大ヒット作品に必ずある？ 最強の「幹部勢ぞろい」シーン 人気爆発のきっかけにも

■『鬼滅の刃』をブレイクさせた「柱」の集結

『鬼滅の刃』『BLEACH』『聖闘士星矢』『ONE PIECE』など、「週刊少年ジャンプ」の大ヒットマンガには、共通点があります。そのひとつが、並み居る強豪たちが一堂に会すす「幹部勢ぞろい」シーンです。これによって、人気が出始めたマンガがさらに大化けし、ジャンプを担う大ヒット作になってきました。

　例えば、『鬼滅の刃』の柱の集結です。第6巻に納められた第44話「隊律違反」の最後の見開きのコマで、鬼殺隊に捕らえられた竈門炭治郎は柱合会議に引き出され、異形の剣士たちに見下された状態でこう言われます。

「柱の前だぞ」

　続く第45話「鬼殺隊柱合裁判」の見開きで説明されます。

「柱とは鬼殺隊の中でもっとも位の高い九名の剣士である。（中略）
　鬼殺隊を支えているのは柱たちだった」

　ここで炎柱の煉獄杏寿郎をはじめとした個性あふれる柱たちが登場します。ここから、『鬼滅の刃』の快進撃が始まったと言ってもよいでしょう。実際、アニメ版でも、柱の集結で盛り上がり、直後に始まる「無限列車編」が劇場版『鬼滅の刃 無限列車編』として上映され、空前の興行収入を叩き出すことになります。

　この法則は、他のジャンプマンガにも当てはまります。『BLEACH』では護廷十三隊の隊長たちが登場したことでブレイクしました。『ONE PIECE』でも、世界を左右するほどの大海賊たち、王下七武海の存在がルフィを刺激します。『聖闘士星矢』の黄金聖闘士も、青銅聖闘士だった星矢に未来という道筋を示します。

　もちろんこの法則は、「週刊少年ジャンプ」以外のマンガでも見ることができます。中国歴史をもとにした『キングダム』では、第10巻で最強幹部が勢ぞろいします。秦王のエイ政と主人公・信の前に立ちはだかる丞相呂不韋とその腹心、四柱らが参内するシーンは圧巻です。さらに、この参内中に、武将の蒙武が「六大将軍」の復活を上奏することで、「最強の大将軍になる」と言っていた少年・信の夢に明確な形が与えられたのです。

■「幹部勢ぞろい」がなぜヒットにつながるのか？

炎柱・煉獄杏寿郎が描かれる、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』ティザービジュアル　(C)吾峠呼世晴／集英社・アニプレックス・ufotable

「幹部勢ぞろい」がなぜヒットにつながるのか？　まず「主人公の世界を広げる」という点が考えられます。『鬼滅の刃』主人公の炭治郎の場合、妹を救うために、鬼殺隊に入りましたが、まだ最下層の剣士にすぎず、鬼殺隊という組織については何も知りません。ここで幹部勢ぞろいが起こり、柱合会議の場に引き出されたことで、炭治郎は、一段階上の物語に参加できるようになるのです。

　そして、新しい視点を持った主人公は、最強幹部との出会いで次の目的に導かれます。「無限列車編」のもうひとりの主人公である炎柱・煉獄杏寿郎は炭治郎を次なる任務に導き、一緒に過ごした時間は短いにも関わらず、柱の強さ、強い意志を見せつけ、少年の目標になります。

　さらに、複数の幹部が登場したことで、物語の流れも形作られます。柱とのエピソードが描かれることで、物語は一気に拡大していくのです。

　さらに『鬼滅の刃』の場合、この直後に鬼無辻無惨による下弦の月の大粛清が行われ、鬼殺隊と鬼の違いが強調されます。作者の並々ならぬ構成力や演出が結集された部分といえるでしょう。

※煉獄の「煉」は「火＋東」が正しい表記

（マグミクス編集部）