今も議論が白熱? 『めぞん一刻』の響子さんは「面倒」なのか「デレ」で許されるのか
マグミクス / 2022年12月20日 15時10分
■響子さんは「面倒臭い女性」なのか「かわいげのある女性」なのか?
高橋留美子先生の代表作のひとつ『めぞん一刻』は文句なく傑作ですが、メインヒロインであり、舞台となる一刻館の管理人である音無響子さんの人格については、長きにわたり議論の対象になっています。主人公の五代裕作やライバルの三鷹瞬に対する響子さんの態度は「面倒」なのか? かわいい一面の「デレ」で水に流せる魅力的な女性なのか? 両面にわけて考えてみたいと思います。
●苦学生「五代裕作」と金持ち「三鷹瞬」を天秤にかける
前夫と死別し「操(みさお)をたてる」ため恋愛に消極的な響子さん。一方で物語序盤、五代の告白でその好意を知ります。また、三鷹瞬からも好意を寄せられることで、この3人の恋模様がスタートします。
三鷹は、イケメンかつ大人の魅力で、車で響子さんの送り迎えやデートに誘うなどのアピールをします。さらに犬嫌いも克服するなど、愛犬を大切にする響子さんのために努力を惜しまない人物でした。そんな三鷹の好意を響子さんは享受していきます。ただ、早い段階で響子さんは五代に好意をもっていたことを後に明かしているため、響子さんはその意図はなくとも、三鷹は完全に「かませ」になっていたことになります。
●好意を示していないのにあからさまな「嫉妬」
響子さんについてもっとも議論の的になるのが、「嫉妬」や「やきもち」です。特に好意を告げた五代の女性がらみに「嫉妬」を露わにします。
五代がバイトの同僚・七尾こずえと2人きりで歩いているのを見て響子さんはむかっ腹。そして、こずえの手編みのセーターを見て嫉妬し、五代に対し「もう絶対やきもち妬いたりしません」と突き放したりします。また、五代がこずえにプロポーズしたと勘違いし問答無用でビンタするなど、交際しているわけでも響子さんの気持ちを伝えているわけでもないのに嫉妬を繰り返します。
さらに五代が教育実習で出会った高校生の八神いぶきにつきまとわれると、響子さんは苛立ちを募らせ、2人きりになると邪魔をします。いぶきが「五代のことが好きなのか?」と尋ねても響子さんはうやむやに返答、挙句「五代さんは私のことが好きなんです」と、まさかの「好かれマウント」をとりました。また、いぶきは「好きじゃないふりして愛されようなんてムシのいい話だわ」と指摘しています。
このような厄介な性格について一刻館の住人である六本木朱美も冷や水をぶっかけています。五代と朱美がホテルに行った疑惑が噴出すると、響子さんは癇癪(かんしゃく)をおこします。すると朱美は「ろくに手も握らせない男のことで泣くわわめくわ」「あんたみたいな面倒くさい女から男とるほど物好きじゃないわよ」と五代の潔白とあわせて響子の面倒くささを指摘しました。
●嫉妬からバイオレンスに発展?
おしとやかに見える響子さんですが、五代のデリカシーの無さにビンタなどの制裁を加えることが幾度となくありました。
響子さんが屋根から落ちそうになった際、過失で胸を触った五代にビンタ。保育士の試験前日に飲酒した五代にビンタ。シリアスな空気に乗じて五代がキスしようとしてきてビンタなど、響子さんは「わりと手が早い」というのも多くの読者の印象に残っているのではないでしょうか。
■「面倒臭い」を覆す響子さんの魅力的なポイントとは?
響子さんのやきもちの矛先は五代であり、残念ながら三鷹へはほとんどなかった。画像は『めぞん一刻』新装版 第4巻(小学館)
そうはいっても、さきに述べたような面倒臭い点を覆すほどの魅力も持っています。なんといっても美人の響子さん。作品のなかでは水着姿を何度も披露していますし、そのスタイルについていぶきも感心していました。
●面倒見が良い
響子さんは当初、苦学生を経て就職浪人となった五代にお弁当を作ったり洗濯をしてあげたり、正月にはおせちをふるまったりしました。また五代に来客があれば、お菓子やジュースを差し入れたりもします。
●一途であり、貞操観念が鉄壁
五代に対し好意をもっていることは自明な響子さんですが、前夫に操をたてていることは前述のとおり。これは新しく誰かを好きになったら前夫への思いがウソになるのでは、という一途な思いからのようです。
このような意識が強いため、三鷹との天秤疑惑はあるものの、結局は五代と結ばれるまで、男性との深い接触はかったようです。
●所作のかわいらしさがたまらない
こずえのトリックでキスされてしまった五代。その現場を目撃してしまった響子さんは当然、不機嫌になりますが、五代は不意打ちだったと釈明。溜飲を下げた響子さんは別のトリックで五代にキスをしました。この一連のやりとり、そして響子さんが身長を合わせるために石段をひとつ昇ってキスする所作は、かわいすぎます。
■響子さんが全ての「面倒臭さ」を吹き飛ばした瞬間
やはり問題点は響子さんの「嫉妬深さ」や「面倒さ」になりますが、そもそも五代の「優しさ」の裏にあるデリカシーのなさであったり、こずえやいぶきをきっぱり拒絶しない優柔不断な言動だったりが起点になっているため、彼にも否があると言わざるを得ません。
さて、それでも「面倒な女」に分があるようにみえる響子さんですが、こんなシーンがあります。
響子と五代が初めて結ばれた後のことです。
響子「あたしね、ずっと言えなかったことがあるんです」
五代「なんですか?」
響子「ずっと前から五代さんのこと好きだったの」
と微笑みキス。さらに……
五代「ずっと前って、いつから?」
響子「忘れちゃった!」
この会話は、隅から隅まで無敵に尊く、「忘れちゃった!」の「!」に響子さんのテンションがうかがえ、神がかったかわいさがあります。
こんなタイミングでこんなかわいいことを言われ、「デレ」を見せられたら、どんなに嫉妬深くても、面倒くさくても、独占欲が強くても全力で手の平を返し、全部めくれて筆者……いや大概の男性は釣られ、音無響子さんは肯定されるのです(たぶん)。
(南城与右衛門)
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