『ジャンボーグA』放送から50年 当時は前代未聞の「主役交代劇」に子供は興奮!
マグミクス / 2023年1月17日 7時10分
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■「ウルトラ」シリーズとの差別化で明るさをメインにした作劇
本日1月17日は、1973年に特撮ヒーロー番組『ジャンボーグA(エース)』が放送開始された日です。今年、2023年で半世紀の時が過ぎました。「ウルトラ」シリーズで有名な円谷プロが製作した、当時としては斬新だった特撮ヒーローの見どころについて振り返ります。
本作『ジャンボーグA』は、同年に放送開始した『ファイヤーマン』や『ウルトラマンタロウ』と同じく、「円谷プロ創立10周年記念番組」として製作されました。しかし、その原型となる企画は『ウルトラマン』が製作された1966年にまでさかのぼります。
この時、円谷プロが小学館との雑誌企画用に作られ、後に小学館の学年誌に連載を始めたのが1970年、『ジャンボーX(エックス)』という巨大ヒーローマンガでした。この時代は『ウルトラセブン』と『帰ってきたウルトラマン』の間にあたり、ウルトラヒーロー不在の時代にウルトラ怪獣と戦うマンガとして人気を博します。
実はこの、TV放映前に小学館の学年誌で連載するというのは『ミラーマン』が先駆けで、このミラーマンも『ジャンボーX』同様にTVとは違うデザインのヒーローでした。ともに雑誌掲載から3年ほど経ってから、TVで活躍することとなります。
前述した通り、円谷プロ創立10周年記念番組として製作された『ジャンボーグA』は、他の円谷プロ作品との差別化で、明るいヒーローものという方向性でした。そのため、主人公である立花ナオキはこれまでの主人公にいなかった直情的で無鉄砲、時には身勝手な行動も目立つ欠点の多いキャラクターとなります。
このナオキの人間的成長を描くという点は、当時人気のあった青春モノの流れでしょう。また特撮ヒーローものとして珍しかったのが、戦闘中にヒーローと主人公が同時に存在することです。これまでの特撮ヒーローのほとんどは変身して戦うのが基本、その際に主人公の姿はありません。ところが本作はナオキがジャンボーグAの操縦席にいることで同時に存在しています。
この点が、変身して巨大化する他のヒーローたちと一線を画すところ。同時期に人気だった巨大ロボアニメの先駆けとなる『マジンガーZ』と奇しくも同じスタイルでした。余談ですが、昨今の『ウルトラマン』がこの『ジャンボーグA』とまったく同じ、巨大ヒーローと主人公が同時に存在するパターンをニュージェネレーション以降続けています。いかに『ジャンボーグA』が先駆的存在だったか分かるでしょう。
ちなみに「ジャンボーグ」とは、巨大を意味する「ジャンボ」と、機械人間を意味する「サイボーグ」を合わせた造語。劇中でも「巨大サイボーグ」と呼ばれるシーンがありますが、これにはふたつの解釈があります。ひとつは当時まだロボットやサイボーグという存在があいまいだったこと。もうひとつはロボットであるジャンボーグに人間であるナオキが組み合わさることで「人機一体」、サイボーグとなるという説です。
■史上初だった、番組途中からの主役交代劇
子供たちが共演を夢見た『ミラーマン』 画像は「ミラーマンVOL.7【DVD】」(東映)
『ジャンボーグA』を振り返った時、受ける印象は円谷プロらしくない明るい作品だということです。前述したように、同時期に放送していた『ファイヤーマン』と『ウルトラマンタロウ』との差別化が頭にあったのでしょう。
そのためか分かりませんが、敵側に当時の人気作品だった特撮ヒーロー番組『仮面ライダー』との共通点がいくつかありました。敵組織の存在、その中心となる幹部の登場と交代、戦闘員の登用、姿を見せない支配者などです。放送局が『仮面ライダー』と同じ毎日放送だったことから何らかのオーダーがあったのかもしれません。または意識的に『仮面ライダー』の構成を取り入れた可能性はあります。
しかし、当時の子供だった筆者が注目したのは第32話で『ミラーマン』に出てきたSGMのジャンボフェニックスの登場でした。しかも乗り込んでいたSGMの村上チーフが、そのままPATの隊長に就任するという展開に興奮します。後に本作は『ミラーマン』の主要スタッフが製作していたことを知り、この展開に納得しました。
もちろん子供はこの展開からミラーマンとの共演を夢見ましたが、その主人公を演じた石田信之さんはすでに第12、13話に出演していて、そんな夢のような展開はありません。しかし、ヒーローの共演よりも防衛チームの共演というのはあまり例がないので、そういう点でも本作は先駆的だったのでしょう。
そんな本作でヒーロー番組史上初と言われているのが、「ジャンボーグ9」というもうひとりのヒーローの登場です。これまでのヒーロー番組のセオリーになかったこの展開は、本作で特筆すべき点のひとつ。この主役交代劇は当時の子供を驚かせました。しかも後に「A」も復活し、主役はふたり体制となります。
当時の子供としては、後から出てきて「A」を倒したジャンキラーに勝った「9」の方が強い、となりましたが、劇中での見せ方はその想像を裏切る絶妙な演出をしていました。パワーがあっても空が飛べないという弱点を持つ「9」に対して、「A」は万能タイプのイメージで両雄を並び立たせます。
唯一の不満だったのは操縦者であるナオキの体はひとつですから、「A」と「9」の共闘は普通なら見られないこと。しかし第47話で「9」が敵に奪われたことから「A」と対決、その後に取り戻した「9」にエメラルド星人が乗り込むという展開で夢の共闘を実現させていました。
こういった展開の他にもどちらかが一度、怪獣に敗れてから別のジャンボーグで勝利するということもあって、新型の「9」が絶対的に強いわけでなく、「A」の見せ場を後半でも見せることでダブルヒーローの活躍で番組を盛り上げます。
この他にも子門真人さんが「谷あきら」名義で歌っている主題歌もノリのいい名曲で、当時の子供たちはよく口ずさんでいました。OP映像が大空を飛ぶジャンセスナの実写映像という硬派な感じもまた良かったです。
たいへん人気の高い作品で延長も視野に入っていました。最終回で謎の声が出てきたのもその名残だそうです。新しい敵幹部も予定されていたそうですから、もし延長していたら第3のジャンボーグが登場していたかもしれませんね。
(加々美利治)
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