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手塚治虫が執拗に描いた「戦争」の真理 「一度傾いた流れは止められない」?

マグミクス / 2022年12月8日 7時10分

手塚治虫が執拗に描いた「戦争」の真理 「一度傾いた流れは止められない」?

■戦争を「止めようとした」者にも光を当てる

 今から81年前の1941年12月8日、日本軍によるハワイ・真珠湾への奇襲攻撃が行われ、日本とアメリカによる4年に及ぶ太平洋戦争が始まりました。そして2022年の現在も世界では戦争が起こっており、日本も決して無関係とは言えません。

 今回は手塚治虫先生の作品から「戦争」について描かれた4つの作品を紹介します。私たちが暮らす現代や未来の世界についても考えさせられる作品ばかりです。

●『太平洋Xポイント』

 まずは『太平洋Xポイント』という作品です。物語は、コスモポリタン国の科学者・ナーゼンコップ博士が「空気爆弾(空爆)」という地球上の空気を連鎖的に爆発させてしまう恐ろしい兵器を開発したことから始まります。コスモポリタン国は敵対しているユーラシャ国に「空爆」の威力を示そうと太平洋上のとある島で爆発実験を起こすと発表。世界の人びとは「地球が滅びてしまうのではないか」と怯えます。

 ここで立ち上がったのが、かつては泥棒だったサムという男。サムは息子のエリックとふたりで、実験場所のアナタハン島へ潜入。空爆が積み込まれた船を爆破し、実験を阻止することには成功したものの、銃撃され命を落としてしまいました。

●『ロック冒険記』

 続いては『ロック冒険記』という作品です。主人公の少年・ロックは、父のディモンが発見した新たな惑星・ディモン星の探検へと旅立ちます。そこで発見したのは石油で満たされた黒い海、そして人間に似た姿をした「エプーム」と呼ばれる鳥人間の種族でした。ロックはまだ文明があまり発達していなかった「エプーム」たちに火の使い方と知恵を伝授。豊富にある石油資源も活用し、ディモン星は大きく発展します。しかし、そこに目をつけたのが欲深き地球人たちでした。彼らはディモン星に兵器を持ち込み「エプーム」たちを大量に誘拐。奴隷として地球に連れ帰ります。

 しかし「エプーム」たちもただ侵略されるだけではありませんでした。ディモン星の豊富な資源を活かし、人類の兵器を真似て独自に武器を開発。反撃に出ます。しかも彼らは人類にとって恐ろしい病原菌を伝染させることもできたため、人類の方が逆に追い詰められるほどになりました。最後はロックの奮闘で両惑星の全面戦争を止めることには成功しましたが、ロック自身は命を落としてしまいました。

■「子供を戦場に行かせないために」母親の悲しき行動

戦地へ向かう青年の苦悩が描かれた『ブラック・ジャック』第20巻(著:手塚治虫/手塚プロダクション)

●『ブラック・ジャック』

 続いては『ブラック・ジャック』から「戦争はなおも続く」というエピソードです。ブラック・ジャックが担当したのは、椎間板ヘルニアを患う青年。青年の母親は「早く治して息子を戦地へ送り出したい」と訴え、息子に無理なリハビリをさせようとします。これにブラック・ジャックは「(死ぬ確率の高い戦場へ行かせるなんて)なんのための治療なんだ」と怒ります。

 しかし、実はこの母親は子供を戦場に行かせないために病気が悪化するようわざと無理なリハビリを強いていたことがわかり、ブラック・ジャックは、青年が戦地へ行かないですむように診断書を書いてあげました。が、最後は結局、青年は無理やり戦場へ駆り出され、命を落としてしまいます。

 このほか『ブラック・ジャック』では「アナフィラキシー」というエピソードでも、戦地で追った傷を手術で直した青年が、目を覚ましたあとに「また戦場に戻るぐらいなら死んだ方がいい」と自殺してしまう話があります。

●『火の鳥』未来編

 続いては『火の鳥』未来編で描かれたエピソードです。時は西暦3404年。人類は荒れ地となった地上から、世界5か所にある地下都市へと移り住んでいました。そんな人類の意志決定をしていたのは、各都市にある高性能コンピュータ。それぞれ「電子頭脳・ハレルヤ」や「聖母機械・ダニューバー」など立派な名前を持っていて「感情に振り回される人間よりも常に合理的な判断ができるコンピュータの方が頼りになる」という理由から、人類から絶大な支持を得ていました。

 しかし、あることをキッカケにこのコンピュータ同士がケンカを始めます。互いが引かずにヒートアップした結果「どっちかが消えるべき」という、まさかの「戦争」宣言。もちろん止めようとする人間もいましたが、結局は流されるまま核戦争へと突入し、人類はほぼ滅亡してしまうのでした。

 いろいろなタイプのエピソードを紹介しましたが、どの作品にも、一度大きく傾いてしまった流れは、多くの人が「間違いだ」とわかっていてもなかなか止めることができない……という恐ろしさが共通して描かれているように感じます。

(吉原あさお)

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