情報求む！ 幻の『プリンプリン物語』第265回は見つかるか 発掘が進み「あと1話」

■放送当初の2年分が消去されていた

　1979年から1982年にかけてNHKで放送された人形劇『プリンプリン物語』は、15歳の少女、プリンプリンが自分の祖国と両親を探して仲間たちと世界中を旅する物語です。当時の女の子から絶大な人気を獲得しました。

　自宅に録画用のビデオデッキを備えている家はまだまだ少ない時代、放送時間になると女の子たちは家に帰り、TVの前に陣取っていたのでしょう。筆者も姉につきあって、1台しかないTVの前で一緒にプリンプリンの冒険を楽しんでいた記憶があります。

　オープニングテーマを歌う石川ひとみさんが声優を務めたプリンプリンをはじめ、魅力的なキャラクターが多数登場する『プリンプリン物語』ですが、特にカセイジンが仲間に危機を知らせるときの「ルールールールー、予感です！」というセリフや、独特な風貌を持つルチ将軍の「知能指数は1300！」というセリフは、今でも忘れられません。

　さて、そんな『プリンプリン物語』ですが、NHKの映像や音声を補完する「NHKアーカイブス」で、録画ビデオの募集が行われているのはご存じでしょうか。実は約3年間にわたって放送された『プリンプリン物語』のうち、最初の2年に放送された映像は、第1話を残してすべて消去されてしまっているのです。

　かつてNHKをはじめとする放送局では、2インチVTRと呼ばれる規格のビデオテープレコーダを使用していました。しかしテープが非常に高価だったため、映像を放送したら上書きして使用するのが当たり前だったのです。そのため、1950年代から70年代にかけて人気を博したさまざまな番組の多くが失われ、もう見ることができません。

　しかし1980年代に入り新たな規格である1インチVTRが登場し、こちらはテープが安価だったため映像の保存が可能となりました。NHKは1981年に1インチVTRを導入し映像の保存を開始したため、『プリンプリン物語』は1979年と1980年の放送分が欠落した状態となっているのです。

■徐々に集まる映像　個人提供されたものも

『プリンプリン物語』全656回のうち、512回から572回を収録した、「連続人形劇 プリンプリン物語 デルーデル編 DVD BOX」（NHK）

『プリンプリン物語』は非常に人気が高い作品であり、再放送を期待する声が常々あがっていました。2003年にはアンコール放送が行われましたが、映像が残っていない序盤から中盤はカットせざるを得なかったのです。

　そこで2009年からNHKアーカイブで、1979年4月9日放送分から1981年3月13日放送分までの437話分を発掘するプロジェクトが開始されました。家庭用VTRで保存している方への呼びかけが始まったのです。

　1980年前後の時期は、家庭用ビデオデッキはまだそれほど普及率は高くありません。保有していたとしてもテープが高価だったため重ね撮りをする方も多い時代、古い映像が発掘される可能性は低い状況でしたが、じわじわと発掘は進んでいきました。

　特に大きな力となったのが、『プリンプリン物語』の制作に携わった方々でした。人形作家の友永詔三氏からは91話以降の305回分が提供され、一挙に進展を見せました。人形操作を担当した伊東万里子氏は91話以前の25話分を提供し、プロデューサーを担当していたNHKのOBである中谷正尚氏の遺品から1話から120話までを録画したβ規格のテープも寄贈されています。

　ルチ将軍役を務めた声優の神谷明氏や花のアナウンサー役のつぼイノリオ氏からも個人的に録画保存していた映像が提供されるなど、徐々に状況は改善されていったのです。

　特に驚かされたのは、関係者以外からの提供があった事です。長野県にお住いのある方から「母が放送当時録画していた物を提供したい」と連絡があり、ほぼすべての回が発掘されたのです。こちらのお母上は『プリンプリン物語』をどうしても残したくて自分専用のビデオデッキを買って録画しており、1本3300円のテープをオープニングをカットするなど節約して使用していたそうです。結果、完全に見つかっていないのが第265回のみ、一部欠落した回が第66、314、317、408、411回の5回分となりました。

　ほぼすべての映像が発掘された『プリンプリン物語』ですが、残念ながらその後、新たな映像は見つかっていません。もしあなたの周りに「『プリンプリン物語』？　持ってるよ？」という方がいましたら、ぜひ「NHKアーカイブス」に連絡するよう伝えてみてください。もしかしたら、世紀の大発見があるかもしれません。

※本文の一部を修正しました。（2023.1.11　11：52）

（早川清一朗）