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『ガンダムZZ』もしグレミーが反乱を起こさなかったら…ハマーンは覇者になれた?

マグミクス / 2022年12月8日 6時25分

『ガンダムZZ』もしグレミーが反乱を起こさなかったら…ハマーンは覇者になれた?

■地球連邦を事実上降伏させたのに…

 人気アニメ『機動戦士Zガンダム』の続編として、1986年に放映開始された『機動戦士ガンダムZZ』。前作で主人公勢力のエゥーゴは、ティターンズとの戦いで疲弊しきってしまい、ハマーン・カーンが率いるネオ・ジオンの侵攻に対して後手後手となります。

『ZZ』の劇中では、地球連邦軍はほとんど戦闘に参加せず、機動巡洋艦アーガマ(後にネェル・アーガマ)と搭載モビルスーツが多くの場合、ほぼ単独でネオ・ジオンと戦っているかのようなストーリーラインとなっています(実際には、別の所で戦っている部隊もあったのでしょうけど)。

 このため、ネオ・ジオンによる地球降下作戦は成功し、地球連邦政府のあるダカールは占領されました。ネオ・ジオンは旧ジオン公国残党や、エゥーゴに反発する旧ティターンズ勢力までも糾合し、戦力を増大化させます。

 ネオ・ジオンはさらに、地球連邦高官が避難したダブリンに、スペースコロニーを落とします。この結果、地球連邦政府は「停戦条約締結と引き換えに、ネオ・ジオンにサイド3を譲渡する」条約を締結します。事実上の「降伏」と言えるでしょう。

 この作品での地球連邦軍の活動は低調で、スペースコロニーを落とされてもネオ・ジオンとの徹底抗戦などは求めていません。連邦は「ネオ・ジオンにサイド3を与えて和平交渉を結ぶ」として、交戦を続けているアーガマまでが武装解除を求められているほどです。

 ところが、ここでサイド3を手に入れたネオ・ジオンはそこで足並みが乱れます。その上で、長らくジオン共和国として、ザビ家体制と決別していたサイド3は、必ずしもネオ・ジオンに協力的ではありませんでした。また、母国を手に入れたことで、ネオ・ジオン内の派閥はそれ以降の思惑がバラバラとなります。

 そこで「ザビ家の血を引く」と称するグレミー・トトがハマーンに反乱を起こします。宇宙要塞アクシズを奪ったグレミー軍とハマーン軍の戦力には大差なく、両者がほぼ相討ちとなったところで、エゥーゴのネェル・アーガマ隊がZZガンダムで、ハマーンのキュベレイを撃破したため、ネオ・ジオンが自滅して戦争が終わったのです。

 指導者を失ったネオ・ジオン軍は瓦解し、連邦軍に投降したり、シャア・アズナブルの配下となったり、各地でゲリラ戦を展開したりしました。

ネオ・ジオンの士官グレミー・トトが搭乗した可変分離MS「バウ」。上半身と下半身に分離し、バウアタッカーと無人機のバウナッターへ変形する。画像は「HGUC 機動戦士ガンダムZZ AMX-107 バウ 1/144スケール」(BANDAI SPIRITS)

●グレミーが反乱を起こさなかったら、歴史はどう変わっていた?

 もしグレミーが反乱を起こさなかったら、どうなっていたでしょうか。グレミーの反乱理由は劇中では不明瞭ですが、一説ではグレミーは「ザビ家の隠し子、あるいはギレン・ザビとニュータイプ女性の遺伝子で造られた試験管ベビー」と言われています。これが本当なら、何かで出生の秘密を知ったことで、ミネバ・ザビの摂政でしかないハマーンよりも、自身の方が上に立つべきだと考えたのでしょう。

 グレミーが秘密を知り得た理由はわかりませんが、筆者はシャアがネオ・ジオン瓦解のために仕掛けた離反工作ではないかと想像します。『ZZ』の時期、シャアはミネバを拉致して、影武者とすり替えているからです。シャアの属していたエゥーゴは、この時期、地球連邦と癒着して、スペースノイドの権益を守ることに積極的ではありませんでした。

 シャアはエゥーゴ内の連邦系勢力から、自身が強い支持を得られるとは思っていなかったでしょうし、ジオン・ズム・ダイクンの後継者として、自身がジオンの指導者になりたかったのでしょう。そうした行動理由を持っているのであれば、ハマーンの率いるネオ・ジオンとは相いれませんから、これを瓦解させねばなりません。そのためにグレミーに目を付けたのではないでしょうか。

 なお、後のネオ・ジオンにシャアのクローンと言うべき強化人間フル・フロンタルが登場します。フロンタルをネオ・ジオンに送り込んだのは、ジオン共和国の国防大臣モナハン・バハロとされています。モナハンはジオン公国の首相だったダルシアの息子です。

 モナハンはしたたかな人間で、連邦に協力するように見せて、影でネオ・ジオンも支援しているような人物です。連邦軍籍を偽造してエゥーゴに所属するなど、連邦とジオンの両者を利用していたシャアとも接点はあったことでしょう。シャアはモナハンから、ジオンの機密であるフロンタルのような強化人間の存在を伝えられ、さらに人工的に作られたグレミーの出生も知ったのではないでしょうか。

 このような離反工作がなかったなどの理由で、グレミーがハマーンに従い続けたとしたら、一時的にネオ・ジオンは地球圏の覇者となったでしょう。

 しかし、それはシャアの仇敵であるザビ家を正当とするハマーンが、サイド3を中心に、地球連邦を武力で従わせているという構図です。シャアにとっては黙認できる状況ではありませんし、ネオ・ジオンにはかつてのジオンほど圧倒的な軍事力もありません。地球連邦軍の一部やエゥーゴから「ハマーンと交戦すべき」という動きは強まったでしょう。

 結論として、シャアはブライトやアムロといった旧エゥーゴの人脈と、ダイクン派のジオンを糾合して、ハマーン打倒の軍を起こしたと考えられます。

 キャスバル・レム・ダイクンだとダカール演説で出自を明らかにしたシャアが、ミネバの拉致に成功すれば、ハマーンの権力に正当性はなくなります。その場合、遠からずネオ・ジオンは分裂するでしょう。仮に、ミネバ拉致に失敗していたとしても、エゥーゴの支援母体であるアナハイム・エレクロトニクスはシャアに協力的ですから、新型のモビルスーツをエゥーゴに供給し、それをアムロやシャア、場合によってはカミーユ、ジュドーらも使うことになりますから、対抗は難しかったのではないでしょうか。

 この場合、アムロら、シャアの周囲の人たちは彼の考える「地球を隕石投下で核の冬にして、人が住めない惑星とし、宇宙移民を完成させる」ことに賛同はしなかったでしょうから、歴史は大きく変わっていたのではないでしょうか。

(安藤昌季)

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