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『Zガンダム』木星帰りの男「シロッコ」がティターンズを支配できたワケ

マグミクス / 2022年12月6日 6時10分

『Zガンダム』木星帰りの男「シロッコ」がティターンズを支配できたワケ

■ガンダム史上、最高の天才?

 人気アニメ『機動戦士ガンダム』の続編として、1985年に放映開始された『機動戦士Zガンダム』。エゥーゴ、ティターンズ、アクシズの3勢力(地球連邦も含めるなら4勢力)による三つ巴の複雑な抗争、主人公・カミーユのナーバスな性格や、精神崩壊してしまう結末など、衝撃的な作品でした。

 そのなかでも印象深いのが、カミーユと物語を紡ぐ3人のニュータイプです。味方となったシャア(クワトロ)、そのシャアを憎悪するアクシズのリーダー・ハマーン。そして、万能の天才と言うべき、パプテマス・シロッコです。

 シロッコは謎の人物で、前半生は謎に包まれています。木星資源採掘船ジュピトリス(余談ですが、全長が2kmあり、宇宙世紀で最大級の船です)を統率する地球連邦軍の指揮官で「木星帰りのニュータイプ」として登場します。

 ジュピトリスでは「独力」でモビルスーツを開発したらしく、シロッコの開発した可変モビルスーツ「メッサーラ」は、「ガンダムMK-II」を圧倒します。

 この時点の「ガンダムMK-II」は完成したばかりの新鋭機で、かつティターンズ(地球連邦軍)がフラグシップとして作ったハイエンド機ですが、それを個人が独自開発したモビルスーツで上回っているということです(地球連邦軍の軍備計画でメッサーラなどが開発されていたなら、ガンダムMK-IIはそのノウハウも反映されて、より高性能だったでしょうし、シロッコが独自開発したという「ガンダリウムγに近い装甲材」も採用されていたでしょう)。パイロットとしても被弾した描写はほぼなく、とてつもない天才と言えます。

 モビルスーツの開発は言うなれば「国家が戦闘機を作るようなもの」ですから、かなりの国家予算と人員が割かれているはずです。シロッコがいかに天才とはいえ、独力のみでそれ以上のことができたとは思えません。

 ジュピトリス艦内にモビルスーツの開発・生産設備があるようですが、その全てを独力で揃えられたとは思えませんから、巨大な資金源と支援組織があったと考えられます。

 それは「木星船団公社」だと思われます。「木星船団公社」とは、地球圏の核融合炉を稼働させるためのヘリウム3を、木星から調達するNGOで、一年戦争時の南極条約でも「攻撃してはならない」と条約に明記されています。言わば地球圏のエネルギー供給面での元締めですから、莫大な資金力があったことでしょう。

 時代が後になりますが、木星船団への海賊行為が「火星独立ジオン軍」や「クロスボーン・バンガード」により行われています。地球連邦軍の主力宇宙艦艇で、木星までジュピトリス級を護衛できる艦型は存在しませんから、「木星船団公社」は宇宙海賊も想定し、船団自衛のために莫大な資金を投じて、シロッコの研究を支援したのではないでしょうか。

 さて、そんなシロッコは地球圏に来た後、ティターンズの指導者ジャミトフ・ハイマンと接触し、その配下となります。これも不思議なことです。ティターンズの目的は、少なくとも表向きは「地球至上主義」を掲げ、「ジオン残党」「エゥーゴ」などのスペースノイド弾圧のために活動しています。普通に考えれば、スペースノイドで、かつニュータイプでもあるシロッコの存在が、組織内で重要視されるわけがありません。

 ティターンズの指導者ジャミトフは、一年戦争中に「スペースノイドごときが地球の大地を踏むことなどあってはならない」と発言するような人物です。同時にジャミトフの思想は「戦乱を利用し、増えすぎた人口を減らすことで、地球環境の悪化を防ぎ、選ばれた人間が地球圏を統治する」と、ジオンのギレン・ザビと類似したものでもあります。

 その過激思想を実現するための方便として、私兵を得るために「ジオン残党狩り」を掲げたジャミトフにとって、政治的影響を考えずに単純にスペースノイド弾圧に走る、部下のバスクなどは悩ましい存在だったでしょう。

 天才で、かつニュータイプであるシロッコは、ジャミトフの思惑に気づいたのでしょう。ジャミトフとしても、大きな資金力とモビルスーツ開発力を併せ持つシロッコは、欠かせない存在で、シロッコが実力を示し続けたことで、軽視はできなくなったのでしょう。

 結果、ティターンズのナンバー3となったシロッコは、ジャミトフがアクシズと外交交渉を持ちかけた際に、彼を暗殺。ナンバー2のバスクも、自分の部下であるレコアのモビルスーツに攻撃させて、戦艦ごと始末します。

 ここで、ティターンズの指導者にシロッコはなったわけです。しかし、なぜティターンズの将兵は、シロッコの配下として戦ったのでしょうか。

 シロッコは「ジャミトフが亡くなったのはハマーンの陰謀」として、組織をまとめたようにも見えますが、実際には地球至上主義を貫いた「ニューディサイズ」のように、思想を異とする者も多くいたでしょう。また、シャアのダカール演説で、ティターンズが地球連邦軍主流の座を追われたこともあり、かなり離脱者は出ていたのではないでしょうか。

 また、グリプス戦争でシロッコの率いるティターンズが勝利したとしても、地盤も人脈もない彼には組織全体の掌握は困難だったと思われます。

 シロッコのセリフで気になるのは「世の中を動かしたのは一握りの天才」「生の感情丸出しで戦うなど、これでは人に品性を求めるのは絶望的だ」「道を誤ったのだよ。貴様のようなニュータイプの成り損ないは、粛正される運命なのだ!」、そして「戦後の地球を支配するのは女だと思っている」です。

 前半で「シロッコを支援する組織があるのではないか」という考察を書きました。もしかしたらシロッコには、劇中で登場していない「戦後の地球を支配する資格がある、ニュータイプで、かつ品性のある天才的な女性」が念頭にあったのかもしれません。

 彼自身に支配欲があるなら、自身を「歴史の立会人」として傍観者的立場を取り、「この戦いが終わった後は恒星間旅行にでも行く」とは言わないでしょうから(ティターンズを自ら支配したいなら、傍観者としての無責任な言動は不利になるだけでしょう)。

「誰かに権力を渡すために動いていた」とでも考えないと、シロッコがリスクを冒してジャミトフやバスクを暗殺して権力を掌握したにも関わらず、支配欲や自身の目的は誇示しないという行動は理解しがたいと、筆者には感じられる次第です(もちろん「真意を煙に巻くための方便」という可能性もありますが)。

(安藤昌季)

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