アムロが戦死!? 小説版『ガンダム』の「アニメ勢は知らない」衝撃展開
マグミクス / 2022年11月9日 6時10分
![アムロが戦死!? 小説版『ガンダム』の「アニメ勢は知らない」衝撃展開](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/magmix/magmix_120032_0-small.jpg)
■ファーストだけじゃない! 「アニメと小説」の違い
好評放送中のアニメ『機動戦士ガンダム 水星の魔女』が「まさかの百合モノ!?」と大きな話題を呼んでいる「ガンダム」シリーズ。実は「なんでアムロが死んでるの!?」と1980年代にも同じような衝撃がありました。そんな「ガンダム」シリーズ初期作品の「アニメと小説の違い」を紹介します。
●アムロがまさかの戦死! 小説『機動戦士ガンダム』
アニメを手がける富野由悠季監督自らの著による小説『機動戦士ガンダム』は全3巻構成。ジオン軍の独裁者ギレン・ザビが死に、地球連邦軍とジオン軍による「一年戦争」が終わりを告げる……という結末だけを見れば同じですが、その過程は大きく異なります。
小説を読み始めて最初に驚くのが、物語の主人公が「軍属のアムロ・レイ曹長」であること。スペースコロニーのサイド7をジオン軍のモビルスーツ・ザクが襲い、アムロが何かに突き動かされるかのようにガンダムに乗り込んで撃退する……という流れは同じですが、小説では(駆け出しの)軍人として行動しています。
そのほかにも、アムロたちが乗艦するホワイトベースがペガサスという名称であったり、そのペガサスも途中で撃沈したり、シャアの搭乗機体がザクとリック・ドムのみであったり……と違いを挙げればキリがないレベルですが、その最たるものは「アムロが戦死」することでしょう。
物語のクライマックスでシャアはギレン・ザビこそが討つべき相手であるという結論にいたり、そのためにアムロやペガサス(ホワイトベース)との和解・共闘を画策します。ところが、まだニュータイプとして未熟だったアムロは、シャアの意思を伝えにきたニュータイプ、シャリア・ブルが操縦するブラウ・ブロを撃墜してしまい、死して宇宙に拡散していく彼の思念(のようなもの)に触れて、初めてその意図を理解します。
そして、このことをペガサスに伝えなければ……と身をひるがえした瞬間、ジオン軍のルロイ・ギリアムが操縦するリック・ドムの射撃でガンダムは撃墜されてしまうのでした。「生死不明」などではなく、ここで明確に戦死します。
富野監督は最終巻である第3巻のあとがきで、こうしたアニメとの差異について「ビジュアルの仕事に対応するために、自分にはこうしかできなかったのです」と述べています。「ガンダムは元々このような物語だったが、アニメ化するにあたって、さまざまな事情で展開が変わった」ということだと思われます。
アニメ『機動戦士Zガンダム』では、シャアが扮するクワトロ大尉が「出資者は無理難題をおっしゃる!」と毒づくシーンがありますが、これは富野監督の心の叫びなのでは……とも思えてきますね。
■「Zガンダム」以降もアニメとはここが違う!
角川スニーカー文庫 小説『機動戦士Zガンダム 第一部 カミーユ・ビダン』書影
小説『機動戦士Zガンダム』は、アニメの『ガンダム』準拠で執筆されており、小説で戦死したアムロもきちんと生き延びた設定になっています。そして、この作品も大枠ではアニメと同じながら、細部ではかなり差異が見られます。
たとえば、アニメではアムロの搭乗機体だったディジェに、小説ではシャア(クワトロ大尉)も搭乗しています。最後まで分かりあうことがなかった因縁のふたりが図らずも共闘したというのが『Zガンダム』の面白いところのひとつですが、さらに同じ機体に搭乗したとなると、エモさもマシマシです。
また、クライマックスで描かれるハマーンのキュベレイ、シロッコのジ・オ、クワトロの百式による三つ巴の戦いでは、機体を一時的に降りた3人が交わることのない思想をぶつけあうシーンが描かれています。小説版は、総じてアニメよりもさらに人間ドラマに重きを置いているといえます。だからというわけではありませんが、ラストでカミーユの精神が崩壊していくさまもアニメより念入りに書かれており、戦争の無常さがより色濃くなっています。
●「ガンダム」は「進化していく人間の物語」
小説『機動戦士ガンダムZZ』は、富野監督の原案をもとに遠藤明範さんが全2巻を執筆。アニメでは姿を見せなかったアムロが登場し、ジュドーに「自分が再び宇宙に上がるのはシャアと決着をつけるとき」と語ったり、ジュドーたちが地球から宇宙に上がる時間を稼ぐため、シュツルム・ディアス単機で強大なサイコガンダムMk-IIに立ち向かうなど、見せ場が用意されていました。
そして小説『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン』は再び富野監督が執筆。小説のアムロはニュータイプ能力の衰えを感じており、シャアが駆るナイチンゲール(小説版でサザビーの代わりとなるシャア専用機です)に苦戦する場面も見られます。
また、地球に落ちていくアクシズをνガンダムで押し返そうとするラストシーンは、その瞬間の地球のさまざまな場所で新たな命が芽生え続けていることが描かれます。そして「パパ!」というアムロへの呼びかけが、ガンダムに搭載されたサイコフレームに大きな力を与えるのでした。この声の主は、アムロの恋人、ベルトーチカのお腹に宿る彼の子供でしょう。こうした描写からは、人の持つ可能性や次代に受け継がれる意思を描く意思が感じられます。
あとがきによると(富野監督にとっての)「ガンダム」は「進化していく人間の物語」であり、その物語の行きつく先は「物否定(=モビルスーツ否定)」になるとのことです。また、劇場アニメはどのような経緯で異なる設定になったのかにも触れられており、あとがきまで含めて必読といえるでしょう。
アニメだけでも十二分に楽しめる『ガンダム』ですが、小説版も独自の設定や展開が魅力的で「もうひとつのガンダム」として楽しめます。今回紹介した小説はすべて電子書籍化されていますので、気軽に購入できますよ!
(蚩尤)
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