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初代ガンダム、実は珍しかった「白色」 主役メカの「当たり前」を覆した、安彦良和のこだわり

マグミクス / 2022年11月30日 6時10分

初代ガンダム、実は珍しかった「白色」 主役メカの「当たり前」を覆した、安彦良和のこだわり

■目撃! 初代ガンダムが白色になった瞬間

 1979年に放送された『機動戦士ガンダム』の主役ロボットであるガンダムのメインカラーと言えば「白」です。しかし、これは当時からすると、とても画期的なことでした。

 では、何故、ガンダムは白くなったのでしょうか?

 細かな経緯は省きますが、最初に白という色をはっきりと提示したのは、『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』の監督や『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』などでも著名な、初代ガンダムのキャラクターデザイナーであり、作画監督でもあった安彦良和さんでした。

『ガンダム』がまだ「日本サンライズ」(当時)の企画として、日々さまざまな打ち合わせが行われていたころ、安彦さんがサンライズの「企画室」を訪れました。このころの企画室は、制作現場のスタジオとは離れた場所にあり、安彦さんも普段ならあまり訪れません。

 そこには、セル画を作るための「仕上げ机」がありました。薄いセル(実際はセルロイドではなく、プラスチック系樹脂)版に専用の絵の具を塗る作業のために作られた特別の机で、どこのスタジオにも必ず1台くらいは置いてあるものです。

 もちろん、安彦さんは普段セルを塗るような事はしません。しかし、彼はここで自らの意見を実際にセルにしたのです。

 当時のサンライズでは、基本の色は「色指定」という名称の専門の方が決めますが、それでも企画の段階ではさまざまな関係者から意見が出され、検討されます。すでに他者によって塗られていたガンダムの色サンプルは、それまでのアニメロボットでよく見る赤・青・黄色にグレーがほぼ似たように配置されたのもので、当時の感覚からはごく普通のものでした。

 しかし安彦さんは、それまでの玩具イメージから離れた、少しでもリアル感を持ったロボットを登場させたいと考えていたようなのです。

 ただ、白という色は、グレーなどに比べると「軽い」「弱い」という印象があり、強さや重量感を求められる当時のアニメロボットのボディーカラーにはふさわしい印象では無かったのです。

 ですが、この「軽さ」や「弱さ」もまた、新しい作品にとっては重要な要素でもあったことは、初代の『ガンダム』を御覧になったことのある方にはお解りだと思います。

 とはいえ、常に玩具ありきの当時のロボットアニメの企画者たちには、この新しいイメージは伝わりづらかったのでしょう。普段は行わないセル塗りを自ら行い、関係者の目の前に提示することで、安彦さんは彼らを納得させたのです。

 この後、多少の修正と、玩具会社などが求める整合性を加味し、ほんの少し青みがかった白である「ブルーホワイト」という色で、ガンダムのあのカラーが決まります。

 ただ、実際に安彦さんご本人があの色のセルを塗っていた現場を見ていたのは、実はその場に居合わせた私だけなので、この事実は関係者の間でもほとんど知られていません。その時、「白は弱く見えませんか?」と訊ねた私に「それでいいんだよ」と答えられた安彦さんの、ちょっと満足そうな笑顔を、40年以上経った今でも、私は忘れることが出来ません。

【著者プロフィール】
風間洋(河原よしえ)
1975年よりアニメ制作会社サンライズ(現・バンダイナムコフィルムワークス)の『勇者ライディーン』(東北新社)制作スタジオに学生バイトで所属。卒業後、正規所属にて『無敵超人ザンボット3』等の設定助手、『最強ロボ ダイオージャ』『戦闘メカ ザブングル』『聖戦士ダンバイン』『巨神ゴーグ』等の文芸設定制作、『重戦機エルガイム』では「河原よしえ」名で脚本参加。『機甲戦記ドラグナー』『魔神英雄伝ワタル』『鎧伝 サムライトルーパー』等々の企画開発等に携わる。1989年より著述家として独立。同社作品のノベライズ、オリジナル小説、脚本、ムック関係やコラム等も手掛けている。

(風間洋(河原よしえ))

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