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マンガにおける「うんち」描写の軌跡 「タブー」を変えた鳥山明の偉大すぎる発明

マグミクス / 2022年11月20日 15時10分

マンガにおける「うんち」描写の軌跡 「タブー」を変えた鳥山明の偉大すぎる発明

■平安から令和にかけて「うんち」が市民権を獲得するまでの流れ

 子供は「うんち」に対して異常なまでの愛情を示します。令和の現在でもその傾向なお変わらず「うんこ漢字ドリル」シリーズ(文響社)は累計950万部を発行されており、学習の領域にまで「うんち」が幅を利かせています。いったいどのようにして、「うんち」は市民権を獲得していったのでしょうか。戦後以降のマンガ作品からその描かれ方を概観していきましょう。

 私たちがイメージする「うんち」の図、いわゆる「まきぐそ」の歴史は古く、平安時代と鎌倉時代の間に描かれた国宝『餓鬼草紙』内の「食糞餓鬼図」にはすでに片鱗が見て取れます。とはいえマンガとなると「うんち」が大々的に登場し始めるのは戦後になってからです。

「うんち」描写でエポックメイキングだったのが「週刊少年ジャンプ」で1970年から1977年にかけて長期連載された『トイレット博士』(著:とりいかずよし)。主人公の出番がなくなっていく作品としても知られる本作ですが、ギャグマンガ史においては「うんち」のタブーを破った記念碑的作品でもあるのです。

 作者のとりいかずよし先生が師匠の赤塚不二夫先生より、「顔がキタナイ」ので「ウンコマンガだけ描け」と言われるままに始めたとされる本作は、その言葉通りとにかく「うんち」まみれ。挨拶がわりに「うんち」を漏らし、その臭い比べをする、なんて序の口。「うんち」を食べるのが大好きな美少女キャラも登場します。今読むとギャグよりかむしろ前衛といった印象を受けます。さて『トイレット博士』は当時の子供らに大ウケ。子供らが「うんち」の面白さに覚醒するきっかけを与えた作品ともいえるでしょう。

 また「週刊少年サンデー」で1976年から1981年に連載された『まことちゃん』(著:楳図かずお)もまた「うんち」が何かと登場するギャグマンガでした。初期の『トイレット博士』とは違い、「うんち」がメインではなく、いろいろなギャグのうちのひとつとして投入されている点は、「うんち」がギャグとして受け入れられている基盤が完成しつつあったことがうかがい知れます。なお『トイレット博士』も『まことちゃん』も「うんち」はすでに「まきぐそ」として描かれていることもまた注目すべきところです。

■現代の「うんち」のイメージを作ったのは、天才漫画家

2019年8月にオープンした「うんこミュージアム TOKYO」

 さらにそこから現代にも通じる「うんち」の描き方を発明したとされているのが、鳥山明先生です。1980年から1984年にかけて連載された『Dr.スランプ』では「まきぐそ」に手と足が生え、普通に話す「うんちくん」が登場。色もピンクでとってもかわいらしく、アニメ化に伴いグッズも多数販売され、日本で空前の「うんち」ブームが巻き起こったのです。『トイレット博士』の時代はタブーゆえのギャグだった「うんち」でしたが、『Dr.スランプ』においては一気に「かわいいキャラ」へと変貌を遂げたのです。

 このように「うんち」の表象から汚さを除き、「面白いもの」「親しみやすいもの」として描く手法はその後の「月刊コロコロコミック」の児童向けマンガでも多く見られるようになり、冒頭で触れた「うんこ漢字ドリル」へとつながっていった、と言えるでしょう。

 令和元年、お台場では「うんち」をテーマにした「うんこミュージアム TOKYO」がオープンし、連日多くの子供らでにぎわっています。昭和、平成、令和、時代が変わっていくなか、日本で最も出世したのは「うんち」かもしれません。

(片野)

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