参加者1万人突破間近! 歌舞伎町『龍が如く』体験型イベントは街を変える?
マグミクス / 2018年12月26日 18時0分
■体験型ゲームイベントが歌舞伎町を変えた
「2019年の年明けには、参加者が1万人に達する見込みです」
2018年7月の開始から早5か月。東京・歌舞伎町を舞台にした体験型ゲームイベント『100億の少女誘拐事件』を手掛けるSCRAP(スクラップ、東京・渋谷)の担当者はこう話します。
『100億の少女誘拐事件』はシリーズ累計出荷本数1000万本の大人気アクションアドベンチャーゲーム『龍が如く』(セガゲームス)と、参加者が新人探偵となり、同じく歌舞伎町を駆け巡る、同社提供の体験型ゲームイベント『歌舞伎町探偵セブン』がコラボしたイベントです。
イベントの参加者は、同社運営の謎解きテーマパーク・東京ミステリーサーカス(新宿)で配られた依頼書の指示に従い、バーやキャバクラ、ホストクラブなど、歌舞伎町の街に実在する施設や場所に足を運んで、聞き込みを行ったり謎や暗号を解いたりしながら、『龍が如く』の主人公・桐生一馬たちと協力して捜査を進め、事件の真相を解き明かしていきます。
「『龍が如く』のメインユーザーは、20代から40代までの男性」(セガゲームス)にもかかわらず、イベントの参加者は20代から30代が大半で、しかも女性の割合が6割を超えるといいます。
「イベントに来ているのは男女2人ずつのグループのような、いわゆる『リア充』な人たちが多い。雰囲気も『明るく楽しむ』感じ。イベントでトラブルが起きたという話も聞きません。組合加盟店の売り上げが増えたかどうかは現時点で分かりませんが、とにかく驚いています。これまでの歌舞伎町のイメージを払しょくしてくれてうれしいですよ」(歌舞伎町商店街振興組合)
「『龍が如く』の参加者の皆さまから、『ゲームの世界に入り込んだようで、歩いているだけで楽しい』とのコメントをいただいています。また、イベント開始に合わせて、当社のアミューズメント施設『セガ新宿歌舞伎町店』で、『龍が如く』グッズの特別販売を実施したのですが、イベントとの相乗効果で、通常の期間限定ショップよりも多くの方たちにご来場いただきました。本イベントは、『セガ新宿歌舞伎町店』含め、街全体へ波及する力を持っており、だからこそ、既存の遊びの枠に納まらない魅力があると感じます。」(セガゲームス)
『100億の少女誘拐事件』は若い女性参加者が多い(画像:SCRAP)
この変化は、歌舞伎町の光景を長年見続けてきた新宿区も好意的に受け止めています。区の東京オリンピック・パラリンピック開催等担当課は、次のように話します。
「新宿区は2005(平成17)年から、地元の商店組合や民間企業、警察、NPOなどと一緒に歌舞伎町を安心して楽しめる街に再生しようと、『歌舞伎町ルネッサンス』という取り組みを行ってきました。道路清掃といったハード面の整備のほか、『地域活性化プロジェクト』を立ち上げ、従来のマイナス部分を無くすだけではなく、プラスのメッセージ発信していこうとこれまで取り組んできました。
特に2015年4月、新宿コマ劇場と新宿東宝会館の跡地に『TOHOシネマズ新宿』がオープンした頃から街の『見栄え』が変わり始め、2016年4月の歌舞伎町シネシティ広場リニューアル後(全面フラット化)、映画『シン・ゴジラ』のレッドカーペットイベント(2016年7月)やグルメイベントが行われるなど、好循環が続いています。若い人たちやインバウンド(訪日外国人)が増え、客層が変わったのもその頃からです。体験型ゲームイベントで街の回遊性も上がり、それが『歩きやすくなった歌舞伎町』のPRにも繋がり、新宿区としてはうれしい限りですね」
歌舞伎町のイメージ向上の先鞭となった「TOHOシネマズ新宿」(写真中央)(画像:写真AC)
そんな歌舞伎町で現在行われている『100億の少女誘拐事件』はいかに出来上がったのでしょうか。その背景を取材しました。
■かつての「悪い」イメージがコラボを生んだ
2018年7月開始の『100億の少女誘拐事件』。そのアイデアが出たのは意外にもコラボの元となったイベント『歌舞伎町探偵セブン』と同時期だったといいます。
「(2017年12月にオープンした)東京ミステリーサーカスが現在のビル(APMビル)を入る前、社内でアイデアを話し合っていたときに、社員のひとりが『街をテーマパークにして、ビルの外へ出るゲームを作ろう』と思いついたのが『歌舞伎町探偵セブン』(2017年12月末スタート)誕生のきっかけとなりました。その時点で『歌舞伎町でリアル『龍が如く』みたいなこともしたい』という意見が出ていました」(SCRAP)
東京ミステリーサーカスの外観(画像:新宿プリンスホテル)
具体的なアイデアは『歌舞伎町探偵セブン』スタート後のこと。その当初から少女が誘拐される事件という『100億の少女誘拐事件』のアイデアが挙がっていたといいます。
「『龍が如く』の桐生一馬がなぜイベントで捜査に加わるのかという『動機』を考えたときに、これまでの『龍が如く』のイメージが浮かびました。『100億の少女誘拐事件』は(桐生一馬が育った養護施設にいた少女の)澤村遥が出演していませんが、遥が誘拐されたら、いつものように桐生が飛んでくるだろうという感覚で出したアイデアでした(笑)」
SCRAPにとって、かつての歌舞伎町の危険なイメージはむしろ効果的で、「新しいドラマが生まれないわけがなく、格好の舞台でした」と振り返ります。
コラボの元となったイベント『歌舞伎町探偵セブン』(画像:セガゲームス)
その後、ストーリーの大まかな流れは1か月ほどで決まったといいます。しかし現在の内容とは異なり、「かなりSFな内容」だったとのこと。
「制作にあたって、『龍が如く』シリーズの制作者たちにご協力いただきました。初めてストーリー案を持ち込んだときのことが印象に残っています。実は当初のストーリーがかなりSFな内容だったので、『龍が如く』シリーズのプロデューサーから改めて『龍が如く』の世界観を熱く語っていただきました。その結果、これでは『龍が如く』の魅力を十分に出しきれないと感じ、ストーリーの設定内容をすぐに修正しました」(SCRAP)
『龍が如く』の世界観を体験型ゲームイベントに落とし込むとき、まずゲーム内に登場する「ヒートアクション」(「ヒートゲージ」と呼ばれる主人公の熱量を示すゲージを溜めると披露できる技)の再現を思い立ったとのこと。イベント内では当然、ヤクザ役のスタッフを用意して実際に殴ることはできません。しかし自らの手で彼らを倒すシーンは絶対に外せないとSCRAPは感じており、結果として実際に体を動かすアクションを設けることができたといいます。
2016年12月8日発売『龍が如く6 命の詩。』のヒートアクション ©SEGA(画像:セガゲームス)
イベント内では桐生一馬と協力して繰り出す大技も登場しますが、周囲の社員にやり方をうまく伝えられずに苦労したそうです。
■バーやキャバクラなど、イベント用のリアル物件も
2018年7月の開催をアナウンスした際、ファンからは「待ってました!」「うれしい!」という反応がありました。『龍が如く』の舞台である神室町は、歌舞伎町をモデルとしているからです。
「SCRAPのイベントに参加するのが初めてという人にアンケートを取ったところ、その多くは『龍が如く』のファンでした。家庭用ゲーム機にはない新たな体験を演出できたことが良い反応に繋がったのではないでしょうか」
『龍が如く』の舞台となる神室町(画像:セガゲームス)
そのほかにも、バーやキャバクラ、ホストクラブなど「このような機会でなければ入らない場所に実際に入れた」という感想が寄せられているそうです。参加者がイベントで訪れる施設は、本当に営業している店舗やイベントのためだけに使われている物件もあるそうです。
「物件探しのためにひたすら歌舞伎町を歩き回りましたので、地理だけでなく、物件についてもだいぶ詳しくなりました。私も入るのが初めてというところばかりだったので、初めて仕事のお話に行ったときはとても緊張しました(笑)。歌舞伎町のお店は基本的に夜の営業が多いため、昼間に行うと営業前のお店に入ることができますが、夜にプレイするのも街の雰囲気を深く感じられるのでおすすめです。リアルな探偵ごっこがしてみたい、という方は是非プレイしてみてください」
『100億の少女誘拐事件』で、参加者がキャバクラを訪れるイメージ(画像:SCRAP)
2018年11月21日(水)にはスマホゲームアプリ『龍が如く ONLINE』もリリースされ、早くも150万アカウントを突破しています(12月18日時点)。発売元のセガゲームスでは「『100億の少女誘拐事件』がきっかけで『龍が如く』に興味を持っていただいた人には、ぜひ遊んでいただきたい」と話しています。
(マグミクス編集部)
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