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なぜ「リメイクアニメ」が増えている? 「知名度があるから有利」だけでなない、構造的理由とは

マグミクス / 2022年12月24日 18時10分

なぜ「リメイクアニメ」が増えている? 「知名度があるから有利」だけでなない、構造的理由とは

■『スラムダンク』に『ダイの大冒険』90年代マンガのヒットが続く

 1990年代に一世風靡したマンガ『SLAM DUNK』の映画『THE FIRST SLAM DUNK』が大ヒットしています。

 実に26年ぶりに映像化され、かつてファンだった人が大勢映画館に詰めかけています。原作の色褪せない魅力といまだにこれだけ多くの人を魅了していることに驚かされた人もいるのではないでしょうか。

 近年、かつての人気タイトルをリメイクする動きが盛んです。現在、TVでは『うる星やつら』が放送中ですし、少し前には『SLAM DUNK』と同じく90年代に人気だった『DRAGON QUEST -ダイの大冒険-』も放送され、人気を博しました。来年には、『るろうに剣心』や『TRIGUN』などの再アニメ化も控えています。

 なぜ、このような旧タイトルを再びアニメ化する動きが増えているのでしょうか。そこには、日本社会の人口動態の変化とマーケティング的な事情が関わってると考えられます。

 リメイク企画の増加が何をもたらすのでしょうか、要因と波及効果を考えてみたいと思います。

●リメイク企画は固定ファンをベースに新規ファンを上乗せできる企画

 現在の日本のアニメ産業は、TVアニメが1シーズンに60本近く放送され、それに加えて劇場アニメや配信オンリーの作品があるという状況です。ものすごい過当競争にさらされていると言っていいでしょう。

 そのような状況で、新規のタイトルが注目を集めるのは非常に大変ですから、アニメ化前から知名度の高いタイトルが当然有利で、人気マンガを原作にした作品などが注目を集めやすくなっています。認知度の高いタイトルという点で、かつての名作もまた競争に有利な立場にあると言えますから、重宝されるのでしょう。

 また、『SLAM DUNK』は26年ぶりの映像化でしたから、20代や10代の人にとっては新規のタイトルも同然です。それでいて、40代の人にとっては青春時代に読んだ思い出の作品で懐かしさを覚えます。40代には懐かしく、20代・10代には新鮮な作品として売り出せるので、固定のファンをベースに新規ファンを獲得できるのがリメイク企画の、マーケティング的視点での優れたポイントです。

 例えば、『ダイの大冒険』は少年時代にマンガを読んだお父さんとその子供が、親子二世代で楽しんだという感想をSNSでも見かけます。日曜の朝の放送枠だったのもあって、子供と大人両方に訴求することに成功した例と言えるでしょう。

■リメイクアニメ増加は若年層減少も要因?

『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』初期キービジュアル (C)三条陸、稲田浩司/集英社・ダイの大冒険製作委員会・テレビ東京 (C)SQUARE ENIX CO., LTD.

 リメイク企画の増加は、日本社会の変化の反映でもあります。

 日本は少子高齢化の進行が先進各国のなかでも早く、若い世代の減少が深刻な課題となっています。年代別の人口構成がいわゆる「逆ピラミッド」になりつつあるなか、娯楽産業も高い年齢層に支持される作品でないとヒットを生み出しにくい社会構造になりつつあるのです。

 ブシロードの木谷高明社長もこの点を指摘し、今ヒットを生み出すには40代くらいの層を取り込むことが大切だと語っています。

「20代は層が薄いのです。20代と40代の人口を比べると40代が1.4倍です。しかも40代の約4分の1は独身で、20代の2倍以上の金額をエンタメに使っていると言われます。トータルで考えると、20代と40代のマーケットサイズは1対4ということになる」(※1)

 若い世代の人口減少という事態はアニメ産業だけでは解決できない問題であり、現状に対して対応していくしかありません。今のアニメ産業の売上はこうした年齢層に支えられている部分が大きく、お金を出せる人に届くコンテンツを作るという方向になるのは、ある程度必然とも言えます。

 また、企画を立てる側の人たちの変化もあるでしょう。40代くらいになると、社内で意思決定したり企画を動かしたりできるポジションになる人もいるでしょう。今の40代から30代後半の人たちは、90年代の深夜アニメブームを青春時代に体験していますから、当時ハマったアニメやマンガを自分で再び作りたいと考える人がいてもおかしくないでしょう。

●リメイクが増えるのは良いこと、悪いこと?

 リメイク企画は、ファンの複雑な反応を生み出します。自分の知る懐かしいコンテンツを、今のアニメのクオリティで映像化されるのは嬉しいと感じることもあれば、リメイクされた作品がイメージと異なっていたら嫌だなと思うこともあります。

『THE FIRST SLAM DUNK』の公開前に生じた「声優交代問題」が象徴的です。90年代のTVアニメ時代とは異なるキャスティングとなることが発表された時、大きな批判が起きましたが、いざ公開が始まると新しいキャストたちの芝居も素晴らしく、以前のTVアニメ版とは異なるアプローチで制作された作品には、別の声優が必要だったと納得できるものでした。

 また、昔のTVアニメは原作マンガと異なる展開をする作品や、物語の途中でうちきりになってしまう作品もあり、そこを原作通りのエピソードで完結まで観たいと思っているファンもまた多いでしょう。『ダイの大冒険』はまさにファンのそういう気持ちに応える作品だったと言えるでしょう。

 また、アニメの映像作りは技術のデジタル技術の進化やスタッフの努力によって、かつてよりもリッチでゴ―ジャスな映像が多く生まれています。そんな現代のアニメのクオリティで昔の名作を見てみたいと思う人も多いはず。『THE FISRT SLAM DUNK』は最新の3DCG技術でなければ描写が難しかったであろうリアルなプレイシーンを描いています。かつてのTVアニメ版とは異なるアプローチで蘇った典型的な作品と言えます。リメイクではありませんが、10年ぶりにアニメ化された『BLEACH』も映像のゴ―ジャス感がアップしています。

 このような現象は、アニメ業界においてはここ数年増えてきましたが、映画などではリメイクは昔から作られています。もっと言えば、演劇の世界ではシェイクスピアなどの名作は世界中で絶え間なく上演されていますし、いつの時代でも新たな解釈が生まれ続けています。ある意味、アニメも歴史を積み重なってきて、古いタイトルを新しい解釈でよみがえらせることの意義に目覚めつつあるということかもしれません。

 リメイク作品が増加しているからといって、新規タイトルが無くなってしまったわけでもありません。むしろ、今は新旧のタイトルがバランス良く制作されている時代と言えるかもしれません。

「温故知新(昔の事をたずねて新しい見解や知識を得ること)」という言葉もありますから、新しいものばかりが優れているわけではありません。リメイクによって昔の名作が見直され、新しいファンがそれに触れることで、さらに新しいものが生まれていくきっかけにもなっていくことでしょう。

※1;80年代懐メロで20代も40代も取る ブシロード新作は「DJ」で勝負:日経クロストレンド

(杉本穂高)

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