40年前の大みそかはアニメが大量放送！「紅白」の裏で子供を狙った「視聴率争い」も？

■大みそかはさまざまなアニメが特番で放送されていた

　年末年始のTV番組は、TV局の方が休みを取るため生放送は少なく、撮りためた特番や既存の映像を流すことが多いものです。当然、アニメもそのなかに含まれており、多くの番組が放送されていました。

　今から40年前となる1982年の大みそかに放送されていたアニメはどんな作品だったのでしょうか。新聞のTV欄から振り返ります。

※今回紹介する番組の放送チャンネルや放送時間はすべて関東圏に準拠したものとなります。ご了承ください。

　まずNHKでは、午後6時から『ニルスの不思議な旅』が再放送されていました。つい先日、25日に亡くなられたばかりの「スタジオぴえろ」のアニメプロデューサー・布川郁司氏が手掛けた名作アニメですが、実はこの日が最終回。ニルスとモルテンの別れが描かれます。そのすぐ後にはこの時代を生きた方にはお馴染みの『ポパイ』が放送されていました。サブタイトルは「壮烈大陸横断トラックレース」と記されています。

　NHK教育テレビと日本テレビではアニメの放送が確認できなかったため、次の紹介はTBSとなります。まず朝の6時22分から『まんが世界昔ばなし』の再放送が行われています。世界各地の民話や伝説、グリム童話やアンデルセン童話などを題材としたアニメーションです。TBSはこの1番組のみでした。

　アニメや子供向け番組の放送が非常に多くなるのはここからです。フジテレビでは朝の8時からいつも通り『ひらけ！ ポンキッキ』が放送されています。番組は終了してからずいぶん経ちますが、いまもガチャピンやムックを見かけることが多いのは嬉しい限りです。

　さらに10時からは1959年に上映された映画『少年猿飛佐助』。日本最初のカラー長編アニメ映画である『白蛇伝』の次に東映動画スタジオ（現：東映アニメーション）が手掛けた作品です。

　そして18時半から21時45分あたりまでは、当時大人気だった『Dr.スランプ アラレちゃん』のスペシャル番組が放送されています。こんな夜遅くまでアニメを見ることはあまりなかったので、きっとみんな大喜びで夜更かしをしていたのではないでしょうか。もっとも、21時からは紅白歌合戦が始まってしまうので、そこでチャンネルを変えられてしまった方も多いはずです。

■ガンダムブームのさなか、劇場版「哀戦士編」放送にクギづけ

1982年は、ガンプラがブームとなり、劇場版『機動戦士ガンダム』3部作が上映されたばかりの時期。その年の大みそかにTV放送された『機動戦士ガンダムII・哀戦士編』は大きな注目を集めた。画像は同作のDVD（バンダイビジュアル）

　40年前の大みそか、アニメに最も力を入れていたのはテレビ朝日です。おそらく最大の目玉は15時から放送された「機動戦士ガンダムII・哀戦士編」でしょう。さすがに細かい記憶は残っていませんが、おそらく筆者はこのとき、TVの前で今か今かと放送を心待ちにしていたはずです。映画館の封切り日が1981年の3月14日と、わずか1年と9か月前なので、このとき初めて「哀戦士編」を目にした方も多いのではないでしょうか。

　18時半からは藤子不二雄劇場「’82大みそかだよ！　ドラえもん・忍者ハットリくん」が放送されています。フジテレビのアラレちゃんと放送開始時間が同じなので、おそらくどちらかが狙ってぶつけているのでしょう。当時はビデオデッキもそれほど普及していないので、子供たちはどちらを見るか、かなり困ったのではないでしょうか。

　放送時間は21時20分あたりまでとなっていますが、21時からは紅白だけでなく、他局でもさまざまな番組が放送されています。おそらくはフジテレビともども、アニメを21時過ぎまで放送して他局の番組のスタートを見られないようにして、そのまま自局の番組に視聴者を引きつける意図があったように思えます。

　さて、いつでも平常運転が売りのテレビ東京ですが、この日もいつも通りにアニメを放送しているのが見て取れます。朝の7時半からは「おはようマンガ『三銃士』」を放送しています。この「三銃士」で放送されたのが何の番組なのかは正確にはわかりませんが、NHKで放送された名作『アニメ三銃士』は1987年作品のため、おそらくは1981年に日本アニメーションが制作した『ワンワン三銃士』ではないかと思われます。

　次に8時15分からは「マンガのひろば」と題した枠で『おんぶおばけ』『ドン・チャック物語』『凸凹劇場 アボット・コステロ』『若草のシャルロット』が放送されています。さらに番組紹介をはさみ、10時には『太陽の牙ダグラム』の名前が記されています。通常は17時55分からの放送ですが、大みそかということで時間移動が行われたようです。なお、この日の放送回は63話「落とされた黒い滴」となっています。

　1982年の大みそかに放送されたアニメはこれで全てとなりますが、アニメについては各テレビ局の方針により、扱いがまったく異なっていたようです。おそらく多くの子供たちは大みそかの夜、フジテレビかテレビ朝日のどちらかを見ていたのではないでしょうか。

（早川清一朗）