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声優ファンとVTuberファンはどう違う? 「中の人」が語る、「壊れていく」理由

マグミクス / 2023年1月3日 17時10分

声優ファンとVTuberファンはどう違う? 「中の人」が語る、「壊れていく」理由

■憧れを超える義務感が熱狂的な支持を生む

 物心ついた頃からインターネット文化に親しんできたデジタルネイティブ世代であれば、VTuberの魅力については、比較的すんなり理解できるようです。私のように「大事なお金をクリックひとつでポンポン投げ銭しなくても」なんて言ってしまうのは、良い言葉ではありませんが、いわゆる老害仕草というやつなのでしょう。

 いまひとつ理解できないことがあれば、当事者に直接教えてもらうのが一番です。

 表向きにはしていませんが、VTuberの「中の人」として長く活動している人気声優に、個人的に取材させてもらったことがあります。声優としての演技の評価が高いだけでなく、いわゆる「顔出し」でのファンもかなり持っている方です。

 まず尋ねたかったのが、声優ファンとVTuberファンの両者に、目立った違いはあるのかということです。あるとすれば、どの辺りに差があるのでしょうか。

「違いはあると思います」というのが答えでした。声優として活動する場合、ファンはアニメやゲームという一段高い舞台で活躍するタレントとして、憧れのまなざしで見てくれている。あるいは、舞台からファンの目線まで降りてきて気さくに振る舞うことを喜んでくれている、という感覚があるそうです。

 一方でVTuberの場合は、タレントとファンという関係性とは少し違う、友人や仲間同士で行うサークル活動に近い感覚のようです。舞台上にいる憧れの存在を仰ぎ見るのではなく、目線は最初から同じ高さ。それゆえに、活動を深めれば深めるほど、友人や仲間以上の家族に近い状態まで親近感が増していくこともあります。

 客観的な見え方はどうあれ、人気VTuberとファンとは、精神的には家族同様の関係性を築いています。だからこそ、ちゅうちょなく投げ銭をすることだってできるのです。「大切な家族のためにポンポンお金を払うなんて」と眉をひそめる人がいれば、確かにそれは、眉をひそめる方がおかしいでしょう。

 投げ銭というのは、購買でもなくお布施でもなく夜のお仕事のチップでもなく、「家族を支えなきゃ」という義務感あるいは使命感からの仕送りに近いのです。だからこそ、配信中は受け取ったことを軽く流してしまったとしても、感謝の気持ちだけは忘れてはいけない……当事者がそんなふうに語るのは、とても印象的でした。

■同じ高さの目線だからこその「壊れていく」怖さ

投げ銭をするのは「家族を支えなきゃ」という思いから(画像:写真AC)

 次に尋ねたかったのは、声優とは違って顔出しをしないはずのVTuberでも、メンタルヘルスの問題で休業したり廃業したりすることがあります。まったく事情を知らない部外者には、いささか不思議に思えますが、何か特有の原因があるのかということです。

 これに対する答えも、とても興味深いものでした。

 声優の場合は、たとえアイドルのように扱われる場合でも、できる限りの努力をして積み上げてきたスキルで勝負している感覚が常にある。だから、たとえ人気が出なかったりファンの方が離れていったりしても、自分の才能や努力が足りなかったからだと、負けを受け入れて気持ちに折り合いをつけることもできるといいます。

 一方でVTuberの場合は、はじめからステージ自体が存在せず、同じ目線の高さなので、スキルで勝負しているという感覚がどうしても持ちづらいそうです。本物の親近感や連帯感が生まれるので、それが強みになる反面、負けを受け入れて気持ちに折り合いをつけるのが難しくなります。

 自分では精いっぱい努力して、ありったけの愛情や共感を込めて配信したはずなのに、親近感や連帯感が視聴数のような全世界に公表される数字の形で下降線を辿り、あまつさえそっぽを向かれたりしたら、「自分と言う人間自体が愛される資格がないのかもしれない」という考えが頭をよぎってしまうのです。

 何とかして元のように振り向いてもらおうと頑張れば頑張るほど、本人も気付かないうちに「壊れていく」ことになりかねません。

 この感覚は、デジタルネイティブ世代でなくとも分かる気はします。友人や仲間や家族から満たしてもらっていた承認欲求が、ゲームの体力ゲージが減っていくような目に見える形で減らされていくとすれば、その苦しみと焦りはどれほどのものでしょうか。

 では、どうやってそれに対応していくのかという質問には、「どうするんでしょうねえ」と、笑って答えてくれませんでした。

 自分に興味がない人は、これから興味を持ってくれる人、自分のことが嫌いな人は、これから好きになってくれる人。普段からそんなふうに考えて成功をつかんできた方ですから、前向きに今を楽しむ気持ちさえあれば、たとえどうなっても大丈夫なんですよと、言いたかったのかもしれません。

 多くの人に愛される魅力は、そんな気持ちから生まれるのでしょう。

(おふとん犬)

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