ゲームソフトは高い? 安い? 立場によって割れる意見
マグミクス / 2023年1月8日 13時25分
■小中学生にとっては高嶺の花だった「ゲームソフト」
「ファミリーコンピュータ」(以下、ファミコン)の登場から、もうじき40年が経とうとしています。この間、多くの世代に「ゲーム」という娯楽が浸透し、遊んだタイトルこそ違えども「ゲームは楽しい!」という共通認識が広がっていきました。
遊び始めれば楽しいのは間違いありませんが、プレイするための時間を空けたり、あらかじめ宿題を済ませたりと、いくつもの壁が立ちはだかります。そうした壁のなかでも特に大きいのが、ゲームソフトの価格でしょう。
額はゲームによってまちまちですが、得られる面白さとは別に、その価格自体を「高い」と感じている人もいれば、「安い」と受け止めている人もいます。それぞれに考え方や理由がありますが、自分と逆側の意見は見えにくいもの。「高い」と「安い」、それぞれにどんな意見や考え方があるのか、その代表的な例を紹介します。
●マンガや小説、映画などと比べると、単価が高く感じる
ゲームソフトが高いと感じる理由は、まず価格そのものにあります。インディーを含む小規模の開発であれば数千円、時には数百円で買えるゲームもありますが、注目を集めやすい大作などは6~8千円くらいが現在の標準的なラインです。ここに消費税も加わるため、高めのものだと1万円近くの出費を覚悟するケースもあります。
世の中にはさまざまな娯楽があり、作品単位で楽しめるものだと、マンガや小説、アニメにドラマ、映画など、枚挙に暇がないほどです。こうしたコンテンツ同士で比べると、1作品で1万円近いこともあるゲームソフトは、高めという印象を受けます。
完結まで長い作品もあり、例えば全10巻~20巻ほどのマンガや小説だと、ゲームソフトと同程度と言えるかもしれません。しかしゲーム側も、前後編であったり直接繋がる複数本のシリーズなどもあるため、「比較しても高め」というイメージは拭いにくいところ。
また金額に対する印象は、状況や立場によっても変化します。毎月数千円のお小遣いをもらう学生の立場だと、数か月かけてお金を貯めないとゲームソフトを買えません。最初のゲームライフがこうした状況だと、その印象が後々まで続くので、「高い」と感じるのも至極当然でしょう。
●時代の変化が「ゲームソフト代」に対する認識に影響する場合も
またゲームは、時代と共にあり方が変わっており、それが価格のイメージに影響を与えているケースもあります。特に顕著なのは、携帯電話やスマホの普及で一気に拡大した、「基本無料系ゲーム」の台頭です。
基本無料のゲームは、文字通りただプレイするだけならお金がかかりません(通信費等はかかりますが)。しかもジャンルが多彩で、RPGやパズル、育成にカード系など幅広く展開しており、FPS・TPS系STGも人気を博しています。こうしたゲーム体験を無料で遊べる環境に慣れると、お金がかかる従来のゲーム(買い切り型)を「高い」と感じてしまうのも無理のない話です。
ちなみに、一般的なゲームソフト1本分よりも高い課金アイテムに手を出すプレイヤーもいますが、課金せずに遊ぶ人も少なくないため、「基本無料」と「買い切り方」に対する印象は意見が分かれやすいところです。
また、インターネットの普及に伴い、買い切り方のゲームであっても、追加で費用がかかるケースもあります。それは、「追加ダウンロードコンテンツ」(以下、追加DLC)の存在です。ゲームによっては、新たなストーリー、新キャラ、新衣装などが有料で販売され、すべての追加DLCを購入すると元のゲームソフト代すら超えることもあります。 追加DLCの購入は任意なので、強制的にお金を取られるわけではありません。しかし、最初のゲームソフト代だけで全部揃わないのは腑に落ちない、と考える人もいます。
また近年は、興味があるゲームがあっても実況配信を見て済ませる人も少なからずおり、そのスタイルに慣れるとゲームの購入に割高感を覚えてもおかしくありません。
■「ゲームソフトは安い」派には、どんな理由が?
場所を選ばずどこでも遊べる自由さと、インディーゲームの相性が上手くハマったNintendo Switch
●趣味全般と比べると、ソフト1本で何十時間も遊べるゲームはコスパ良し
ゲームソフトを「高い」と感じる人もいれば、「安い」と捉える人もいます。安いと感じる理由のひとつは、趣味にかかる出費という視点。マンガや小説などのコンテンツと比べると割高かもしれませんが、比較対象を趣味一般に広げると印象も変わってきます。
例えば、旅行だと交通費+宿泊費が必要ですし、家族でとなれば必要額は人数分増します。車好きなら、車本体はもちろんですが、駐車場代やメンテナンス費、車検なども必須。登山やキャンプなどのアウトドアも交通費がかかりますし、安全性や機能性が十分な各種用品も欠かせません。趣味全体を比較対象にすると、ゲームはかなり安く済む部類なので、相対的に安いと考えてもおかしくありません。
またゲームは、コストパフォーマンスの面でも優れています。ゲームの内容によりますが、本格的なRPGであれば1本で数十時間は軽く遊べます。また、『マインクラフト』や『どうぶつの森』のような明確に終わりのないゲームであれば、本人が飽きるまで延々とプレイし続けられるので、コスパの良さは計り知れません。
もちろん、長くプレイするのがツライゲームもあります。優れた作品があれば難点の多い作品も存在するものの、それはマンガや小説、映画にも同様に潜んでいるので、ゲームだけが抱える問題ではありません。また昨今は、インターネットなどで事前に情報を調べれば、いわゆる「クソゲー」の回避はさほど難しくありません。
●時代の変化が、「ゲームは安い」の印象を後押しすることも
ほかの趣味と比べるのではなく、家庭用以外のゲームと比較しても、ゲームソフトの安さが分かります。例えばゲームセンターで遊ぶと、通常筐体の1プレイはざっと50円~100円。1プレイ3分間で10回遊んだとして、30分で500円~1000円ほどの出費になります。
しかしゲームソフトの場合、最初にまとまった額がかかるものの、あとは家で何時間遊んでも出費いらず。10日間ほどゲームセンターに通う額で、ずっと遊び放題になるのは、金額的にかなりお得です。しかも今は、ネット経由でオンライン対戦が楽しめ、対戦で負けても懐が全く痛まないので助かります。
また時代の流れにより、ゲームの金銭的価値に変化が訪れました。マンガや映像、音楽を定額で楽しむサブスクリプションが受け入れられていますが、ゲーム市場でも「PlayStation Plus」や「Game Pass」といったゲームのサブスクが定番化しています。
サービスによって金額はまちまちですが、プレミアムなコースでなければ一か月あたり1000円も出さずに数多くのゲームが遊べるため、加入者も増加傾向。毎月決まった額の支払いなので、支出のやりくりがしやすいのも嬉しい点です。
さらにインターネットの普及で、ゲームのオンライン販売、そしてダウンロードゲームのセールが活発になりました。中古ショップなどを回ることもなく、時には半額やそれ以下でゲームが買えるため、手軽にお得な買い物がしやすいので安い、と考えるユーザーもいます。
加えて、セールでなくともインディー系のゲームは数千円くらいが主流ですし、数百円で買える場合もあります。ボリュームは価格相応のものが大半ですが、トップレベルの作品ともなればフルプライスのゲーム並みに面白い作品もごろごろ転がっています。
定額で自由に遊べ、セールでお得に買え、インディー作品を手頃な価格で入手できる。こうした背景もあるので、「ゲームは安い」と判断する側の意見も納得の一言です。
* * *
ゲームが高いのか、それとも安いのか。価値は同じでも価値観は人それぞれなので、そこに絶対の正解はありません。立場や考え方次第で、印象も大きく変わります。だからこそ、さまざまな意見を踏まえた上で、自分がどのように感じるのか。それを見極めておけば、買い過ぎや買い逃しを防ぐ一助となるかもしれません。
──などと賢しげなことを口にする筆者は、先月(2022年12月)だけで15本のゲームを購入。年末セールに背中を押され、がっつりと散財しました。これを全部遊ぶ時間を用意できるわけがないのに、それでも買ってしまう脇の甘さ。誰よりも自分自身が、買い過ぎを防ぐために価値観を見直す必要がありそうです。
(臥待)
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