずのロボットが持っているというのも不思議な気がします。

 当時「リアルだ」と言われた『機動戦士ガンダム』の主役ロボットであるガンダムも大きな盾を持っていました。まるでサーフボードのような、ほぼ全身が隠れてしまう大きさの「ガンダムシールド」は、元々は、玩具での遊びのバリエーションを広げる付随アイテムとして作られたものですが、その大きさやデザインのイメージには、当時、実際の事件で警察の機動隊が持っていた盾があったようです。

 物語のなかでは、敵から放たれる銃弾やヒートホーク(モビルスーツのザクが持っている武器)などの打突兵器の攻撃から身を守る、時には、盾そのものを刃物のように使ったり、相手に投げつけたりしてしまうような荒々しい使い方もされています。また、宇宙から大気圏に突入するときには、この盾で突入時に生まれる高熱から機体を守る役目も果たしました。

 こうした使用法は、脚本家や演出家などが、その時々のドラマに併せて考えたものですが、実はこのような画面作り以外にも、この盾にはちょっとした意味がありました。盾を体の前に構えると、盾に隠れた部分は描かなくて済むのです。盾が大きければ大きいほど隠れる部分は多くなり、描く線の数も塗る絵の具の数も減る、というわけです。「そんなセコい理由で!」と思われるかもしれませんが、アニメーションを制作する側にとって、こうした工夫はとても大切なことなのです。

 当時のサンライズでは、30分もののTVシリーズの場合、通常3000~5000枚の動画を描いていました。複雑な絵になればなるほど、一枚の絵を描くのに時間がかかりますから、少しでも早く作業を進めるには、作画での線の数を少なくすることも要求されます。今のアニメーションと比較すれば『ガンダム』当時のアニメの絵は単純で線も多くはありません。しかし、全てが手作業だった時代、週間ペースで年単位のシリーズを制作するためには、少しでも作業の負担を減らすことは大変重要なことでした。

 そのために、できあがったデザイン画をそのまま作画するのではなく、アニメーターが描きやすいように、作画監督などが作画に支障がない線を省いた「作画用」の設定画(キャラクター表)を書き起こすことも、ごく普通に行われていました。

 こうした制作の事情を考慮して出来ているものは、実はTVシリーズの裏側にはたくさんあります。そうした事情を上手に物語や画面のなかに取り入れ、使いこなしていくのも、TVアニメーションに携わるスタッフに求められるプロとしてのスキルだったわけです。

 こんなお話をすると、ガンダムシールドは「手抜き用のアイテム」と思われそうですが、制作者たちは、こうした制約を逆手に取り、戦いのバリエーションを増やすだけでなく「ロボットが盾に身を隠す」という演出で、戦場の危機感や恐怖に臨場感を持たせ、「丈夫で壊れないスーパーな存在だったロボットとガンダムは違う」というリアル表現にも役立てたのです。

【著者プロフィール】
風間洋(河原よしえ)
1975年よりアニメ制作会社サンライズ(現・バンダイナムコフィルムワークス)の『勇者ライディーン』(東北新社)制作スタジオに学生バイトで所属。卒業後、正規所属にて『無敵超人ザンボット3』等の設定助手、『最強ロボ ダイオージャ』『戦闘メカ ザブングル』『聖戦士ダンバイン』『巨神ゴーグ』等の文芸設定制作、『重戦機エルガイム』では「河原よしえ」名で脚本参加。『機甲戦記ドラグナー』『魔神英雄伝ワタル』『鎧伝 サムライトルーパー』等々の企画開発等に携わる。1989年より著述家として独立。同社作品のノベライズ、オリジナル小説、脚本、ムック関係やコラム等も手掛けている。

(風間洋(河原よしえ))

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