ガリガリで怯える保護犬は「かわいそう」? 今をキラキラ生きる姿にホロリ『たまさんちのホゴイヌ』
マグミクス / 2022年12月28日 16時25分
![ガリガリで怯える保護犬は「かわいそう」? 今をキラキラ生きる姿にホロリ『たまさんちのホゴイヌ』](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/magmix/magmix_128475_0-small.jpg)
■「かわいそうな犬なんかにしてたまるか!」保護犬と全力で向き合う日々
「保護犬」「保健所」と聞いて、皆さんはどんなイメージを持つでしょうか?「かわいそう」「怖い」といった暗いイメージを持つ人が多いかもしれません。でも、知ってみると実は楽しいこともたくさんあるのです。tamtamさんが保健所から引き取った犬・ボスはガリガリにやせ細っていて痛々しい姿でした。しかしご飯を出すと目をキラキラと輝かせて……。
10年以上前から犬や猫の保護活動に関わっているtamtamさんは、自身の体験をつづったマンガをInstagramに投稿して話題となり、2022年10月に発売された書籍『たまさんちのホゴイヌ』は発売後1週間で即重版となりました。本書には「保護犬についてまずは知ってほしい」というtamtamさんの思いが詰まっています。
tamtamさんが保護活動を始めるきっかけとなったのは、出会って2週間でこの世を去った1匹の子猫でした。「生まれ変わって私の元にまた来てほしい」と願ったtamtamさんは、今、目の前にいる犬や猫を「あの時のあの子」だと思って向き合いたいと思ったそうです。そして保護施設やブリーダー犬舎での勤務を経て、現在は保健所から犬や猫を預かり里親を探す「一時預かりボランティア」の活動を個人で行っています。
書籍『たまさんちのホゴイヌ』では、tamtamさんが保護活動をするなかで出会った7匹の犬たちとの日々が描かれています。今を懸命に生きる犬たちと、彼らに心を尽くすtamtamさんの愛情あふれるエピソードに心が温まる1冊です。作者のtamtamさんに、書籍についてお話を聞きました。
ーーtamtamさんが保護活動を始めるきっかけとなった、「目の前の命と向き合いたかった」という思いについて、改めて教えていただけますか?
tamtamさん(以下、敬称略) 本にも書かせていただきましたが、犬や猫は亡くなったあと、「虹の橋」という場所で穏やかに過ごし、飼い主が亡くなるまで待ち続けるというお話があります。私は我が家で看取る子には「虹の橋には行かないで。どんな姿でもいいから、また生まれ変わって私の元にまた現れてほしい」と告げます。そして数年後に、例えば目の前にボロボロの犬が現れたとして……私はきっと、その子のことを他人のように感じることができないのです。
今、目の前にいる子は、過去に私の元を旅立ったあの子かもしれない。高齢犬だろうと、ケガをしている猫であろうと、「もしかしたら、この子はあの時助けることができなかったあの子じゃないだろうか」と思ってしまうんです。だからこそ、今、自分の目の前にいる犬や猫に対して全力で向き合えるんだと思います。
ーーご自身の保護活動をマンガに描いてInstagramに投稿しようと思ったのはどのような思いからでしょうか?
tamtam 投稿のきっかけは実姉でした。その時に交通事故に遭った野良猫を保護していて、事故の後遺症で少し障害が残ってしまっていたんです。その障害を克服できる何かがSNSで見つかるかもしれないね……なんて思いで、最初は姉が絵を描き、私が文章を考えていました。
結局、障害のままでも問題なく暮らせるようになったのですが、その時点で結構たくさんのフォロワーさんがいて下さったので、それなら今までの自分の経験や思いを描いてみようと思いました。姉はその後出産などで忙しくなってしまったので、今は私が絵も文もかいています。
ーー著書『たまさんちのホゴイヌ』では、保護犬のリアルな表情やしぐさ、tamtamさんが心から犬をかわいがる様子が、時にコミカルに、時にシリアスに描かれています。マンガを描くにあたって心がけたことはありますか?
tamtam 我が家には小学校3年生と年長になる子供がいます。その子たちにも分かるように、絵を描きながら「この犬はどう思ってると思う?」なんて、意見を求めたりします。読者の方のなかには犬を飼ったことのない方や、お子さんも多いようです。私が実際に見たものや感じたことが、誰が見ても少しでも伝わるように……と思いながら描いています。
好評発売中の『たまさんちのホゴイヌ』(世界文化社)
ーー『たまさんちのホゴイヌ』に収録されたエピソードで、特に読者に注目してほしいものはありますか?
tamtam どれも欠かすことのできないものなのですが、特にと言われたら「チロ」という名前の犬が出てくる『高齢者はペットを飼えない!?』というお話です。日本で深刻な高齢化社会。ペットを手放す方の約7割の方が高齢者と言われています。飼い主の高齢化にともなうペットの問題も深刻です。
このお話は一見、高齢者だけに視点を当てているようですが、これは犬を飼う全ての方へのメッセージでもあります。近年、犬猫の健康寿命はどんどん伸びてきています。それにともない、予想もしていなかったようなさまざまな問題が起こります。手放す方のほとんどが「こうなると思っていなかった」とおっしゃいます……。
こういったケースも決して他人事ではなく、自分ももしかしたら手放す家族の立場になり得るかもしれない……もし、そうなってしまいそうな時、自分だったらどうするか……そんなことを考えるきっかけとなるエピソードです。
ーー「一時預かりボランティア」の活動を続けるなかで感じていることを教えて下さい。
tamtam 私が預かっている子たちは割と特殊な子が多くて……例えば人が怖くて、目が合うだけで失禁してしまうような野犬であったり、威嚇して襲いかかってくるような猫だったり……。なので、私の生活は一見大変だと思われがちですが、こういう子たちの成長って、ものすごく楽しいし、私も一緒に成長していると感じるんです。
保護当初はご飯もお水も飲まなかった子が、手からおやつを食べてくれたり、尻尾を振って出迎えてくれたり……。普通に犬を飼っている人からすると、当然の光景かもしれませんが、私にとってはこれ以上ない幸せを感じる瞬間です。
そして何より、我が家を巣立っていった犬猫の近況報告を里親さんからいただくときは、ものすごくうれしく、そして幸せを感じます。一度は不要とされたひとつの命、それがかけがえのない大切な家族の一員となっている。これってきっと何ものにも代えがたいものです。
ーー『たまさんちのホゴイヌ』の読者の方へ、メッセージをお願いします。
tamtam 手に取り、読んで下さった皆様へは本当に感謝の気持ちでいっぱいです。私は保護施設やブリーダーでの勤務、そして一時預かりボランティアを通して、さまざまな犬猫たち、そして、そこに携わるさまざまな人たちの姿を見てきました。「大切にしたい」と願う人もいれば、もちろんそうでない方もいらっしゃいます。
この本では動物保護の現状や、日本が抱える問題などをいろんな視点から描かせていただきましたが、この本の情報が決して全てではありません。「犬のために何かしてあげたい」、もし、少しでもそう思っていただけたなら、実際にもう少し調べてみたり、愛護センターや保護施設へ見学へ行ってみて、実際に保護されている犬や猫に会ってほしいと思います。
「かわいそう」「悲しい」というイメージの強い愛護業界ですが、実際の犬猫はそんな作り出された世界では生きていません。どの子も「今」という瞬間を精いっぱい生きています。そしてその世界にはマイナスを打ち消すほどの楽しいことや面白いこと、そして幸せや温もりがあります。この本が、誰かの一歩踏み出すための、きっかけになることを祈っています。
(マグミクス編集部)
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