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『THE FIRST SLAM DUNK』は史上最も「原作に忠実なアニメ化」 自分がいる場所が分からなくなる体験

マグミクス / 2022年12月20日 6時25分

『THE FIRST SLAM DUNK』は史上最も「原作に忠実なアニメ化」 自分がいる場所が分からなくなる体験

■究極の原作再現

「すごいものを観た」。
『THE FIRST SLAM DUNK』を観終えた筆者の率直な感想です。2016年に上映され大ブームを巻き起こした『君の名は。』以来、力の入った劇場アニメが増えていますが、興収400億を突破した『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』、Adoさんの歌う「新時代」が話題となった『ONE PIECE FILM RED』などと並び、『THE FIRST SLAM DUNK』も間違いなくアニメの歴史に名を残す作品になるでしょう。

 すでに伝説と化している原作と共に、末長く語り継がれることは間違いありません。そう断言できるだけのことを、この映画はやってのけています。

※この記事には、 映画『THE FIRST SLAM DUNK』の本編内容に関する記述が含まれています。ネタバレを気にされる方はご注意下さい。

 本作で、主人公は桜木花道ではなく宮城リョータです。原作では三井とのいさかい程度しか触れられていなかったリョータの過去ですが、「週刊少年ジャンプ」1998年9号に掲載された短編「ピアス」で断片的な情報が語られており、『THE FIRST SLAM DUNK』ではさらに本格的に掘り下げられていきます。なお、「ピアス」は単行本などには未掲載だったため長らく幻の短編扱いされてきましたが、12月15日に発売された『THE FIRST SLAM DUNK re: SOURCE』に掲載され、ようやく誰でも読むことができる状況となりました。

 ストーリー展開としては原作最後の試合となった山王戦がメインとなり、合間合間にリョータの過去が明かされる形で進行していきます。

『SLAM DUNK(スラムダンク)』はかつて、TVアニメとして放送されましたが、全国大会に出場する前に終了しており、山王戦は初めての映像化となりました。原作者の井上雄彦先生が監督を務めただけのこともあってクオリティは極めて高く、全編を通して井上先生の絵がそのまま動いているという、原作に忠実なアニメ作りの理想形と言える作品となっています。この10年ほどで「原作に忠実なアニメ」は数多く作られてきましたが、そのなかでも「最も忠実な作品」を挙げるなら間違いなく『THE FIRST SLAM DUNK』になるでしょう。

■自分のいる場所が、現実か作品のなかなのか分からなくなる感覚

映画『THE FIRST SLAM DUNK』の主人公・宮城リョータ (C)I.T.PLANNING,INC. (C)2022 SLAM DUNK Film Partners

『THE FIRST SLAM DUNK』で最も驚かされたのは、非常にリアルな形でバスケの試合が展開されていく点です。登場するキャラクターたちは皆がコートのなかで走り回ってマークを外そうとしたり、身体をぶつけ合って優位を獲得しようしたりしています。井上先生もインタビューで「足の踏み方やボールを貰ったときの身体の反応、シュートに行くときのちょっとしたタイミングなど、ぼく自身が体感として覚えている“バスケらしさ”をそのまま表現している」と語っており、キャラクターたちの動きの生々しさを出すためにかなり気を使っていることがうかがえます。なお経験が浅い桜木花道は、本当に素人らしい動きをしばしば見せているのも面白いところです。

 さらに音も非常に重要なポイントです。バスケットボールのバウンド音は、筆者が学生時代に体育館で何度も耳にしたものと完全に同じ。この音を聴くだけで一気に数十年の時間を引き戻されたように感じました。また、選手たちの息づかいや心臓の音も、地味ながらも作品への没入感を増すための重要な要素として組み込まれていたのが印象的でした。

 筆者は原作を「週刊少年ジャンプ」連載時から追っており、単行本も何度読み返したか分かりません。当然、ストーリーは頭に入っています。なのに、それまで紙の上で展開されていたシーンがアニメとして動いているのを見ると「次はいったいどんなシーンが見られるのか」と、試合展開が分かっているにも関わらず、どんどん試合のなかに引き込まれるような感覚を覚えたのです。

 音・声・動き、そしてキャラクターたちの想いや熱が混然となりもたらされる命の躍動。『THE FIRST SLAM DUNK』が見せてくれたものを、あえて言葉にするならこうなるでしょうか。ラストのあたりではいま自分がいるのは現実なのか、それとも作品のなかなのか分からなくなるほどの没入感に見舞われたのです。作中の時間の進みはどんどん遅くなるのに、加速していく物語と熱気はかつて想像していた以上にすさまじいものでした。

『THE FIRST SLAM DUNK』は、今の日本アニメが到達した最高峰のひとつであることは間違いありません。未鑑賞の方はなんとしても劇場へと足を運ぶべきでしょう。

(早川清一朗)

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