劇場版『シティーハンター』がBS放映 「すけべ」と「もっこり」は違うもの?
マグミクス / 2022年12月11日 17時10分
■世界中で愛されるキャラ・冴羽リョウ
北条司氏の人気マンガ『シティーハンター』は、1987年にTVアニメシリーズが始まり、大人気を博しました。新宿をホームグランドにした街の始末屋・冴羽リョウとその相棒・槇村香の活躍を描いたハードボイルドコメディとして、多くの人に愛され続けています。
海外でも高い人気を誇り、ジャッキー・チェンが主演した香港映画版『シティーハンター』(1993年)、原作の世界観をとてもリスペクトしたフランス映画版『シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』(2019年)として実写化もされています。冴羽リョウは世界中で愛されているキャラクターであることが分かります。
BS12では、2022年12月11日(日)の19時より「日曜アニメ劇場」にて、『シティーハンター 愛と宿命のマグナム』(1989年)を放映します。記念すべき劇場アニメ版の第1弾であり、元傭兵である海坊主や警視庁の刑事・野上冴子ら人気キャラクターたちも続々と登場します。
■冷戦を背景とした、1980年代の新宿が舞台
冴羽リョウの今回の案件は、来日した国際的ピアニスト・ニーナの父親探しです。無類の女好きなリョウは、美女ニーナの依頼を喜んで引き受けます。
ニーナの生まれた西ガリエラ国は、隣国・東ガリエラ国との間で冷戦状態が続いています。ニーナとリョウ、そして香は、両国間の諜報戦に巻き込まれるのでした。「赤い死神」と恐れられる東ガリエラ国の情報部大佐・ヨハンとリョウは対決することになります。
新宿駅の東口には手書きの伝言板が設置されており、まだ携帯電話やインターネットなどが普及していない時代だったことを感じさせます。また、ドイツを東西に分断していた「ベルリンの壁」が崩壊したのは1989年11月になります。劇場公開された1989年6月はまだ東西冷戦が続いている状況でした。そんな1980年代という時代を背景にして、物語は進んでいきます。
TVアニメ開始30周年を記念した『劇場版シティーハンター 新宿プライベート・アイズ』(2019年)では、劇中でスマホが使われるようになり、新宿・歌舞伎町の景観もずいぶんと変わります。『シティーハンター 愛と宿命のマグナム』を観て、バブルが弾ける直前の街の雰囲気を懐かしく感じる人もいるのではないでしょうか。
■「もっこりしよう!」と美女に迫る主人公
国際的ピアニスト・ニーナの依頼で、冴羽リョウらは彼女の父親探しに奔走する (C)北条司/コアミックス・読売テレビ・サンライズ
銃さばきや格闘術には優れている冴羽リョウですが、女性にはまるでだらしないダメ男です。依頼人が美女だと「もっこりしよう!」と仕事そっちのけで迫ります。今なら確実にセクシャルハラスメント扱いされるでしょう。ボディタッチはもちろん、性的な言動もアウトです。
長尺の劇場版とあって、スケールの大きなド派手なアクションが繰り広げられます。しかし、劇中で飛び交う「もっこり」発言の回数もハンパありません。その分、香のお仕置き「100tハンマー」も容赦なくリョウに向かって繰り出されます。
一見すると、ただのエロ人間にしか思えないリョウですが、そんなリョウのいざという際の意外な顔を知ったニーナは、次第にリョウに関心を持つようになります。リョウのことを「すけべ」と呼ぶニーナでしたが、リョウは「すけべって言うのはやめて、もっこりと言って」と反論します。
「すけべともっこりは違うのですか?」
ニーナのリョウに対する質問は、なかなか考えさせるものがあります。
■欠かせないのは、香の「100tハンマー」
すけべともっこりは、リョウにとっては大きく違うようです。リョウは魅力的な女性に対する好意として「もっこりちゃん」と呼び、また一種のコミュニケーションのつもりで「もっこりしよう」と迫ります。リョウは最大限の親しみを込めて、「もっこり」発言しているようです。
しかし、リョウに悪意はなくても、呼び掛けられた女性が不快に感じれば、それはもうセクハラです。香の「100tハンマー」というツッコミがなければ、助けを求めている人の弱味につけ込む本当のダメ人間にリョウはなってしまいます。
冴羽リョウは、あくまでも1980年代に誕生したフィクション上のキャラクターであり、マンガやアニメの世界の住人だから「もっこり」発言が許されている存在だと言えるでしょう。
女性にはだらしないリョウですが、悪いやつらの前では別人のように頼れる男に変わります。普段はダメダメでも、決めるときはバシッと決める。そんなリョウの二面性に、ファンは魅力を感じています。時代の変化を読み、「もっこり」を控えるようになったマジメなだけのリョウは、ファンも見たくないのではないでしょうか。
かつて新宿には、困った人に手を差し伸べるスゴ腕の始末屋たちがいた。冴羽リョウとその相棒・槇村香はそんな伝説のコンビです。1980年代という過ぎ去った時代に対する郷愁が、リョウと香の人気をより高めているのかもしれません。
※「冴羽リョウ」の「リョウ」の字は、正しくは「けものへん」にうかんむりのない「寮」ですが、機種依存文字のため、やむを得ずカタカナで表記しています。
(長野辰次)
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