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ロボットが感情を持つとどうなる? 43年前に手塚治虫が描いた映画『火の鳥2772』

マグミクス / 2023年1月14日 17時10分

ロボットが感情を持つとどうなる? 43年前に手塚治虫が描いた映画『火の鳥2772』

■「怖かったわ…」は本当に恐怖のひと言?

 2023年、手塚治虫の長編大作『火の鳥』を原作とする新作アニメがSTUDIO4℃により制作されます。タイトルは『PHOENIX:EDEN17』、ディズニープラスで世界(中国本土を除く)独占配信されます。『火の鳥』は、伝説の不死鳥の生き血を飲むと不老不死を得られるという設定の上、古代から未来まで数千年にわたる時代で繰り広げられる、人の生死や愛と平和を描く物語です。

 映画『火の鳥』はこれまで8本制作されていますが、手塚治虫氏本人が原案・構成・総監督を務めた唯一の作品が『火の鳥2772愛のコスモゾーン』です。公開は43年前の1980年で、物語の設定は22世紀初頭なのですが、いま観てみると、ある問題が描かれているため少し怖くなります。それは、「ロボットの感情」です。

『火の鳥2772愛のコスモゾーン』の舞台は、地球連邦によって人間が生まれてから死ぬまで管理されている未来世界。試験管ベビーから生まれ宇宙ハンターとして育てられたゴドーは、宇宙の鳥2772(火の鳥の呼称)の生け捕りを命じられます。

 主人公・ゴドーは生身の人間と交わることなく、閉鎖された機械の部屋のなかで宇宙ハンター育成用育児ロボット「オルガ」に育てられます。飛行機や車などに姿を変えられる機能を持ち、ゴドーの身体能力を高める成長をサポートします。

 実は、オルガには欠陥があり、ケーキを作って食べさせるなど、規定には含まれない行動をとります。これが結果的にゴドーを優しい青年に育てたことにもなりました。注目したいのはこのオルガです。

 青年になったゴドーは宇宙ハンター訓練所へ。ゴドーはオルガを友達・パートナーとし、どこへ行くにも必要だと言いますが、一方でオルガに対し「おまえはロボット」「ロボットにはわからない」、つまり「感情がない」個体として扱います。

 このオルガに、現代で言うAI(人工知能)が内蔵されていたとするなら、膨大なゴドーの行動データをもとに、命令に従う行動や困れば助ける補助、攻撃といった行動を遂行することになります。しかしそこに「感情」は持たないはずです。ロボットは「生き物」ではないのですから。

■火の鳥さえも「愛」に負けを認める

『火の鳥2772 愛のコスモゾーン』のコミカライズ単行本「火の鳥2772」(メディアファクトリー)

 しかし物語が進むにつれ、ゴドーが見ていないところで、オルガには感情が備わっていることが徐々にわかってきます。

 ゴドーがレナ(長官の婚約者)とのかなわない恋に悩むシーンで、

オルガ「ナニを考えているのデスカ……ワタシ、わかります。あのオンナのことデスネ」
ゴドー「うるさい、ロボットの知ったことじゃない!」

 洗面台を前にひとり体を震わせるオルガ。怒りからか、全身から稲妻が走りグラスが割れます。

 また、レナの夢を見てゴドーが苦しむシーンでは、

ゴドー「オルガ、おまえには青春ってものはあるか」
オルガ「セイシュン?」
ゴドー「ないだろうなロボットには。おまえに分かるはずがないんだ。僕は友達が欲しい、心の底から信じ合える、愛し合える友達が欲しいんだ」
オルガ「オルガ、ゴドースキ。ゴドーのためなら何でもスル。いつでもゴドーのそばにイル。それでもダメ?」
ゴドー「僕が欲しいのは人間の女の子だ!」

 部屋の片隅で肩を震わせ顔を覆うオルガ。でも涙が出る装置がありません(「スキ」という感情を出しているが捉え方が難しい)。

 そんなオルガの「感情」に、ゴドーがついに気づきます。火の鳥から攻撃を受けたスペースシャーク(戦闘機)の破損部を修理するため、外で作業しコックピットに戻ったオルガに対し、

ゴドー「オルガ、助かったよ。なんともなかったかい?」
オルガ「怖かったワ」
ゴドー「!? 怖いって言ったのか」
オルガ「ええ、足がすくんだワ」
ゴドー「でもキミはロボットだ、怖いなんて感情はないはずだろ」
オルガ「もちろんオルガ生まれたトキ、コワイ、ウレシイ、ニクラシイ、なんにもココロありません。でも一生懸命おぼえました、ニンゲンのキモチ。アナタに嫌われないように」
ゴドー「信じられない、ありえないことだ」
オルガ「オルガ、ニンゲンのオンナノコとオナジよ」

 オルガは凶暴で巨大な火の鳥の火炎に飲まれ丸こげになります。戦いが終わり、オルガを修理して動かそうと試みるゴドー。そこへ美しい姿に変わった火の鳥が現れます。「あなたには負けた」「あなたの持っているモノを少し分けて欲しい」、そう話しかけてきます。ゴドーは「オルガを生き返らせてくれたらなんでもくれてやる!」。火の鳥はオルガをよみがえられます。ゴドーはオルガを抱きしめ……

ゴドー「僕はキミなしではいられない、キミに育てられたときからずっとキミが好きだったんだ」
オルガ「ワタシ、ロボットですワ。アナタはニンゲンデス、ご主人デス」
ゴドー「ロボットも人間もあるもんか、愛してる、全宇宙よりもっと強い力でキミを愛してる!」

 物語の結末は伏せますが、タイトルにもあるように、『火の鳥2772』のテーマは「愛」です。ロボットが感情を持つこと、そして人間とロボットが愛し合う形を描いた映画作品は、本作が先駆けではないでしょうか。

 ロボットが感情を持つテーマの映画はいくつか製作されていますが、だいたい人間と敵対する様相を展開し、「未来のロボット社会は危険?」と問題定義するものが多い傾向です。2022年6月、米GoogleがAI「ラムダ」が感情を持っていると報告したニュースが世界を駆け巡り、科学界が揺れました。そんな事実はないと訂正されましたが、逆にそれが怖いところです。やはり危険と取られるのを懸念しているのでしょう。

 しかし、43年前の映画『火の鳥2772』は、人とロボットが敵対するのではなく「愛し合う」形で描かれています。果たして、人の作りしロボットが感情を持つことは悪いことなのか? 筆者は手塚治虫先生が描いたような「愛」がたくさん生まれ、人とロボットの結婚が社会問題になる時代がくるのではないかとすら思えるですが、皆さんはどう思いますか?

(石原久稔)

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