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『シン・ウルトラマン』の侵略者・ザラブが地球を「見つけた」方法とは? 名作SFから考察

マグミクス / 2022年11月26日 20時10分

『シン・ウルトラマン』の侵略者・ザラブが地球を「見つけた」方法とは? 名作SFから考察

■庵野秀明氏の推しは「ザラブ」

『シン・ゴジラ』の庵野秀明氏と樋口真嗣氏による最新作『シン・ウルトラマン』は、初代ウルトラマン(1966年放送)をリブートし、2022年5月の公開以来、興行収入44億円の大ヒットを記録。早くも2022年11月18日からAmazon Prime Videoに登場しています。

 ウルトラマン役の斉藤工もさることながら、「私の好きな言葉です」の名言を残した外星人・メフィラス(山本耕史)が圧倒的人気を誇りました。でも、ザラブ(声:津田健次郎)も忘れないでほしいんです。

 ザラブは初代ウルトラマンの敵キャラ。かつて庵野秀明氏は「ザラブ星人が一番好き」と語っていました。

「ウルトラマンと逆の思想を持って、そこにある知的生命を滅ぼすために仕事でやって来ている。ああ、そういう逆のことする人たちも宇宙にはいるんだっていうのが、すごくよかった」(『特撮エース』2004年1月号)

 今作のザラブは、とてつもなく怖いことをサラっと言ってのけるヤツです。

「マーカーを発見次第、その惑星に在住する知的生命体を無条件に絶滅させる。それが私の仕事だ」

 どうやら彼は地球に知的生命体がいる痕跡を見つけていたようです。でも、我々のいる天の川銀河には170億個以上の岩石惑星があります。そんななかからどうやって知的生命体のいる星を発見したのでしょうか?

 ザラブの戦略を考察してみましょう。手がかりは、異星人との交流を描く1997年のSF映画『コンタクト』にあるでしょう。同作では、異星人が地球から飛んできたテレビの電波を受信し、太陽系に知的生命体がいると気づきます。

 実は、人類が発した電波は宇宙へ漏れ出ているのです。テレビ電波はラジオに比べて高周波で、より遠くへ届きます。史上初の大規模なテレビ放送は1936年のベルリン五輪の中継。電波の進む速度は光と同じなので、2022年現在、中継映像は86光年先へ届いています。『コンタクト』の異星人が受信したのはこの電波でした。

 天文学の分野で、「SETI」(地球外知的生命体探索)に取り組む研究者がいます。彼らは、もし他所(よそ)の星の文明を見つけるなら、その痕跡(研究者は「マーカー」と呼ぶ)として有力なのは電波だと言います。

 先述のザラブのセリフにもマーカーという単語があります。つまり、ザラブもテレビ電波を受信して情報を得ていた……そんな設定だと考察できるのです。また、彼が人類の政治にやたら詳しいという点も説明がつきます。

■ザラブの包囲網が迫る

『シン・ウルトラマン』に登場したザラブを再現したフィギュア「ムービーモンスターシリーズ ザラブ」(バンダイ)

 ところで、円谷プロ監修『ウルトラマン大辞典』(中経出版)のなかに、気になる記述があります。

「文明を滅亡させることが彼らザラブの使命であり、同様の工作員は他の惑星にも派遣されている」

 これは厄介。ザラブを倒しても、第二のザラブが現れるかもしれません。彼らはどこから来るのでしょうか。『ウルトラマン大辞典』によると、ザラブの故郷は第8銀河系ザラブ星です。

 他所(よそ)の銀河となると、地球から数百万光年は離れていると考えられます。『シン・ウルトラマン』の劇中世界が2022年だとすると、テレビ電波を受信できるのは地球から86光年以内。ザラブの母星では傍受不能です。

 それでは、たまたまザラブがこの「86光年以内」を通りがかって受信した、ということでしょうか?

 いや、電波は進むにつれて減衰します。地球外でテレビ電波を受信するには巨大な観測施設が必要です。米国の天文学者セス・ショスタクは、多数のパラボラアンテナを2.5万平方キロメートルの敷地に並べてつなげれば、地球のテレビ電波を数百光年先から傍受できると言います(『彼らはどこにいるのか?』キース・クーパー/河出書房新社)。

 調べてみると、2.5万平方キロメートルは関東平野より広い面積です! そんな施設をザラブはあちこちの銀河に築き、常時監視しているのでしょう。外星人からすれば86光年は目と鼻の先。包囲網はすぐそこまで迫っているかもしれません。

 でも、ウルトラマンがいれば地球は安全。きっと守ってくれる……って、本当にそれでいいの?

 映画の後半、ウルトラマンをしのぐ強敵が現れます。人類も全く太刀打ちできません。

「このまま何もせず、何も知らないまま終わるというのが一番の幸せということか」

 禍威獣特設対策室専従班(禍特対)に漂う、諦めムード。

 しかしクライマックスで、ある男が立ち上がります。決戦に挑むべく知力を振り絞り、彼は全世界を巻き込む計画のリーダーになるのでした。人類が一致団結し、敵を倒す解を見つける。このワクワクする展開、映画『シン・ゴジラ』の「ヤシオリ作戦」を彷彿とさせます。

 また、奔走する禍特対の姿は、初代ウルトラマン最終回のセリフと重なります。

「地球の平和は人間の手で掴み取ることに価値がある」

 これぞ、全ウルトラマンシリーズに共通するメッセージ。『シン・ウルトラマン』では観る者にどう訴えかけられるのか。映画館で観た人もそうでない人も、配信で確かめてみて下さい。

(ツヤマユウスケ)

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