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熱量がすさまじかった『母をたずねて三千里』 スタッフにとんでもない3人がいた

マグミクス / 2022年12月26日 7時10分

熱量がすさまじかった『母をたずねて三千里』 スタッフにとんでもない3人がいた

■宮崎駿・高畑勲・富野喜幸(現:富野由悠季)が顔をそろえた

 1976年12月26日は、TVアニメ『母をたずねて三千里』の最終回「かあさんとジェノバへ」が放送された日です。イタリアのジェノバからアルゼンチンへと出稼ぎに向かい、病気になったという手紙を最後に音信不通となった母親を探すため旅に出たマルコが、苦難の果てに母親と再会し祖国へと戻るストーリーは、多くの人に感動を与えました。

 数々の傑作名作で知られる「世界名作劇場」(当時は「カルピスこども劇場」)の第2作として製作された『母をたずねて三千里』ですが、いま改めてスタッフを見ると、驚くべき名前が次々と登場します。

 監督・演出は『アルプスの少女ハイジ』で大きな注目を浴び、後に『火垂るの墓』を手掛けた高畑勲氏。場面設定とレイアウトはスタジオジブリの中核として『天空の城ラピュタ』や『となりのトトロ』などを手掛け、いまもアニメの歴史をけん引し続けている宮崎駿氏。そしてアニメの設計図である絵コンテを『機動戦士ガンダム』で知られる富野喜幸(現:富野由悠季)氏が最終回も含めて約20話分も担当するなど、現代に至るまで大きな影響力を持つ人物が顔をそろえていました。

 さて、最終回のストーリーでは、マルコの苦難の旅が報われた姿が描かれます。前話「とうとうかあさんに」でついに母親のアンナと再会したマルコでしたが、アンナは病気のために危篤状態に陥っていました。しかしマルコの存在に励まされたアンナは周囲の助けもあり無事に回復します。いよいよふたりで故郷・ジェノバへと帰る日がやってきたのです。

 お世話になった人たちに別れを告げ、マルコとアンナは汽車に乗ってロサリオへと向かいます。道中、コルドバのサン・イシドロ地区で仲良くなったパブロとフアナにひと目会いたいマルコが事前に連絡を入れておいたところ、ふたりは線路わきでマルコが来るのを待っていてくれたのです。汽車が通過するほんのわずかな時間に互いの名を呼び、手を振り、別れを惜しむ姿は、3人の間に本物の友情が宿っていたことを示す名シーンと言えるでしょう。

■長い旅路の終わり

『世界名作劇場・完結版 母をたずねて三千里』DVD(バンダイビジュアル)

 その後もマルコは、お世話になった人たちへの挨拶を続けます。ロサリオではコルドバまでの汽車賃を酒場で用立ててくれたフェデリコ爺さんに。船でブエノス・アイレスへと向かう道中では、すれ違ったアンドレアドーリア号の船長たちに。ブエノス・アイレスではマルコの旅を何度も助けてくれた人形劇のペッピーノ一座に。

 ペッピーノの娘であるフィオリーナと、将来は医者になって帰ってくると再会の約束をしたマルコは、アンナと共にいよいよジェノバへと向かう船に乗り込みます。マルコが何度も死ぬような思いで歩んできた旅路も、ついに終わりが来たのです。

 航海の末にジェノバへとたどり着いたマルコとアンナを、父・ピエトロとマルコの兄、トニオが出迎えます。ついに家族がひとつとなり、物語はエンディングを迎えたのでした。

 なお、若干9歳のマルコがひとりで旅に出た背景としては、ピエトロは貧しい人びとを無料で診察できる診療所を抱えていたために動けず、トニオは鉄道学校に通っていたという事情がありました。ネットもSNSもない時代、たったひとりで遥か海の彼方のアルゼンチンを目指すマルコの覚悟がどれほどのものだったのか、いまの時代の私たちではおそらく察することもできないのでしょう。

 ところで、なぜマルコの母親はアルゼンチンに出稼ぎに行ったのでしょうか。実は今でこそ経済的には目立った国ではないアルゼンチンですが、『母をたずねて三千里』は西暦1882年を舞台にした物語であり、この時代のアルゼンチンは世界トップクラスに豊かな国だったのです。

 特に1860年代から1930年代までは農産物の輸出により莫大な利益を挙げており、先進国のひとつとして大きな存在感を持っていました。汽車のような当時最先端の交通インフラが存在していたのも、経済の強さを物語っています。現代のように資料が簡単に手に入らない時代、アルゼンチンの描写をどのように作り上げていったのか。当時のクリエイターたちが注ぎ込んだ努力と熱量がどれだけ膨大な量だったのかをうかがい知ることができる気がします。

(早川清一朗)

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