色んなパターンの「負けヒロイン」3人 「リメイクで性別変更」に「負けヒーロー」も！？

■「負けヒロイン界のプリンセス」は誰？　幸せになって…！

　メインキャラクターのひとりであるにもかかわらず、主人公への想いは届かず、彼の幸せを見ているしかない「負けヒロイン」。主役級の魅力があっても、その魅力が主人公に届かないのはつらいものです。なかには、なかなか本命が決まらない主人公に振り回される負けヒロインも。この記事では、そんなけなげさがつらくも、かわいらしい「負けヒロイン」を3人ご紹介します。SNSでも「にじみ出る負けヒロイン感が好き」「ヒロインで脚本を書き直してくれ」と評判です。

●TV版では勝敗つかず？『劇場版 マクロスF 恋離飛翼～サヨナラノツバサ～』ランカ・リー

　時は西暦2059年。移民船団｢マクロス・フロンティア｣は銀河を航海していましたが、未知の生命体「バジュラ」に襲われてしまいます。民間軍事会社・S.M.Sに所属している早乙女アルト（さおとめ・あると／CV：中村悠一）は、仲間たちと命がけでバジュラに応戦。シェリル・ノーム（CV：遠藤綾、歌唱：May’n）、ランカ・リー（CV：中島愛）というふたりの歌姫も加勢し、戦闘はいったん落ち着いたのでした。

　それから数か月後、ランカはアイドルとして急成長。スターダムを駆け上がっていました。一方でシェリルも、不穏な体調不良に悩まされながらも、人気シンガーとして変わらず活躍。生き生きと日々を過ごす歌姫たちでしたが、バジュラは再び、マクロス・フロンティアを襲いにきて――？

『劇場版 マクロスF 恋離飛翼～サヨナラノツバサ～』は、TV版『マクロスF』を2部作へと再構築した劇場版の、後編にあたる作品です。TV版『マクロスF』とは人間関係や物語の展開も異なっており、本作でははっきりとランカがアルトに告白。しかし後日、ランカはアルトに振られてしまいます。

　TV版『マクロスF』でのアルトは、ランカとシェリルに想いを寄せられながらも、どちらかひとりを選ぶことはしませんでした。そのあいまいな描写に、放送当時は多くの視聴者がやきもきさせられました。ですが、劇場版の終盤では、ランカが「私、アルト君が好きです！」とはっきり告白。しかし、戦場に出る前だったランカは、「言わないで！」とアルトの返事を保留します。

　そしてバジュラの押し寄せる戦場に向かい、「大切な人への思いを込めて、初めて作詞した」という曲『放課後オーバーフロウ』を歌うランカ。「愛してる」と繰り返し歌う彼女は、この時からアルトの気持ちを知っていたのかもしれません。

　アルトはバジュラとの最終決戦の際、「お前の気持ちに応えられなくてごめんな。だけど、ありがとう」とランカに伝えます。そのままシェリルへ気持ちを伝えようとしたアルトですが、爆発に飲み込まれ行方不明になってしまいます。

　それでもアルトが帰って来ることを信じ、力を使い果たし眠ったままのシェリルの目を、彼が覚ましてくれることを信じるランカ。そのけなげさには、「負けヒロイン界のプリンセス」と、負けヒロインらしからぬ人気が集まっています。この作品は、「dアニメストア」「U-NEXT」「バンダイチャンネル」などで見ることができます。

●リメイクで男性キャラから「負けヒロイン」化！『宇宙戦艦ヤマト2199』山本玲

映画館で先行上映された『宇宙戦艦ヤマト2199 第四章「銀河辺境の攻防」』　(C)2012 宇宙戦艦ヤマト2199 製作委員会

　西暦2199年、地球は外宇宙から来た謎の星間国家「ガミラス」に襲撃を受け、滅亡の危機を迎えていました。ガミラスの遊星爆弾による無差別攻撃を避けるため、人類は地下都市を作り避難。しかし、容赦のない攻撃は地下都市にも及び始め、人類は「滅亡まであと1年」と言われていました。

　この危機を乗り越えるため、人類は「ヤマト計画」を立案。大マゼラン銀河のはるか彼方にある星・イスカンダルへ行き、「コスモリバースシステム」を受け取って、焼けただれた地球を元に戻そうというのです。「ヤマト計画」のメンバーに選ばれた古代進（こだい・すすむ／CV：小野大輔）は、仲間とともに宇宙戦艦ヤマトに乗り、イスカンダルへと出発しますが――？

『宇宙戦艦ヤマト2199』はアニメ『宇宙戦艦ヤマト』をもとに、完全新作として新たなスタッフ陣で制作された作品です。山本玲（やまもと・あきら／CV：田中理恵）は、旧作の男性キャラ「山本明（やまもと・あきら）」を女性に変更したキャラで、古代に想いを寄せるものの、報われずに終わりました。

　ヤマトの主計科から戦術科へと異動し、航空隊員としての実力を発揮する玲。その才能を認められたことや、ガミラスとの戦いでお互い肉親を失っていることなどから、古代に恋心を抱くようになります。しかし、古代の心は徐々に、船務科の森雪（もり・ゆき／CV：桑島法子）へと傾くように。

　ひとり落ち込んでいる古代のもとへ赴くものの、すでに雪がいてふたりきりで話していたり、皆の前で親しげに話すふたりを見て、玲は走って去っていったり……。そのうえ、宇宙からヤマトに古代が無事帰還した際、雪は「良かった……」と抱きつきます。玲は分かりやすく目を逸らして、腕組みをするのみです。

　そして終盤、銃弾を受け瀕死の重傷を負った雪でしたが、奇跡的に生き返り、古代とキスで結ばれます。その後艦内に戻ったふたりに、玲は「森船務長の帰還を、一同歓迎します！」と笑顔で敬礼。さわやかに祝福したのでした。

　近づく雪と古代の様子を遠くから見る、切ないシーンが多い玲。しかし、気持ちを切り替えてふたりを心から祝うという、心がイケメンな「負けヒロイン」です。この作品は、「dアニメストア」「U-NEXT」「Netflix」などで見ることができます。

●男性だけど「負けヒロイン」！？『神無月の巫女』大神ソウマ

『神無月の巫女』DVD（ジェネオン・ユニバーサル）

　のどかな山間にある「乙橘学園」。そこに通う来栖川姫子（くるすがわ・ひめこ／CV：下屋則子）は、おとなしい性格の高校1年生。「宮様」と呼ばれるお嬢様・姫宮千歌音（ひめみや・ちかね／CV：川澄綾子）と姫子は、人知れず裏庭でお茶をする友人同士です。

　そんな姫子に、人気者で「蒼い貴公子」の異名を持つ大神ソウマ（おおがみ・そうま／CV：間島淳司）は、恋をしています。ソウマは姫子の誕生日に告白をしようと思っていましたが、当日に突如、体に流れる「オロチの血」が覚醒。オロチロボ・武夜御鳴神（たけのやみかづち）に乗って暴れ始めますが、姫子への想いで我に返り、他のオロチたちと戦い始めて――？

『神無月の巫女』は、同名マンガ（作：介錯／角川書店）を原作としたアニメです。原作とほぼ並行して放送された本作で結ばれたのは、ソウマではなく姫子と千歌音。ソウマは姫子に想いを寄せますが、その願いは叶わず、最終的には笑顔で千歌音との仲を後押しします。

　整った外見かつ文武両道であることから、学園内でも人気の高いソウマ。姫子を襲う他のオロチをバイクで突き飛ばし、「君を守る！　だから、どこへも行くな！」と叫ぶなど、序盤は堂々としたヒーローっぷりを見せます。

　1日の流れを計画してふたりでデートしたり、誕生日プレゼントに髪飾りを贈ったりと、ソウマの姫子への想いは一貫しています。しかしある日のデートを終えた後、実は姫子を深く愛していた千歌音にとある抜け駆けをされ、姫子の心を奪われてしまうのです。

　そのうえ、オロチになってしまった千歌音に、オロチロボ・武夜御鳴神まで奪われる始末。姫子の千歌音への想いに気付きながらも、ソウマは最後まで姫子を助け、自分の想いは告げずに笑顔で姫子を送り出しました。

　あとの戦いを引き受けたソウマは、見事オロチを打倒。しかし、姫子が結ばれたのは千歌音です。モテ要素満載かつ一途であるにもかかわらず、恋愛面では「負けて」しまったのでした。そのけなげさ、不憫さから、「カワイソーマ」と呼ばれることもあるソウマ。男性キャラでありながら、一部では「負けヒロイン」と呼ばれています。この作品は、「dアニメストア」「U-NEXT」「バンダイチャンネル」などで見ることができます。

＊　＊　＊

　魅力的であるにもかかわらず、作中では想いが報われなかった「負けヒロイン」。それでも想い人の幸せを願う姿は不憫ながらもけなげで、応援したくなってしまいますよね。あなたが推したい「負けヒロイン」は、誰ですか？

※配信状況は記事掲載時点のものです。

（新美友那）