11月3日は「手塚治虫」の生誕日 『マグマ大使』など特撮ドラマになったマンガ作品
マグミクス / 2022年11月3日 6時10分
![11月3日は「手塚治虫」の生誕日 『マグマ大使』など特撮ドラマになったマンガ作品](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/magmix/magmix_119209_0-small.jpg)
■時代の流行に合わせ、巨大ヒーローを描き出す
11月3日は「文化の日」ですが、「マンガの神様」手塚治虫氏が生まれた生誕日でもあります。手塚氏は1928年(昭和3年)に、大阪府豊中市に生まれました。「明治節」に生まれたことから、「治」と名付けられたそうです。子どもの頃からマンガだけでなく、昆虫も大好きで、小学生時代から「手塚治虫」というペンネームを使っていました。やがて、医学部に通う学生漫画家として、1946年(昭和21年)にプロデビューを果たし、戦後のマンガ界を代表する存在となります。
人間よりも人間らしい、高性能ヒューマノイドを主人公にしたSFマンガ『鉄腕アトム』は、手塚氏がみずから設立した「虫プロダクション」によって、1963年にTVアニメシリーズとしてフジテレビ系で放映されました。明るい未来を象徴するアイコンとして、アトムは今も人気の高いキャラクターです。他にも『どろろ』『海のトリトン』『ミクロイドS』など、さまざまな手塚作品がアニメ化されています。
マンガやアニメの印象の強い手塚氏ですが、怪獣ブーム全盛期だった1960年代~70年代には巨大ヒーローものも執筆しています。手塚氏が関わった特撮ドラマを振り返ります。
■金ピカの巨大ヒーロー『マグマ大使』
手塚治虫原作の特撮ドラマとして思い出されるのは、1966年7月4日にTV放映が始まった『マグマ大使』(フジテレビ系)です。同年7月17日にスタートした『ウルトラマン』(TBS系)よりも13日だけ早かったことになります。日本初のカラー放送による特撮ヒーロー番組として、『マグマ大使』は歴史に名前を刻んでいます。
主人公となる「マグマ」は、全身金ピカの巨大ヒーローでした。歌舞伎の連獅子を思わせる長髪をなびかせて、怪獣たちと戦いました。マグマは「ロケット人間」という設定で、ロケットが変形して、マグマとなります。マグマの変身&金ピカぶりに、当時の子どもたちは魅了されました。
悪役のゴアも、子どもたちの脳裏にくっきりと記憶されています。地球侵略を企む凶悪宇宙人ゴアは、原作マンガでは愛嬌がありますが、実写版はリアルな「鬼」を思わせる強烈なビジュアルとなっており、小さな子どもなら泣き出してしまうレベルでした。人気声優の大平透さんが着ぐるみに入って演じていたことは、ずいぶん後から知りました。
マモル少年を演じたのは、のちに人気アイドルグループ「フォーリーブス」の一員となる江木俊夫さんです。マモル少年が笛を一度吹くと、子どものロケット人間「ガム」、二度吹くとお母さんの「モル」、三度吹くとお父さんの「マグマ」がロケット姿で飛んできます。家族で変身するヒーローもの、という設定もユニークな『マグマ大使』でした。
■手塚治虫の考えを変えたせたのは「ピープロ」
幻の特撮番組といわれる『サンダーマスク』主題歌LP(東芝レコード)
マグマの腹部から発射されるミサイルや爆破シーンは、アニメーションで表現されるなど、実写とアニメが合成されている点も、『マグマ大使』は印象的でした。円谷プロとはひと味違う特撮スタイルを生み出したのは、うしおそうじ氏が設立したアニメ&特撮の制作会社「ピー・プロダクション」です。
うしおそうじ氏が『マグマ大使』の実写化を申し込んだところ、原作者である手塚治虫氏は、最初は難色を示したそうです。1959年にTBS系で実写ドラマ化された『鉄腕アトム』の造形が、原作イメージとあまりにも掛け離れていたからです。実写版『鉄腕アトム』に失望し、手塚氏は自分の手でアニメ版『鉄腕アトム』に取り組んだという経緯がありました。
それでも、うしお氏は「パイロット版として、第1話だけ作らせてくれ。それを見て判断してほしい」と実写化を手塚氏になかば強引に認めさせます。うしお氏はマンガ家としての顔も持ち、手塚氏とは旧知の仲。アニメ版『鉄腕アトム』の下請けを「ピー・プロダクション」が請け負っていたこともあり、ふたりの間には深い信頼関係があったのです。放映された実写版『マグマ大使』は視聴率30%を超える人気番組となり、手塚氏は大喜びしたそうです。
その後の「ピー・プロダクション」は、特撮ドラマを中心に制作するようになり、『スペクトルマン』『怪傑ライオン丸』『電人ザボーガー』などのカルト的な人気作を放つことになります。
■実写版とは異なるコミカライズ版『サンダーマスク』
特撮ドラマ好きな方なら、本多猪四郎監督らが演出で参加した『サンダーマスク』も挙げるかもしれません。こちらは手塚治虫原作ではなく、「ひとみプロ」「東洋エージェンシー(のちの創通)」によるTV企画が先行し、手塚治虫氏がコミカライズしたという珍しいケースです。
1972年~73年にTV放映された『サンダーマスク』(日本テレビ系)は、ソフト化されていないことから「幻の特撮ドラマ」と呼ばれています。実写版の全エピソードを視聴するのは現在では難しい状況ですが、コミカライズ版の『サンダーマスク』は秋田書店などで文庫化されているので、手軽に読むことが可能です。手塚治虫氏が主要キャラクターとして登場し、サンダーマスクのビジュアルデザインを考案するなど、実写版とはまったく異なるストーリーが展開されています。
全1巻で終わったコミカライズ版『サンダーマスク』ですが、主人公・命光一のラブロマンスを絡め、SFマインドにあふれた好編となっています。TV局とタイアップした企画であっても、決して手を抜こうとはしなかった手塚氏の情熱のほとばしりが感じられます。
自由と平和を愛し、文化をすすめることが、国民の祝日である「文化の日」の趣旨だそうです。手塚治虫作品を楽しむのに、ぴったりな1日ではないでしょうか。
(長野辰次)
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