どう見ても10代じゃない？ ←結果、実写版で「おじさん」が演じた高校生キャラ

■大切なのは貫禄と実力？

　近年、さまざまなマンガの実写化作品が増えており、原作の時点ですでに「10代に見えない」「貫禄ありすぎ、大人びすぎ」な学生キャラも、さまざまな工夫で再現されています。中高生を演じる俳優たちが20代半ばを超えていると「正直、制服姿がキツい……」という声が上がることもありますが、原作での見た目やキャラクター性の強さをベテランが再現し、「むしろハマリ役！」と評される例もあるようです。今回は実写化で30代以上の「おじさん（？）」俳優が演じた、強烈な学生キャラをご紹介します。

●『俺物語!!』の剛田猛男　演：鈴木亮平

『俺物語!!』（原作：河原和音　作画：アルコ）は、少女マンガとしては異色の「屈強なごつい男が主人公」という設定で、話題を集めました。そして、2015年公開の実写映画では、公開当時32歳の鈴木亮平さんが高校1年生の主人公・剛田猛男を演じています。

　いかつい容姿や実直な性格が高校生離れしている猛男は、同年代の俳優が演じるとなると、かなり難しい役だったのではないでしょうか。ジャンルがラブコメ、ギャグである点も功を奏し、30代に突入した俳優が演じることも特に違和感がなく、むしろ「ハマってる！」と高評価の声が相次ぎました。実写版の猛男は顔の圧の強さ、日本男児っぷり、コミカルさも原作さながらです。役作りのために30キロ増量した鈴木さんの熱量と、演技の幅広さが感じられる一作でした。

●『翔んで埼玉』の麻実麗　演：GACKT

　作者が執筆当時暮らしていた埼玉県を、自虐的に描いたギャグマンガ『翔んで埼玉』（原作：魔夜峰央）は、未完のまま連載が中断となった36年後の2019年に、まさかの実写化映画が公開されました。そして、主人公のひとり・麻実麗に抜擢されたGACKTさんは、公開当時45歳で高校3年生の麻実麗を演じたのです。

　実写化を手がけた武内英樹監督は、「作品のファンタジー感を高めるために、GACKTさんに高校生役をやってもらうことを思いついた」と振り返っています。そして、当のGACKTさんは「高校生役は無理があるのでは」という理由で一度オファーを断ったことを、公開時のインタビューで明かしていました。しかし、もともと大ファンだった魔夜先生が、このキャスティングに太鼓判を押していると聞いたことをきっかけに、出演を決めたそうです。

　眉目秀麗でゴージャスな完璧超人・麻美麗は、まさにマンガだからこそ成立するようなキャラクターですが、GACKTさんの類稀な美貌とストイックな役作りによって、原作ファンも納得の実写版・麻実麗が誕生しました。特に、原作にはない「東京テイスティング」のシーンは、GACKTさんの『芸能人格付けチェック』でのイメージあってこその名場面と言えるでしょう。

●『信長協奏曲』のサブロー／織田信長　演：小栗旬

　タイムスリップしてしまった高校生が、織田信長となって天下統一を目指す『信長協奏曲』（原作：石井あゆみ）の実写ドラマ（2014年）で、主人公・サブロー（織田信長）を演じたのは、当時31歳だった小栗旬さんです。小栗さんは当初、制服を着て学生を演じなければいけないことに不安を感じたそうですが、ごく普通の高校生と天下の織田信長という二役を同時に演じるには、小栗さんのような経験豊富な俳優の実力が必要だったのでしょう。

　この一風変わった役柄を、実際に主人公と同世代の俳優が担当するとなると、原作のような貫禄のある織田信長には見えなかったはずです。後に公開された劇場版もドラマ同様にヒットした背景には、年齢にこだわらない大胆なキャスティングがあったのかもしれません。

　上記のような例もある一方、例えば2021年のドラマ『古見さんは、コミュ症です。』（原作：オダトモヒト）では、原作で普通に高校生に見える主人公・只野仁人を増田貴久さん（当時35歳）が演じ、「なぜ？」と話題になっています。同作には、同じく高校生役で城田優さん（当時35歳）や溝端淳平さん（当時32歳）も出演しており、SNS上では「学園ドラマなのに平均年齢高め」「主演に合わせたキャスティング？」などの声もありました。ただ、増田さんの優しい雰囲気と、「普通の人っぽさ」があふれ出た演技が話題を呼び、「増田さんの人間性に合っている役」「年齢層高めな分、落ち着いた雰囲気がよかった」など好評な意見も増えていったようです。

（椎崎麗）