「またガンプラが買えない!」転売屋に打つ手はあるのか? ファンと企業の努力で「駆逐」した事例も
マグミクス / 2023年1月2日 17時10分
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■またガンプラが手に入らなくなってきた
また、ガンプラが手に入らなくなってきました。『機動戦士ガンダム 水星の魔女』がかなりの人気を博しており、プラモデルも次々と発売されていますが、筆者はまだ小売りの店頭で見たことはありません。見たことがあるのは定価よりも遥かに高い値段がつけられた中古店のみです。相変わらず転売屋が跳梁跋扈しているのでしょう。まったくもって腹が立つばかりです。
なぜ転売屋の所業に腹が立つのか。第一に、欲しいものが欲しい時に買えないという問題です。「あれが欲しい!」という気持ちが高まっているときに品物が見つからないと、どうしても気持ちがしぼんでしまいます。これが大人である筆者であればブームに左右されずガンプラを追い求めることができます。自分の意志とお金で、お台場のガンダムベースにもいくことができるでしょう。
しかし子供はそういうわけにはいきません。お金は親に出してもらう必要がありますし、遠出するのも難しいものです。そもそも子供たちはある程度流行りものを追っていかないと、友達との会話についていけないという問題があります。ものすごい勢いで大量のコンテンツが登場しては定期的に入れ替わり、ひんぱんに何らかのブームが起きる現代では、待つこと自体が難しくなっているのです。
子供の頃、欲しくてたまらないおもちゃを買ってもらって、とてもうれしかったことを覚えている方も多いことでしょう。転売屋による買い占めで品物が表に出ないか、不当に高価な値段がつけられている場合、その感動を味わえない可能性があります。子供の頃の感動は、歳月を経て忘れてしまっても、何かの機会があれば不意に思い出すものです。
今もガンプラの人気が高いのは、かつて子供の時にガンプラを手に入れたときの喜びを忘れていない大人が大勢いるためでしょう。大勢いるからこそさまざまな「ガンダム」作品が作られ、ガンプラをはじめとする大量の商品が送り出され、新たな世代に感動を与えるという連鎖が生まれるという市場の創成が行われています。転売はこの流れをせき止め、新たに「ガンダム」を愛する世代が生み出されるのを妨害しているのです。
■転売屋と商社は違う
エラン専用機「HG 1/144 ガンダムファラクト」(BANDAI SPIRITS)定価2090円(税込)のところ、やはり1000円程度高値で販売されている (C)創通・サンライズ・MBS
転売屋はしばしば「安く仕入れて高く売るのだから商社と同じだ」と発言します。とんでもない妄言です。転売屋と商社はまったく異なる存在なのですから。
まず転売屋は、あるタイミングで人気があり、人が欲しがるものを買い占めて、利益を狙います。人気さえあれば品物は何でもいいのです。つまり「人気のあるものが手に入りづらくなるように動く」存在です。
それに対し商社は品薄であれば仕入れて卸すので、「人気のあるものが手に入りやすくする」働きをしています。まったく逆です。
また商社はまだ世の中に知られていない商品をアピールし「新たな市場を作る」力を持っていますが、転売屋は新規の市場を作るどころか、既存の市場を枯らすだけの存在です。商社と同じどころか正反対の存在と断言できるでしょう。
しかしながら腹立たしいことに、現代社会において転売は違法ではありません。正当な商行為とはとても言えませんが、高価でも買ってしまう人間がいる以上、成立してしまうのです。市場が大きい場合の転売は、現状では防ぐ方法がありません。メーカーの努力に期待するほかはないでしょう。
ただし、市場規模が比較的小さい場合は、対処方法があります。一人ひとりが買わなければいいのです。実際に対策に成功した事例としては『TIGER & BUNNY』が挙げられるでしょう。
『TIGER & BUNNY』のファンは作中の登場キャラクターであるルナティックのセリフ「タナトスの声を聞け」を合言葉に、転売屋の品物には手を出さずに通報を繰り返し粘り強く戦いました。公式もファンの声に応えて商品の再販を行なうなど積極的な対応を行い、転売屋の駆逐に成功しました。
個人での品物の売り買いが非常に簡単な現代において、転売の駆逐は簡単な話ではありません。転売屋は人海戦術やアプリを使い、日ごろ学校に通ったり仕事をしたりしている人間が動けない内に買い占めを行ってしまうからです。
それでも、本来メーカーをはじめとするコンテンツを送り出す企業に入るはずのお金を転売屋にかすめ取られ続ければ、新たなコンテンツを作り出す際に使えるお金が目減りしてしまうのです。より良い物をこれからも楽しみたければ、転売屋に回る金を少しでも減らさなければなりません。企業と個人、双方の努力が今後も求められるでしょう。
(早川清一朗)
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