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なぜTVアニメの放送遅延が発生するのか かつては「延期」ではなく「作画崩壊」だった?

マグミクス / 2023年1月10日 19時40分

なぜTVアニメの放送遅延が発生するのか かつては「延期」ではなく「作画崩壊」だった?

■アニメ制作はなぜ遅れるのか

 近年、アニメ制作の遅れがニュースとして取り上げられることが多くなっています。ここ数か月だけでも『「艦これ」いつかあの海で』は4話以降の放送に大幅な遅れが生じ、2022年7月クールの『異世界おじさん』はいったん放送を休止して10月クールに枠を新たに確保しました。ところが、2022年12月29日放送予定の13話も放送延期となってしまいました。この2作品以外にも放送の延期や中止のニュースが当たり前のように流れており、本来予定されていたスケジュールを守ることが非常に難しい状況になっていることは明らかです。

 なぜアニメ制作に遅れが生じているのか。現状、一番の理由は、やはり新型コロナウイルスの影響と言えるでしょう。新型コロナウイルスが猛威を振るうようになってから、アニメ業界は大きな打撃を受けています。打ち合わせ、脚本会議、作画、収録など、アニメ制作はさまざまな集団作業で構成されています。リモートでも作業は可能ですが、細かい部分のすり合わせが難しいのでどうしても成果物に齟齬(そご)が発生しやすくなってしまいます。当然差し戻しになる回数も増え、効率がかなり落ちてしまっているそうです。

 また、アニメ制作には海外スタジオの協力が欠かせませんが、2022年の年末以降、中国でかなり大規模な流行が発生しており、予断を許さない状況です。おそらく2023年1月スタートのアニメにも、何らかの影響があると思われます。

 しかしながら、制作の遅れは新型コロナウイルスの流行前からしばしば起こっていた出来事です。放送を延期できない場合、アニメとしての体裁を保てないほどに酷い状態で放送されることもあり、そのたびに物議をかもしてきました。

 新型コロナウイルスを抜きにした場合、制作が遅れる大きな理由は人手不足です。アニメーターの数は限られており、なかでも腕が良い人となるとほんのひと握りしか存在していません。アニメの存在感が増していくなかで人の取り合いが発生し、必要な人材を確保できなかった場合は当然制作が遅れることになります。資金不足により人を集められないこともあるそうです。

■昔は「作画崩壊」だったが今は「放送の遅延」に

第4話以降の放送が延期された『「艦これ」いつかあの海で』 (C)C2機関 / KADOKAWA /「艦これ」第二水雷戦隊

 もちろん、人手不足の他にも制作の遅れにはさまざまな理由があります。10年ほど前に作画崩壊を起こしたある作品は、脚本が遅れに遅れたために1クール分のアニメをわずか3週間で制作しなければならなかったそうです。当時参加していたスタッフの方から最初に話を聞いた際には信じられませんでしたが、その後、他の方からも同じ話を聞いたので、事実だと考えて良いでしょう。

 最近では『ゴールデンカムイ』第4期の放送中にメインスタッフのどなたかが突然亡くなったため、いったん制作が延期されるというショッキングな出来事もありました。アニメ制作が過酷な状況で行われていることがうかがえます。

 他にも監督が極めて強いこだわりを見せたために制作が遅れた例や、原作サイドがリテイクを繰り返しスケジュールが破綻した例など現場のこだわりが原因となった事例も存在しています。

 しかし作画崩壊を語る際に必ず出てくる『ロスト・ユニバース』の第4話「ヤシガニ屠る」の場合は事情が少し違いました。海外に発注した分が酷いできで、日本の現場が直して放送に耐えるレベルに仕上げていたのを、経営サイドが「現場が不必要なこだわりを見せている」と考えて直しを許さなかった結果、25年が経った今なお語り継がれてしまう問題作が世に出てしまった経緯があります。

 また、プロデューサーが独断で放送時期を早めたため、最初からどうにもならなかったという事例も聞きました。結局のところ、経営サイドと現場サイド、双方のハンドリングがどこかでおかしくなった時に、制作の遅延や崩壊が起こるのでしょう。

 ただ今回、制作の遅延について調べた際に、以前は作画崩壊を起こした作品をそのまま放送していましたが、いまはいったん仕切り直し、新たに枠を確保するケースが増えている点に思い当たりました。この理由として大きいのは、一度作画崩壊を起こすと何かの折に話題が蒸し返されてしまうためだと思われます。

 また、かつてはTVでの放送が中心でしたが、今は配信も視聴手段のメインと言える状況となっており、以前と比較すると制作の遅れに対応しやすくなっているというのもあるでしょう。そもそも崩壊した現場を無理に立て直そうとしても、近年のアニメは話数が少ないため立て直し切れずに最終回を迎えてしまう可能性が高く、それなら仕切り直した方が良い作品になるのは明白です。

 可能であれば制作の遅延は起こって欲しくはありませんが、一番そう思っているのは間違いなく制作スタッフをはじめとする関係者です。幸いと言っていいのかは分かりませんが、現代は見るアニメに事欠く時代ではありません。他の作品を見ながら、のんびり完成を待つ。それがファンの取るべき態度なのかもしれません。

(早川清一朗)

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