「あかるいイデオン」誕生のきっかけ? サンライズに伝わる「呪いのイデオン人形」とは
マグミクス / 2023年1月13日 6時10分
![「あかるいイデオン」誕生のきっかけ? サンライズに伝わる「呪いのイデオン人形」とは](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/magmix/magmix_131959_0-small.jpg)
■イデの導きが現実世界にも!?
情報が飛び交う現代、信憑性の有無に関わらずさまざなな「秘話」がちまたを騒がせますが、今から40年以上前のアニメ制作現場にも「それ、ホント?」という話しはもちろんありました。
そんなひとつが「呪いのイデオン人形」というものです。
1980年5月から放送された『伝説巨神イデオン』は、巨大ロボットTVアニメでありながら、哲学的テーマを抱え、さらには最終回で主要キャラクター全員が死んでしまうという衝撃も相まって、当時から、特にハイティーン以上のアニメファンの話題をさらいました。
しかし、そんな作品も、当時の他のロボットアニメと変わらず幼年用玩具商品の販売を目的として企画されました。
企画段階では、Aメカ、Bメカ、Cメカという仮名の三つの装甲車のような乗り物が合体してロボットになるというもの。
Aメカは「ソルアンバーからイデオデルタ」
Bメカは「ソルバニアーからイデオノバ」
Cメカは「ソルコンバーからイデオバスタ」
それぞれが変形し、さらに合体するのですが、この「ABC」の仮名の名残りが、Bメカの「バニアー」の「バ」(英語のバーニアは「V」なのですが)とCメカの「コンバー」の「コ」だったりします。
そして、これらの二段変形玩具は、イデオン以前にやはりスポンサードしていた、同じ日本サンライズ(当時)作品『科学冒険隊タンサー5』のヒット商品「ミラクルチェンジ」の技術を新たな形で活かそうという発想から生まれたものなのです。
そのため、商品には、たとえば作品中には全く登場しない、ゲンコツや上腕部のミサイル、足先のトマホークが飛び出す等の機能がありました。
一方、玩具ではごく普通に手に持っている剣は、作中では惑星すら一刀両断できるビーム兵器「イデオンソード」、さらに、音と共に胸や目がぴかぴか光る「サウンドフラッシャーイデオン」という玩具は、「イデオンゲージ」という作中のシステム表示となり、実は映像上の音のなかにもこの「サウンドフラッシャー」の音が含まれています。
こうした玩具とのすり合わせは、もちろん監督である富野由悠季さんのスポンサーに対する気遣いに他なりません。
スポンサーあってのTV番組ですから、常に制作側は玩具の売り上げに少しでも貢献しようと工夫しているわけですが、当然スポンサー側も、少しでも商品を売るために努力しています。
そのひとつが、販促用の7、80cmほどのソフトビニール性のイデオン(玩具店の店頭などに置いておく非売品の立体)でした。
イデオンを制作していた当時の現場スタジオにもこのイデオンが置かれていました。
限定で作られた特性品ですから出来もなかなか良く、スタジオを訪れる人にも人気で、私などは、ちょうど大きさがいいので、無礼なことに上着掛け代わりにしていたりしたものですが、狭いスタジオなので、どうしても、そのときの都合に併せて置き場所が変わります。
それが、いつの頃からか「この人形が近くにあると良くないことが起こる」という、なかば笑い話がささやかれるようになったのです。
たまたま近くの席の制作進行の車が追突されたとか、ひどい風邪にかかったとか、そんな程度のことだと思うのですが、スタッフ間の痴話ばなしのなかで、それを「このイデオンの呪いかも」なんて笑っていたうちに、都合で動かすと、その近くのスタッフが「やめてくれ、縁起が悪い(笑)」などと言い始め、いつの間にか『イデオン』の作品内容とも相まって「呪いのイデオン人形」という笑い話しになっていくのです。まさに「バカなニセ伝説」状態です。
しかし、これに端を発して「祟り神イデオン」のようなパロディー話題が出来上がり、それをヒントとしたイベント担当スタッフが「イデ神社」という小さなニセモノの社(やしろ)製作を提案して『明るいイデオン』というイベントが開かれるなど、斜め上だか下だか解らない方向へと動いて行くことになったのです。
でも、実際は他愛もない笑い話のはずが、こんな流れになったのは、イデオンの「呪い」ではなく「遊び心」だったのかもしれないと思いませんか?
なお、この「イデ神社」は、イベント終了後、当時の本社ビルの一角にしばし放置されていましたが、後にちゃんとお払いを受けてから処分、かのイデオン人形は、制作終了後にどこかの作画スタジオ?に譲られたと聞きますが、さて、今はどこにありますやら。
【著者プロフィール】
風間洋(河原よしえ)
1975年よりアニメ制作会社サンライズ(現・バンダイナムコフィルムワークス)の『勇者ライディーン』(東北新社)制作スタジオに学生バイトで所属。卒業後、正規スタッフとして『無敵超人ザンボット3』等の設定助手、『最強ロボ ダイオージャ』『戦闘メカ ザブングル』『聖戦士ダンバイン』『巨神ゴーグ』等の文芸設定制作、『重戦機エルガイム』では「河原よしえ」名で脚本参加。『機甲戦記ドラグナー』『魔神英雄伝ワタル』『鎧伝 サムライトルーパー』等々の企画開発等に携わる。1989年より著述家として独立。同社作品のノベライズ、オリジナル小説、脚本、ムック関係やコラム等も手掛けている。
(風間洋(河原よしえ))
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