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劇場版『カウボーイビバップ』BS12で放映 海外での人気に重なる、松田優作の「夢」

マグミクス / 2022年11月20日 12時10分

劇場版『カウボーイビバップ』BS12で放映 海外での人気に重なる、松田優作の「夢」

■コメディタッチの、SFハードボイルド

 めっちゃ強くて、クールだけど、お金がないのが玉に瑕(きず)。そんな主人公が活躍するSFハードボイルドといえば、サンライズ制作のアニメ『カウボーイビバップ』です。1998年にTVシリーズ全26話が制作され、2001年には劇場版『カウボーイビバップ 天国の扉』が公開されています。

 2022年11月20日(日)のBS12では、19時から「日曜アニメ劇場」にて『カウボーイビバップ 天国の扉』が放映されます。TVシリーズに続いて、渡辺信一郎監督と脚本家の信本敬子さんがタッグを組み、音楽は菅野よう子さんが担当しています。

 2021年には米国で実写ドラマ版『カウボーイビバップ』がつくられ、Netflixにて現在も配信中です。日本だけでなく、海外でも人気のある『カウボーイビバップ』の魅力を探ります。

■スパイク、ジェットらおなじみの顔ぶれが集結

 火星をはじめ、太陽系の惑星へ人類が移住するようになった未来社会が舞台です。主人公のスパイク(CV:山寺宏一)は、「カウボーイ」と呼ばれる賞金稼ぎとして暮らしています。『天国の扉』では火星で大規模なバイオテロ事件が起き、犠牲者が続出します。スパイクは相棒のジェット(CV:石塚運昇)、女賞金稼ぎのフェイ(CV:林原めぐみ)らと、高額賞金の懸かったテロ犯を追いかけます。TVシリーズの第23話「ブレイン・スクラッチ」の前に起きた事件という設定です。

 TVシリーズでもお馴染み、ハッカー少女のエド(CV:多田葵)、高い知能を持つデータ犬のアインもスパイクたちの欠かせない仲間です。組織化されたチームではない、彼らのゆるい関係性も、『カウボーイビバップ』の人気の要因でしょう。

 スパイクとフェイが入手した情報をもとに、テロ事件の犯人は火星軍特殊部隊に所属していたヴィンセントだと分かります。ヴィンセントはある人体実験を生き延び、不死身の肉体となっていました。お気楽さが身の上のスパイクですが、今回の標的はかなりヤバい相手です。

 劇場版のヒロインとなるエレクトラとスパイクとのあいさつ代わりの格闘シーンが、物語前半に小気味よく描かれます。さらにはモノレール内でスパイクがヴィンセントと対決するなど、実写では撮影が難しいアクションシーンは見応えがあります。スパイクが愛機「ソードフィッシュII」を駆るスカイアクションも、物語後半には用意されています。

 バイオテロ事件の背後には大手製薬会社や軍部が関係していることに、スパイクたちは気づきます。TVシリーズの1話25分では描けなかった、スケールの大きなポリティカルアクションものとして物語は進んでいきます。

■スパイクのモデルになったのは『探偵物語』の主人公

『COWBOY BEBOP 天国の扉』ポスタービジュアル (C)サンライズ・ボンズ・バンダイビジュアル

 タフなヒーローであるスパイクは、渡辺信一郎監督によると実写ドラマ『探偵物語』(日本テレビ系)に主演した松田優作さんをイメージしたものだそうです。1979年~80年にTV放映された『探偵物語』は、ハードボイルドな設定ながら、松田優作さんがアドリブでギャグをかますというユーモアたっぷりな大人のドラマでした。スパイクと同様に、『探偵物語』の主人公・工藤俊作もいつも金欠状態でした。

 渡辺信一郎監督は1965年生まれ。ブルース・リー主演のカンフー映画『燃えよドラゴン』(1973年)、松田優作さん主演の犯罪映画『野獣死すべし』(1980年)、リドリー・スコット監督のSFハードボイルド『ブレードランナー』(1982年)などに熱くなった世代です。

 そんな渡辺監督が、自分が大好きなもの、面白いと感じたものをたっぷりと注ぎ、脚本家の信本敬子さんら息の合ったスタッフとジャズセッションのようにして生み出したのが、SFアニメ『カウボーイビバップ』だったのです。

 音楽を担当した菅野よう子さんの存在も大きいでしょう。ジャズ、ブルース、ロック、テクノなど、多彩な音楽ジャンルを使い、スタイリッシュな世界観づくりに貢献しています。

 粋なセリフのやりとりに、アクションを満載した『カウボーイビバップ』は、米国ではDVDの販売後にCS放送もされ、人気を博しています。国境を越える、無国籍な面白さがありました。

■映像の世界で生き続ける松田優作さん

「海外でも注目を集めた」という点でも、『カウボーイビバップ』と松田優作さんは通じるものがあります。松田優作さんは多くの日本人俳優が参加したオーディションを経て、リドリー・スコット監督によるハリウッド大作『ブラック・レイン』(1989年)への出演を果たしています。

 松田優作さんが演じた日本人ヤクザ・佐藤は、凶暴かつミステリアスなキャラクターで、メインキャストすら圧倒する存在感がありました。松田優作さんの迫真の演技は大きな話題を呼び、ハリウッドから問合せが殺到することになります。しかし、『ブラック・レイン』の撮影直前から松田優作さんは密かに体調を崩しており、『ブラック・レイン』の公開から間もない1989年11月6日に亡くなっています。40歳の若さでした。

 松田優作さんは狭い日本を飛び出し、世界で活躍することが夢だったそうです。病魔に侵されていなければ、きっといろんな海外の作品に出演する国際的なスターになっていたでしょう。夢を追うことの代償の大きさと、命のはかなさを感じずにはいられません。

 あくまでも個人的な印象ですが、海外でも人気が高いSFアニメ『カウボーイビバップ』を観ていると、松田優作さんが追い求めていた夢の続きに触れたような、不思議な感覚を覚えるのです。脚本家の信本敬子さん、ジェット役の声優・石塚運昇さんもすでに他界しています。『カウボーイビバップ 天国の扉』は、生と死が奇妙に交錯するドラマのように感じます。

映画の終わりに「SEE YOU SPACE COWBOY…」、そうつぶやきたくなる人もいるのではないでしょうか。

(長野辰次)

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