「スライムは最弱」←本来は強キャラだった? 有名モンスターたちの「実は知らない」素顔
マグミクス / 2022年12月27日 20時10分
■有名モンスターたちの原点、ご存じですか?
スライム、ゴブリン、ゴーレム……今日のゲームやアニメなどでおなじみのモンスターのなかには、海外の創作や伝承に端を発するものが多く存在します。それらは日本の創作に登場するにあたって、どのように”翻訳”されたのか? 語り継がれていた本来の姿や特徴がどのようなものであったのかと併せて紹介します。
●“国内初最弱”は『ドラクエ』じゃない!?「スライム」
『ドラゴンクエスト』の愛らしいフォルムでおなじみのスライム。架空の生物として初めて登場したのはアメリカで1953年に発表された「Slime」という小説であるそうです。その後、スライムは同国で1974年に発売されたテーブルトークRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ』にも登場しますが、実は当時のスライムはとても危険な存在でした。
暗い洞くつの天井に張り付いていて、冒険者がその下を通りかかると音もなく顔に覆いかぶさり窒息させてくる、ゼリー状なので物理攻撃がロクに効かない、火には弱いが顔にまとわりついたスライムを焼こうとすると顔ごと焼けてしまう、武器や防具を腐食させてしまう……という感じです。怖……。
しかし、1981年にリリースされた3DダンジョンRPG『ウィザードリィ』を機に、ゲームでは「つつけば倒せそうな」ほど弱いスライムが登場するようになりました。そんなイメージを日本で最初に広めたのは1986年の『ドラクエ』第1作目……と思っている方も多いかもしれませんが、実はその2年前に全国のゲームセンターで稼動したアーケードゲーム『ドルアーガの塔』に登場するスライムも同様のザコモンスターでした。国産ゲーム初の「弱いスライム」は、『ドルアーガの塔』が最初であるといえそうです。
●こう見えても実は”妖精”である「ゴブリン」
スライムと並ぶ「ザコモンスター」として広く認識されているゴブリン。2022年12月5日にオックスフォード英語辞典を出版している英オックスフォード大学出版局が今年の言葉として「ゴブリンモード(Goblin mode)」を選出し、その意味を「悪びれもせず自堕落で、だらしなく、強欲な行動」と定義したように、基本的には人に害をなす存在です。
そんなゴブリンの原典は、ヨーロッパの民間伝承に登場する妖精です。妖精と聞くと『ピーター・パン』におけるティンカー・ベルのような「かわいらしく、人に好意的な存在」をイメージしてしまいがちですが、妖精には、まったくかわいくなく、かつ敵対的なものも含まれます。海外における妖精は、日本でいうなら妖怪に近いのかもしれません。また、伝承や作品によっては「いたずら好きながらも人を助けてくれる、手を貸してくれる」ようなゴブリンもいるそうですよ。
■「トロル」はインターネットに実在する!
こんぼうが最高に似合う『ドラゴンクエストX オンライン』のトロル (C)2012-2022 ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SQUARE ENIX All Rights Reserved.
『ドラクエ』に登場する同名モンスターのイメージがあまりに強烈なトロル。これも元をたどるとノルウェーの伝承に登場する「妖精」なのだそうです。『ドラクエ』での姿を知っていると「えぇ…これが妖精かぁ…」と思ってしまいますよね。こんなにもこんぼうが似合う妖精はなかなかいません。
そんなトロルの名は国民的アニメ映画『となりのトトロ』にも登場します。作中には、妹のメイからトトロという不思議な生き物に会ったと聞かされた姉のサツキが「それって、おばけのトロルのこと?」と聞き返すシーンがありました。
同作のエンディングでは姉妹が母親から絵本『三びきのやぎのがらがらどん』を読み聞かせてもらうシーンもありますが、この絵本はノルウェーの民話を翻訳したもので、三匹のヤギが大きなトロルと出会うお話になっています。サツキは、メイがそれを見たと言っているのではないかと考えたわけですね。
トロルはゴブリンと並んで人に好意的な存在であると書かれることはほとんどなく、先述の『ダンジョンズ&ドラゴンズ』の1年後にアメリカで発売されたテーブルトークRPG『トンネルズ&トロールズ』ではこの名がモンスターの総称、象徴のように使われました。また、英語圏では今日もインターネット上での「荒らし」を「trolls(internet trolls)」というそうです。
●敵にも味方にもしやすい「ゴーレム」
ゴーレムはユダヤの伝説に登場する泥人形の名称です。自我がなく、創造主の命令を遂行するためにのみ動きますので、そうした設定からゲームでは敵として登場したり、反対に頼もしい味方になってくれたりと扱いがさまざまです。
『ドラクエ』シリーズでは敵モンスターとして登場しつつ、仲間モンスターシステムがある『ドラクエV』や『ドラクエX』では、頼もしい味方としても活躍してくれます。『FF』シリーズでも『FFV』や『FFVI』で召喚魔法として登場し、物理攻撃を防いでくれる頼もしい存在でした。
伝承の話に戻りますが、ゴーレムの素材は泥以外にも粘土、石、鉄などさまざまな物が使用されます。そんななかで群を抜いて悪趣味なのが人や動物の死肉をツギハギして作るもので、こうした個体はフレッシュゴーレム(flesh=肉)と呼ばれたりします。ゴシック小説として日本でも有名な『フランケンシュタイン』もフレッシュゴーレムの一種であるといえるでしょう。
フレッシュゴーレムはゲームではあまり見られませんが、2001年にPlayStation 2でリリースされた3DダンジョンRPG『BUSIN』にボスとして登場した、イラストレーター・寺田克也さんのデザインによるエグい見た目のフレッシュゴーレムを筆者はいまだによく覚えています。
「ゲームをきっかけに、実在の神話や伝承に手を出していく」というのは”往年のゲーマーあるある”のひとつでした。今は概要程度ならWikipediaでサクサク調べられるので、いい時代になったなぁとしみじみしてしまいますね。
(蚩尤)
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