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50周年の『人造人間キカイダー』 悶え苦しむ「主人公とライバル」の対決がアツい!

マグミクス / 2022年12月1日 19時55分

50周年の『人造人間キカイダー』 悶え苦しむ「主人公とライバル」の対決がアツい!

■善と悪との境界で悩む主人公

 ライバルとの対決ほど、ドラマチックなものはありません。Amazon Prime Videoで配信中の『仮面ライダーBLACK SUN』は賛否両論を呼んでいますが、ブラックサンとシャドームーンの激突シーンは熱い盛り上がりを見せています。矢吹丈と力石徹、アムロ・レイとシャア・アズナブル、北島マヤと姫川亜弓、初代タイガーマスクとダイナマイトキッド……さまざまなライバル対決が、時代をこえて熱く語られ続けています。

 数ある石ノ森章太郎原作の特撮ドラマのなかで、『仮面ライダーBLACK』に先駆けたライバル対決ものとして記憶されているのが、『人造人間キカイダー』です。すでに『仮面ライダー』をヒットさせていた東映の制作です。現在のテレビ朝日となるNET系列で、1972年から73年にかけて全43話が放映されました。

 主人公ジローは善と悪とのボーダーで悩むという設定に加え、敵キャラであるハカイダーのクールさが印象に残る『キカイダー』の世界を振り返ります。

■「気持ち悪い」と苦情が寄せられたデザイン

 左右非対称というキカイダーのビジュアルは、いま見ても斬新です。しかも、頭部に埋め込まれたメカが透けて見えるではありませんか。石ノ森章太郎氏のお気に入りのデザインでしたが、当時のテレビ局には「気持ち悪い」と苦情が寄せられたそうです。大人たちが感じた違和感こそが、キカイダーの魅力でした。

 主人公のジロー(伴大介)は、光明寺博士が創り出した高性能ロボットですが、内蔵された「良心回路」は不完全なままでした。そのことにジローは悩み続けます。不完全さを象徴したのが、左右非対称なキカイダーのデザインだったのです。

 プロフェッサー・ギル(安藤三男)が率いる悪の秘密結社「ダーク」の戦闘用ロボットたちと、キカイダーは戦います。しかし、「良心回路」が不完全なため、ギルの奏でる悪魔笛によって、キカイダーに変身する前のジローはたびたび惑わされてしまいます。完全無欠ではなく、不完全なヒーローという設定に、子供たちは心を惹かれました。

 当初は『レッドブルー』『ゼロダイバー』『ダブルV』などのタイトル案が出たそうですが、『仮面ライダー』(TBS系)の人気にあやかり、「ダーをつけたタイトルが力強くていい」というのが東映のテレビ企画営業部長だった渡邊亮徳氏の意向でした。そこで石ノ森氏が「キカイダー」という妙案をひらめいたそうです。

 裏番組が『8時だョ!全員集合』(TBS系)という怪物番組ながら、『キカイダー』は視聴率15%前後を記録し、大健闘します。さらに海外のハワイでは、平均視聴率26%と日本以上に爆発的な人気を誇ったそうです。

 赤と青との派手なカラーリング、言葉が通じなくても楽しめるアクション、2022年6月に亡くなった渡辺宙明氏の明快なテーマ曲に、ギターを奏でる主人公という設定が、ハワイの人たちを夢中にさせたようです。ハワイを訪ねた伴大介さんにハワイ名誉市民の称号が贈られたそうですから、ハワイで広く愛されていたことが分かります。

■破壊美学を貫き、組織にさえ逆らうハカイダー

ハカイダーの造形を再現したフィギュア「Character Classics 人造人間キカイダー ハカイダー」(海洋堂)

 シリーズがクライマックスを迎えた第37話から、ハカイダーは登場しました。キカイダーを破壊することを目的に誕生したという、「ナチュラル・ボーン・キラー」なロボットです。ヤクザ映画で知られる、東映ならではの不良キャラだと言えるでしょう。

 全身黒ずくめのコワモテなビジュアルなのに、頭には光明寺博士の脳みそを丸ごと載っけて、ウイークポイントをさらけ出しています。強さと弱さの両面を抱えたハカイダーのアンバランスさも、忘れられません。

 打倒キカイダーを生きがいにしていたハカイダーは、他のダークロボットたちがキカイダーに手を出そうとするのを嫌いました。自分の破壊美学を貫くため、ギルにさえ逆らうようになります。わずか8話だけの登場でしたが、主人公のキカイダーを上回る人気キャラになったハカイダーでした。

■視聴者を唖然とさせた、ハカイダーの最期

 キカイダーとハカイダーとの対決は、どんな結末を迎えるのか? 視聴者は最終回をワクワクして待っていたのですが、なんとハカイダーは最終回直前の第42話で憤死を遂げるのでした。最後のダークロボットとして登場した白骨ムササビに、あっさりとハカイダーは倒されてしまいます。

「どうせやられるなら、お前にやられたかったぜ、キカイダー」が、ハカイダーの最後の言葉でした。

 ハカイダーのあっけない犬死にも、東映ならではのものかもしれません。宿命のライバルたちの決着戦が見たかった。そんな特撮ファンの想いは、1987年~88年に放映された『仮面ライダーBLACK』(TBS系)のブラックライダーとシャドームーン との対決に受け継がれることになります。

 ハカイダーの無念さを成仏させてやろうと、ハカイダーを主人公にした雨宮慶太監督の劇場映画『人造人間ハカイダー』(1995年)、キカイダーとハカイダーとの決着戦を描いた『キカイダーREBOOT』(2014年)も制作されています。クリエイターたちからも、ハカイダーは愛されたキャラでした。

 自身の不完全さにキカイダーは悩み、ハカイダーは何のために生まれてきたのかが分からなくなり、悶え苦しみます。『人造人間キカイダー』は、人間以上に人間くさいロボットたちの物語だったと言えるのではないでしょうか。

(長野辰次)

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