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『ガンダム』セイラさんの名前の由来は? 富野作品の「独自ネーミングの真相」

マグミクス / 2022年12月28日 6時10分

『ガンダム』セイラさんの名前の由来は? 富野作品の「独自ネーミングの真相」

■「わけあり」なネーミングも…

 TVアニメーションに登場する人名等のさまざまな名称。多くの場合、これらの名称は原作があるもの以外は制作会社側で決めますが、実際には誰がどのように決めているのでしょうか。

 当然ながら決定に関する「厳格な決まり」があるわけではなく、もちろんケースバイケースです。

 では1979年の初代『機動戦士ガンダム』の場合はどうでしょう。

 ちまたでは色々な説があるようですが、いずれにしても「ガンダム」という名は決してひとりの意志で決まったなどということはありません。

 サンライズ内での企画段階でも名前にはいくつかの案があり、その代表的なものが、ファンの間では知られている「ガンボーイ」もしくは「ガンボイ」で、この段階での企画書の表紙等々が情報誌などに紹介されています。

 その後、ちょうど当時はやっていたTVコマーシャルなどをヒントに、より「強そう」な印象の響きの「ガンダム」に決定します。それもまた、当時のサンライズ企画室と、シリーズ構成と呼ばれる作品全体の物語をリードしてゆく脚本家、監督、代理店、そしてスポンサーなどとのディスカッションを経てのことなのです。特に主役ロボットの名前は玩具等の商品化が前提なので、商標登録に関する精査も必要です。

 一方、作品内に登場する人名や舞台などは、シリーズ構成者や監督が企画段階で決めることが多く、特にゲスト的に登場するものは、その登場話数担当の脚本家や演出家などが決めるなど、自由度は上がります。

 たとえば『ガンダム』のヒロインのひとりである「セイラ」の場合、本名である「アルテイシア」は、アメリカのロサンゼルスにある「アルテイジア(ARTESIA)」という道路の名前からのリスペクトです。

 ロサンゼルスに行ったことのある方ならご存じかもしれませんが、この「アルテイジア(アーテシアという表示の地図もあります)」は、ロサンゼルス空港(LAX)から南に降りて、あの「夢の国」に行くときに使われることの多い道です。

 そして、この「夢の国」がある場所が、ガンダム世界で重要な役割を果たす「アナハイムエレクトロニクス」という会社名に使われている「アナハイム(ANAHEIM)」です。実在のアナハイムは、ロサンゼルスの南西近郊にあるごく普通の町ですが、『ガンダム』世界から受ける印象では、なんとなく「シリコンバレー」などと同様の先端技術の街というイメージだったかもしれません。命名したのは、ガンダムを担当する少し前に渡米経験のある富野監督です。

 また連邦軍の宇宙戦艦名「マゼラン」「サラミス」も実際する海峡や島などの海にちなんだ地名が使われていますし、「カイ・シデン」は、ご存じの通り第二次大戦時の日本軍戦闘機の名前である「紫電改(しでんかい)」を前後入れ替えたものです(名付け親は未確認です)。

 富野監督といえば、『ガンダム』の前に監督を務めた『無敵鋼人ダイターン3』の主人公、「破嵐万丈」が豪邸を構えるのが「シンザ・シティ」ですが、これは、富野監督が当時住んでいた埼玉県の「新座(にいざ)市」を読み替えたものです。

 こうした、ちょっと「わけあり」の名前の存在がTVアニメーションシリーズの裏にはけっこう隠れているところも、マニアの人たちにとっては魅力なのかも知れません。

「名前エピソード」のおまけをひとつ。完全リメイクで映画化され話題となった『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』の元作であるTVシリーズの第15話に、作画監督として掲載されている「鈴村一行」は偽名です。

 もともと、この話数の作画は、ある理由から海外の作画会社に下請けで発注したものなので、原画チェックがほぼ出来なかったといういわく付きです。もちろん「鈴村一行」という名前のスタッフもいません。

 そして、実は「すずむら」というのは、当時サンライズがあった上井草(東京都杉並区)駅前の居酒屋の名前で、サンライズのスタッフご愛用の店だったのです。しかし、スケジュールが悪ければ飲みに行くような時間もとれないわけで、この偽名は「すずむら(に)行こう!」という、スタッフ達の切なる願望?の現れ……で間違いないのです。

【著者プロフィール】
風間洋(河原よしえ)
1975年よりアニメ制作会社サンライズ(現・バンダイナムコフィルムワークス)の『勇者ライディーン』(東北新社)制作スタジオに学生バイトで所属。卒業後、正規スタッフとして『無敵超人ザンボット3』等の設定助手、『最強ロボ ダイオージャ』『戦闘メカ ザブングル』『聖戦士ダンバイン』『巨神ゴーグ』等の文芸設定制作、『重戦機エルガイム』では「河原よしえ」名で脚本参加。『機甲記ドラグナー』『魔神英雄伝ワタル』『鎧伝 サムライトルーパー』等々の企画開発等に携わる。1989年より著述家として独立。同社作品のノベライズ、オリジナル小説、脚本、ムック関係やコラム等も手掛けている。

(風間洋(河原よしえ))

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