20年前、2003年1月放送開始アニメ3選 宮野真守主演作は2000年代初期の傑作

■「.hack」シリーズ第一期のラストを飾ったタイトルが放送された

　今から20年前の、2003年1月に放送開始されたアニメは、現在ほど本数は多くありませんでした。ですが、MMOを題材にした名作「.hack」シリーズ第一期のラストを飾った作品や、声優・宮野真守さんの初期主演作、『週刊少年チャンピオン』連載の一風変わったラブコメ作品など、多種多様なタイトルが放送されました。今期でちょうど20周年を迎える3作品をご紹介します。

●『.hack//黄昏の腕輪伝説』

　アニメ『.hack//黄昏の腕輪伝説』は、架空のMMORPG「The World」内部で起きる数々の異常現象に関わったプレイヤーたちの物語が描かれる「.hack」シリーズのTVアニメ化第2弾。PlayStation 2用ゲーム『.hack』の4年後が描かれており、2002年からスタートした「.hack」シリーズ第1期のラストを飾る作品となりました。全12話。シリーズのなかでは珍しく、キャラクターがSD風で描かれているのが特徴です。

「The World」からプレイヤーがログアウトできず昏睡状態に陥った「黄昏事件」から4年が経過したある日、運営会社であるサイバーコネクト社は、使用禁止となった伝説のプレイヤーキャラ「カイト」と「ブラックローズ」のデータをプレゼントするキャンペーンを行ないます。

　当選したのは中学2年生の双子の兄妹、国崎秀悟（CV：皆川純子）と国崎玲奈（CV:中原麻衣）。家庭の事情で離れて暮らしているふたりは、それぞれを「シューゴ」「レナ」と名付け、共に「The World」へとログインしたのです。しかしこのとき、「The World」では多数のバグが発生しており、管理者が未帰還者となる事件すら起こっていました。

　シューゴとレナも初心者エリアで強力なモンスターであるゴーレムに遭遇し、レナをかばったシューゴはHPを失うと同時に仕様外の空間へと飛ばされてしまい、そこで出会ったアウラ（CV：坂本真綾）と名乗る少女から金色の腕輪を託されたのです。

　謎の腕輪を持つショーゴの周りにはかつてカイトと共に戦った管理者のバルムンク（CV：檜山修之）ら多くのプレイヤーが集うようになりますが、注目を浴びたことにより、デバッグチーム「碧衣の騎士団」の介入を受けるハメになります。

　やがてバグを起こしていたのは4人の小学生ハッカーであることが判明。レナが行方不明となり、碧衣の騎士団に追われながら消息を探し求めるショーゴでしたが、混乱する状況のなかで多数のプレイヤーが未帰還者となり多数の意識不明者が出る事件が発生してしまいます。

　アウラはなぜ姿を現したのか。シューゴに託した腕輪に秘められた力とは。すべての謎が明かされていくなかで、新たなカイトとブラックローズは世界の崩壊を救おうと戦い抜くのでした。

■宮野真守、初期の主演作

●『WOLF’S RAIN』

『WOLF'S RAIN（ウルフズ・レイン）』 (C)BONES・信本敬子 / BV

『WOLF’S RAIN（ウルフズ・レイン）』は2003年1月から7月までフジテレビ系列で放送されたBONES制作の作品です。全26話+OVA4話。TV放送時は途中で総集編が4回放送されており、ストーリーの完結に至らなかったため残りの4話はOVAとして製作され、DVDに収録されました。声優の宮野真守さんが初めて単独で主人公を務めたTVアニメでもあります。

　舞台となるのは氷河期を迎えてゆっくりと滅びへの道をたどりつつあるどこかの星。かつての栄華の残骸のなかで、人類は貴族に支配されながら、かろうじて生き延びていました。そんな何もかもが停滞した世界に、ある日キバを名乗る少年が現れます。

　この世のどこかにある「楽園」へ行くための手掛かりとなる幻の花「月の花」を探し求めるキバ（CV：宮野真守）でしたが、実は彼の正体は200年以上前に姿を消したとされる狼だったのです。人に姿を変え生き延びていた狼たちは、キバの行動に影響されて一頭、また一頭とキバと共に歩みだすのでした。

　崩壊した世界で仲間同士ぶつかり合いながら、数々の障害を乗り越えていく重厚な物語は、『WOLF’S RAIN』を2000年代初期の傑作と呼ぶにふさわしい作品に押し上げています。機会があればご覧になってはいかがでしょうか。

●『ななか6/17』

原作コミックス『ななか6/17』完全版第1巻（著：八神健／ナンバーナイン）

『ななか6/17（ななかじゅうななぶんのろく）』は八神健先生が「週刊少年チャンピオン」で連載した作品をアニメ化したものです。全12話＋未放送1話。

　極悪不良と恐れられる凪原稔二（なぎはら・ねんじ／CV：鈴村健一）の幼なじみ、霧里七華（きりさと・ななか／CV：千葉千恵巳）は17歳の成績優秀な女子高生。七華はかつて明るく天真爛漫な性格でしたが、ある出来事をきっかけに冷淡で協調性のない性格になってしまったのです。ケンカに明け暮れる稔二をいつも口うるさく注意していた七華でしたが、ある日ひょんなことから中身が6歳の幼女へと変貌してしまいます。

　外見はどこから見ても高校生、しかし言動は幼いななかを放っておけず、稔二は付きっきりで様子を見守ることにしたのですが、周囲に秘密がバレてしまったり、急にななかが17歳の状態に戻ったりと気の休まらない日々を送るハメになるのでした。

　制作を行なったのは、J.C.STAFF。『少女革命ウテナ』や『魔術士オーフェン』など数々の傑作を手掛けてきた会社ですが、ちょうど2003年から制作本数を急拡大し、それまで年に2～3作品だったのがこの年は8作品を送り出しています。J.C.STAFFが大きく飛躍した年の作品のひとつとして、『ななか6/17』は重要なアニメと言えるかもしれません。

（早川清一朗）