ゲームの「隠しコマンド」最近見なくなった理由 「そもそも何のためにあった」?
マグミクス / 2022年12月8日 19時50分
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■ゲーム開発に必要な機能だった?
「隠しコマンド」とは、特に1980年代のファミリーコンピューター時代に多く見られた、「制作者がゲーム内にこっそり隠して入れていたコマンド」のことです。恐らく最も有名なのは「コナミコマンド」で、「上上下下左右左右BA」というもの。
初出はファミコン版「グラディウス」(1986年)で、ゲームを一時停止しコントローラーからコマンドを入力すると、バリアーなどが最初から装備された状態になりステージ攻略が楽になるというものでした。これはバグ(開発ミス)を利用したいわゆる「バグ技」とは違います。それらを一緒に語る場合は「裏技」と言ったりしますね。
「隠しコマンド」を入れて起きる現象で比較的多いのは、プレイヤーがパワーアップしたり無敵になったりするものです。次いでコンティニュー、ステージセレクト。なかにはオマケ要素が見られるというものもありましたが、基本的にはゲーム進行に関わるものです。ここでピンと来た方もいると思いますが、この「隠しコマンド」、もともとは開発者がゲームのデバッグ(チェック)をするためのものだったと言われています。
当時のコンピューターゲームには、途中経過を保存するという概念がほぼありませんでした。その理由は「ゲーム」に対する世の中の認識です。例えばトランプで遊んでいたとして、別の用事が入ったら途中でも片付けてしまいますよね? わざわざ途中経過をメモして後で続きから遊ぶ……といったケースは少ないはずです。コンピューターゲームへの認識も同じようなものだったのです。
あとは機器の性能面での都合もあります。バックアップはもちろんパスワード機能ですら、実装は大変でした。しかしこれだと開発者は困ります。隅から隅までプレイしてミスを探さなければいけないのに、ゲームオーバーになったら最初からやり直しでは、最終面のチェックをするのが大変すぎます。
もしくは、「今は敵の動きをチェックしたい」というときに、やられないように避けまくっていては集中できません。そこで普通の人には必要がないコンティニューや無敵機能が求められ、それを消し忘れてゲームを出荷したことが「隠しコマンド」の始まりと言われています。これって、厳密に言えば「バグ」が残ってしまった状態ですね……。
しかしここで疑問が出ます。元々消すつもりだったならもっと簡単なコマンドでいいじゃないか、複雑なのはいかにも仕込んである感じで怪しい! と。……いえいえ、そうではないのです。
■「隠しコマンド」操作が複雑だった、納得の理由
デバッグでは、普通はやらないいろんな操作をしてミスを見つけます。ゲームオーバーの時にキーやボタンをメチャクチャに押しまくるとか、タイトル画面でAボタンを連打しまくりとか、そういうことをやるのです。ですから、簡単なコマンドだとそれで発動してしまうのです。これではデバッグ作業の邪魔になります。
「キャラが無敵になっちゃいました! ミス発見です!」「ごめん、それ今はいいんだ……」といったことが繰り返されると、人は本当のミスを発見しても「これもきっと仕込みだろう」と勝手に判断して報告しなくなってしまいます。デバッグ作業でもっともやってはいけないことのひとつです。
開発者がその手助けをしてしまったとなれば一大事ですね。そのため隠しコマンドを仕込む条件は、「普通の操作では発動しないこと」のほかに「メチャクチャに操作しても(簡単には)発動しないこと」が求められるのです。だから複雑なのです。
もちろん「隠しコマンド」が流行った後では、「プレイヤーに見つけてもらうために意図的に仕込む」ようになったので、「偶然の操作で発見できる」程度になっているケースもあります。なお、これはゲームの機能のひとつなのでデバッガーのチェック対象です。何だか本末転倒な話にも聞こえますが、こうして「隠しコマンド」文化は発展していき、現在も私たちの記憶に残っているのでしょう。
さて、では逆にどうしてファミコン時代以降「隠しコマンド」をあまり聞かなくなったのでしょう? 現在ではもうほとんどないのではないでしょうか。それはここまでの話を逆に考えてみると、答えのいくつかが見つかりそうです。
例えば、ゲームの規模が大きくなりセーブが当然になりました。するとキャラを無敵に改造したセーブデータを用意すれば、ゲーム側に何も仕込まなくても無敵キャラを出せますね。最初から存在しないので消し忘れる心配もありません。またゲーム機の性能も上がって、まるでパソコンの常駐プログラムのようにデバッグ用のツールを陰で動かすこともできるようになりました。
プレイヤーの視点で見ると、ゲームの規模が大きくなったので普通に遊ぶだけで十分、もしくは満腹すぎて手一杯になった……というのも大きいでしょう。「隠しコマンド」探しより遊び尽くすことに集中できるのは、ある意味本来の楽しみ方と言えます。こうして「隠しコマンド」はその役割を終えたということだろうと思うのです。
(タシロハヤト)
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