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2年間完走、アニメ『ダイの大冒険』が復活できた複雑な事情 放送中は言えなかった「ネタバレ演出」

マグミクス / 2022年11月5日 10時10分

2年間完走、アニメ『ダイの大冒険』が復活できた複雑な事情 放送中は言えなかった「ネタバレ演出」

■改めて見直すことで分かる、『ダイの大冒険』の秘密

 最終回放送後も人気が衰えることがない、TVアニメ『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』。いわゆる「ダイロス」とファンから呼ばれている喪失感も、2年以上の期間であたりまえだった放送がなくなったことが大きな理由かもしれません。

 ファンにはいろいろな方がいると思いますが、改めてこれまでの放送を最初から見直している人もなかにはいるようです。そしてこの「再見」によって、今回のTVアニメから『ダイの大冒険』のファンになった人にはいろいろと発見がありました。

 たとえば「アバンのしるし」です。作品では当初、卒業の証でしかなかったアイテムでしたが、終盤で大きな意味を持つようになったことはアニメを見た皆さんはご存じでしょう。この「アバンのしるし」が光るようになったのは原作マンガでは作品の終盤で設定が明かされた後になりますが、TVアニメではそれよりも前に光っていたことがありました。

 最初に「アバンのしるし」が光る描写があったのは第5話「アバンのしるし」です。ここでダイが初めてアバンストラッシュを放つ直前、「アバンのしるし」が光っています。もっとも、ここでは白く光っていたことからファンの間でも「ただの演出ではないか」と言われていました。なぜなら設定としては、ダイの「アバンのしるし」の色は青だからです。

 これに関して筆者はアニメスタッフの観測気球だったのではないか? ……と考えていました。いわゆる派手に分かりやすくして「ネタバレ」と言われることを恐れたのではないでしょうか? ここで大きな問題になるのかアニメスタッフは、ファンの感触を確かめていたのかもしれません。

 この後、「アバンのしるし」が明らかに光ったと分かるのが第9話「ひとかけらの勇気」でした。光らせたのは後に「アバンのしるし」が光らなくて一番苦労したポップです。この時、戦いから逃げようとしていたポップはまぞっほから激励されて「勇気」を奮い起こすのですが、その場面で「アバンのしるし」が緑色に光るのをハッキリと確認できました。放送当時、原作ファンが驚いたのは言うまでもありません。

 また、第28話「ダイの秘密」ではグランドクルスを放つ直前に、ヒュンケルの左拳のなかから紫色の光が発せられました。この左拳には「アバンのしるし」が握られており、ヒュンケルの「闘志」に反応したことは間違いないでしょう。

 他にも一瞬で判別が難しいのが第30話「ポップの覚悟」です。この時、バランに対してメガンテを仕掛けたポップ。その爆発の際にメガンテの黄色い光に混じって緑の光が見えます。ただの演出とも思えますが、確かにポップの勇気に呼応して「アバンのしるし」が光ったとしても不思議ではありません。

 このように放送中はネタバレになるので大きな声で話せなかったことも気軽にできるのは、悲しいことですが最終回を迎えたならではのことです。そして原作マンガが最終回を迎えてからTVアニメ化されたからこそ、こういった先取りの演出で原作を補強できたということでしょう。

■『ダイの大冒険』復活の裏にあったファンの熱意

TVアニメ『ダイの大冒険』初期に公開されたビジュアル (C)三条陸、稲田浩司/集英社・ダイの大冒険製作委員会 (C)SQUARE ENIX LTD.All Rights Reserved.

 前述しましたが、今回のTVアニメでは完結した作品ならではの演出がいくつもされていました。これは異例のことです。なぜならマンガのTVアニメ化は原作が連載中なことが普通。完結した作品を改めてTVアニメ化することは、それほど多くありません。

 実はこれには理由があります。1991年にTVアニメ化された『ダイの大冒険』は事情により途中で終わってしまいましたが、製作の東映アニメーションのスタッフはいつか続編をスタートさせるつもりでした。

 もっとも、リスタートすることは容易ではありません。TV局、出版社、スポンサーといったさまざまな力関係が複雑にからみ合っていたからです。そういった事情から続編は事実上のとん挫、何年もの空白期間から自然に立ち消えとなりました。

 そして、想定外のことも起きます。権利関係で問題があり、『ダイの大冒険』の映像が一時的に封印状態になりました。これによりネットでの映像配信やディスクでのソフト化といったことも一時はNGとなります。そのため、長らく放送当時販売されたビデオソフトのみが唯一の映像作品となりました。

 そういった理由から20年近く動きのなかった『ダイの大冒険』が復活できた理由はなんでしょう? それは当時、ファンとして『ダイの大冒険』を見ていた世代が製作サイドに出てきたことでした。この前作TVアニメとのしがらみのない世代が率先して動いたことで、各所への対応がかえってスムーズに動き出したようです。

 こういった熱意が前作TVアニメのディスクによるソフト化までは筆者も想定していましたが、それが新作TVアニメ化という予想外のことまで引き起こしました。もちろん、この奇跡的な出来事はファンの熱気があってのことです。なぜならば企業も作品をタダでは提供できません。『ダイの大冒険』を今やっても資金が回収できるという判断ができるほど、一定数のファン層が計算できるからゆえの復活でした。

 そのため通常ならありえない最初から2年のTV放送で、100話製作というハードルの高いことが実現したわけです。そして、そのファンの気持ちに応えるため、アニメスタッフも現段階で最高と思える『ダイの大冒険』を制作しました。前述した設定の先取りを組み込んだ序盤の展開は、まさにその気持ちの表れだったと思います。

 この熱意はアニメスタッフだけでなく、新たにキー局となったテレビ東京にもありました。2022年春にあった東映アニメーションへの不正アクセス事件で放送が延期されたことがあります。この時、誰しもが『ダイの大冒険』が本来の予定よりも話数を削られてしまうことを恐れたことでしょう。

 しかし、テレビ東京は番組改編期を無視して、放送できなかった話数分の延長という英断をしました。視聴者からすれば当たり前と思うかもしれませんが、そんな簡単なものではありません。事実、現在は土曜朝の時間帯はアニメ番組を30分前倒しで放送し、穴埋め番組で新番組のない状態になっています。

 こういった各方面の熱意が『ダイの大冒険』を名作として完結させました。『ダイの大冒険』は今後もあるだろう、人気作品の再アニメ化の成功例として長く語られることでしょう。

(加々美利治)

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