「聴いてるだけで鬱になる」アニメのトラウマ合唱曲3選 もはや「呪いの歌」？

■歌とシーンのギャップがあり過ぎる

　アニメの印象的なシーンで挿入歌が流れると、感情がより刺激されませんか？　ときには誰もが知る童謡や合唱曲が使われることもあります。歌詞をよく知っているだけに、イメージとは正反対のシーンで使われると心に刺さるはず。今回はそんな、聴いただけでアニメのトラウマシーンを思い出してしまう童謡や合唱曲を紹介します。

※この記事には登場人物の生死に関わるネタバレが含まれますのでご注意ください。

　まずは少年少女と使徒との過酷な戦いが描かれた『ヱヴァンゲリヲン新劇場版：破』。中盤では「今日の日はさようなら」が、終盤では「翼をください」が流れます。どちらも綾波レイ役の林原めぐみさんが歌っており、透明感のある声が印象的です。

　中盤ではアスカがテストパイロットとして搭乗したエヴァンゲリオン3号機が、使徒に浸食され暴走。エヴァンゲリオン初号機で迎撃に向かうシンジですが、アスカを傷つけたくないと命令を拒否します。すると初号機のダミーシステムが起動し、シンジの意志とは関係なく3号機を攻撃。3号機が一方的に破壊されていくシーンに、「今日の日はさようなら」が重なります。アスカの心情を反映したような歌詞に、感情をかき乱されるはず。

　さらに終盤では同じく使徒に浸食されたエヴァンゲリオン零号機と綾波レイを、シンジが救出。BGMには「翼をください」が使われ、絶望的な状況に光が差したかのような希望を抱かせます。しかしそれを見守る大人たちは「世界が終わる」と不安そうな表情。崩壊していく景色に無垢な歌声が重なり、不穏さが際立ちます。

　続いて紹介するのは『攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG』で使われた「手のひらを太陽に」。本作は、犯罪に立ち向かう公安9課の活躍を描いた、人気SFシリーズの第2期です。第26話「憂国への帰還 ENDLESS∞GIG」では、公安9課が作戦を遂行している出島に、核ミサイルが迫ります。迎撃が間に合わない絶体絶命の危機を救ったのは、AI搭載のロボット・タチコマたち。命令を無視して自分たちのAIが搭載された衛星を制御し、空中で核ミサイルに衝突させました。

　これまで蓄積したデータがすべて消えるかもしれない、という過酷な状況で口ずさんでいるのが「手のひらを太陽に」。生きていることの素晴らしさを無邪気に歌い、自分たちのすべてを投げ出して人間を救うシーンに涙が止まらなくなるでしょう。

■ガンダム最新作にも「呪いの歌」が？

主人公が呪いの歌を口ずさむ？　ED曲「君よ 気高くあれ」期間生産限定盤ジャケット画像（歌：シユイ、ソニー・ミュージックレーベルズ）

　2022年秋から放送がスタートした『機動戦士ガンダム 水星の魔女』にもSNSで「呪いの歌」と話題になるほど印象的な童謡が登場しました。誕生日の定番曲「Happy Birthday to You」です。

　学園を舞台にしており、婚約を賭けた決闘など比較的明るい雰囲気の強かった本作。しかし第6話「鬱陶しい歌」で主人公のスレッタと、先輩のエランが歌う「Happy Birthday to You」が流れ、物語が一気にシリアスになりました。

　ガンダムに乗るための強化人士として生み出され、誕生日すら持っていなかったエラン。そんなエランに決闘で勝利したスレッタは「今日を誕生日にしよう」と提案します。しかしスレッタに負けたため、エランは秘密裏に廃棄されることに。何も知らないスレッタは陽気に、エランはかすかに笑みを浮かべて「Happy Birthday to You」を口ずさみます。

　本編の前日譚となる「PROLOGUE」にも似たシーンが登場しました。その日は少女・エリクトの誕生日。戦いのなか、自らの死を悟ったエリクトの父親は「Happy Birthday to You」を歌います。機体の回線からその歌声が聞こえ、一緒に口ずさむエリクト。ふたり分の歌声は、やがてエリクトだけの声になってしまいます。

　どちらのシーンでも、状況を知らない人と死の淵にある人がともに歌い、最後は生きている前者だけの歌声に。しかも死とは正反対の「誕生日を祝う歌」であることから、皮肉や悲しみが伝わってきます。

　感動を増幅させたり悲しみを際立たせたりとさまざまな効果がある、アニメで流れる合唱曲や童謡。ぜひ耳を傾けて、じっくり視聴してください！

（ハシビロコ）