2022秋アニメ、期待値が高かった「懐かし系」3作 放送後の評価は?
マグミクス / 2022年11月17日 12時10分
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■外せない作品で手堅い作り
2022年の秋アニメでは、かつて高い人気を誇った名作のリメイクや、続編作品が複数放送されています。昭和に放送され、多くの男性をとりこにした作品や秋葉原を舞台としたゆるくてカオスなショートアニメ、「週刊少年ジャンプ」で人気を誇り2000年代に長く放送されたアニメなど、放送前の期待値は非常に高いものでした。実際に放送されてから、どんな評価がされているのでしょうか。3作品を紹介します。
●『うる星やつら』
1980年代にTVアニメ化され、一世を風靡(ふうび)した高橋留美子先生原作の『うる星やつら』が二度目のアニメ化を果たしました。旧作はオンエアが決定したのが放送の1か月前で、当時若手の演出家だった押井守さんが七転八倒しながら放送にこぎつけたエピソードがあります。一方で、今回のアニメ化では十分な準備が行われていたことがうかがえる、原作をかなり忠実に再現したストーリーが展開されています。
原作の連載が1978年から1987年まで、すなわち昭和53年から昭和62年ということもあり、作中にも黒電話やチャンネルを回すタイプのTV、プルタブ式の缶ジュースなど昭和に使われていたアイテムが次々と登場します。当時を知る方には懐かしいものばかりではないでしょうか。
各話のストーリーについては、原作が基本1話1エピソードのため、そのまま使ってもアニメにした場合の尺が足りません。そこで関連するエピソードをうまくつなぎ合わせて尺を確保しており、構成の巧みさがうかがえます。セリフについても基本的には原作を踏襲していますが、一部は時代や理解のしやすさなどを考えたのか変更されています。しかし作品の持ち味を消すようなことは一切ないのも特筆すべきでしょう。
声優の演技については、諸星あたる役の神谷浩史さん、ラム役の上坂すみれさんのいずれも旧作の演技に見事に寄せています。「声優の個性を生かした演技が見たい」と考える方もいるかもしれませんが、『うる星やつら』ほどのビッグタイトルとなると声優だけでなく関係者すべてにとって「外せない」プロジェクトとなります。おそらく旧作に寄せるのはプロジェクト全体で共有されている共通認識であり、その意味では求められる役を高い技量を持って完ぺきにこなしていると考えるべきでしょう。
ひとつ問題点があるとすれば、最近のアニメに慣れた人にとっては、少々テンポが遅く感じられることでしょうか。近年のアニメはテンポ優先のためどんどんキャラクターを出していくのが一般的ですが、『うる星やつら』では新キャラが登場した際にはしっかりとフォーカスし、丁寧な描写が行われています。このやり方が今後どう生きるのか、キャラクターが出そろったときに明らかとなるでしょう。
■時を経ても変わらないもの
●『令和のデ・ジ・キャラット』
『令和のデ・ジ・キャラット』 (C)Bushiroad (C)令和のデ・ジ・キャラット (C)BROCCOLI illustration:Koge-Donbo*
1999年にTBS系の深夜番組「ワンダフル」内で放送された『Di Gi Charat』が新作アニメとして帰ってきました。見始めればいきなり始まるのは奥井雅美さんが歌うオープニング「曖昧さ、幸福論」。これ一発で一気に時間は20年以上さかのぼった気分になれます。監督も前作と同じ桜井弘明さん。原作・キャラクター原案も当然こげどんぼ*さんと、昔懐かしいメンバーが名を連ねています。
もちろん声優もそのままで、主人公・デ・ジ・キャラットは真田アサミさん、ぷちこことプチ・キャラットは沢城みゆきさん、うさだひかることラ・ビ・アン・ローズは氷上恭子さんと、メインメンバーは全員続投となりました。もちろん他のキャラもそのままで、ピョコラ=アナローグIII世は林原めぐみさん、マスコットキャラのゲマは亀井芳子さん、そして2005年の休業以来あまり活動が見られなかったサエキトモさんもクウ=エアハルト役に名を連ねているのがうれしいところです。
作風も以前のようにゆるくてカオスな雰囲気そのままですが、ひとつだけ大きく異なる点があります。
そう、ぷちこの演技が滅茶苦茶うまいのです。当時新人だった沢城みゆきさんはこの20年あまりの間に女性声優のなかでもトップランクの演技力を持つ存在となりました。ぷちこの進化に、要注目です。
●『BLEACH 千年血戦篇』
『BLEACH 千年血戦篇』 (C)久保帯人/集英社・テレビ東京・dentsu・ぴえろ
2001年から「週刊少年ジャンプ」に久保帯人先生が連載し人気を博し、TVアニメは2004年から2012年まで足掛け8年にもわたって全366話が放送された大ヒット作品『BLEACH』が、連載開始20周年企画として再びアニメ化されました。前回のアニメでは放送されなかった原作の最終章「千年血戦篇」が分割4クールで放送予定される予定となっており、10年越しに実現した、まさにファン待望のアニメ化と呼べる作品です。
尸魂界は突如として現れた「見えざる帝国(ヴァンデンライヒ)」による襲撃を受け、大きな被害を出してしまいます。虚圏も被害を受けるなか、敵の指揮官キルゲ・オピーと対峙した黒崎一護たちは、その正体が滅却師であると知ることになりました。
やがて尸魂界は「見えざる帝国」との本格的な戦闘へ突入しますが、攻撃が通らない相手に苦戦を余儀なくされます。隊長たちは卍解の決意を固めますが、逆に卍解を奪われ絶望的な状況へと追い込まれてしまいます。果たして打開策は見つかるのでしょうか。
『BLEACH』ほどの大型タイトルを制作するのは困難を極めますが、現状では作画・ストーリー方面に関しては良質な状況が保たれています。このまま最後まで多くのファンが待ち望み続けてきたラストへと突っ走って欲しいものです。
(早川清一朗)
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