ゲームの「難易度」、開発者はどうやって調整している? 想像以上に奥深い世界
マグミクス / 2022年11月22日 19時10分
■難易度調整はゲームの「心臓部」
ゲームには、その内容やジャンルを問わず「難易度」が存在します。自分には難しくても他の人が難なくクリアしていたりすると、いったい何を基準に難易度を決めているのか気になりますが、実はこの調整はとても奥深いものです。ゲームの心臓部といっても過言ではありません。
何しろプレイヤーは「簡単にしろ」「難しくしろ」と言いますが、それはそのプレイヤーの技量にとってという話ですから個人差があり、誰にとっても敵が弱ければ(強ければ)それでいいというものでもありません。では、ゲーム制作においてこれらをどのように調整していくのか、少しだけ紐解いてみたいと思います。
まず難易度を決めるのは誰か? ですが、開発会社の担当者です。こう書くと「開発者はゲームの全てを知っているし、何度もテストしているんだから上手いに決まっている。そんな人が調整したら難易度が爆上がりするのではないか」と思うことでしょう。確かにこの人が自分の技量を基準にしたらそうなりかねません。言うなれば、それが難易度調整で一番悪い結果です。言い切るのも乱暴ですが、否定できないことです。
こうならないために必要なのは、客観的な基準です。それはさまざまありますが、まずは制作初期に設定する「ターゲット」です。このゲームは幼児向けなのか、あまりゲームをしない人向けなのか、ハードゲーマー向けなのかといったものです。
これはゲームの内容に直結することなので、企画書が作られる段階から明記されています。対象年齢、性別まで決まっていますし、理由も明確です。そして難易度はその人たちが「それなりに難しかったけど頑張ったらクリアできた」と感じる程度を目指します。これなら、基準がハッキリしているので考えやすくなりますね。
次はこの「感じる程度」を具体的にしていきます。
これを考える上では、ターゲットプレイヤーの能力をある程度分解する必要があります。例えば「知識」と「慣れ」は重要な能力要素です。ですから開発者はそのゲームが上手いと言えるのです。他に忘れてはいけないのが、プレイヤーが元々持っている「技量」です。アクションゲームが好きでもコントローラーさばきに優れているとは限りません。細かく見れば他にもありそうですが、大体この3項目が鍵といえるでしょう。
では、実際にいくつかのゲームジャンルに当てはめて考えてみます。
■RPGとアクションゲーム、求められる能力の違いは?
例えばコマンド入力式のRPGを作る場合、このジャンルは「知識」>「慣れ」>「技量」の順に能力が求められます。つまり多くの人がクリアできるものの、プレイヤーがボスの攻撃方法や強さ、謎解きのヒント(知識)などを入手できなければゲームが難しくなるということです。
すると、情報をくれる人を何か所の街に配置するのか、それぞれの街に行くにはレベルがいくつ必要か……ということがポイントになるため、実際に一度作ってみて「寄り道もレベル上げもしなければどの程度で情報をそろえられるか」を確認し、妨害する要素を増減させることで調整ができそうです。
これがアクションゲームの場合だと、「技量」>「慣れ」>「知識」の順になるでしょう。どんなに慣れても攻略法を知っていても、上手くできるかは別問題です。格闘・シューティングゲームもそうですね。難易度を一番上手な人・下手な人に合わせるわけにいかないことはわかっても、中間が多すぎて基準を設定するのが大変そうです。
このような場合の手段のひとつとして、「救済措置」を設けることが挙げられます。何度も死んでいるとゲーム自体は難しいままでも普通は出ないパワーアップアイテムが出るとか、隠し通路で回避できる、特定の武器が大ダメージを与えるなど、別の攻略方法が用意されているというものです。
前者はプレイヤーの「技量」の底上げを狙うもの、後者は「知識」によって解決を図るものと言えるでしょう。他にもリアルタイムにプレイを観測して敵の数や攻撃力を下げるといった調整が入るものもあります。
これらは昔からあった考え方ですが、今ではゲームデータの増加、処理能力の向上などで、より細かな対応が可能になっており、対戦プレイは別としても「技量」が必要なゲームの難易度調整方法として依然重要な手段のひとつといえるでしょう。
そうはいっても、どんなときにどんな対応をするのか、膨大な条件を事細かにひとつずつ考えるのは開発者です。RPGも規模の大きさに比例して考えることが増えていきます。あくまでもプログラムは指示されたことをするだけですから、難易度のバランスが上手くとれているゲームというのは、開発者が「どれだけプレイヤーに楽しんでもらうか」に腐心し尽くした結果だと言えます。
これが、筆者が「難易度調整はゲームの心臓部」と考える理由であり、そうした気遣いや情熱がゲームの評価を大きく左右するのだろうと思うのでした。
(タシロハヤト)
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