平成『ガメラ』第1作がBS12で放映 特撮新時代を呼んだ、精鋭スタッフらの熱量
マグミクス / 2023年1月22日 9時45分
■『シン・ゴジラ』『シン・ウルトラマン』にも影響?
「日本の夜明けぜよ」
幕末を舞台にした時代劇で、坂本龍馬がよく口にするセリフです。日本の特撮映画界にも、新時代をもたらしたと言ってよい作品があります。金子修介監督の『ガメラ 大怪獣空中決戦』(1995年)です。
東宝の看板映画『ゴジラ』(1954年)に比べると、大映が制作した昭和版『大怪獣ガメラ』(1965年)は、後発作品ゆえのB級っぽいイメージがありました。平成時代にガメラが復活すると聞いたときも「今さら?」と感じたものですが、そんな先入観を『ガメラ 大怪獣空中決戦』は見事に粉砕してみせたのです。大人が観ても楽しめる SF作品として、バージョンアップされていました。
平成ガメラが成功したことで、『シン・ゴジラ』(2016年)や『シン・ウルトラマン』(2022年)が生まれたと言っても過言ではないでしょう。
2023年1月22日(日)のBS12では、19時から「日曜アニメ劇場 特別編」として『ガメラ 大怪獣空中決戦 4Kデジタル修復版』が放映されます。怪獣映画の水準をいっきに引き上げた平成ガメラの魅力を振り返ります。
■アニメ&特撮界の精鋭たちが集結
金子修介監督は「オタク」第一世代の映画監督として知られています。日活の社員時代に、人気スポ根マンガ『エースをねらえ!』のパロディ映画『宇能鴻一郎の濡れて打つ』(1984年)で、監督デビューをはたしています。東京学芸大では映像芸術研究会に所属し、押井守監督はサークルの先輩にあたります。マンガに詳しく、アイドル好きであり、オタク的要素をうまくエンタメ作品に昇華させる腕を持つ監督です。
脚本は『機動警察パトレイバー the Movie』(1989年)などで知られる伊藤和典氏です。特技監督に抜擢された樋口真嗣氏は、一躍売れっ子となりました。怪獣デザインは「エヴァンゲリオン」シリーズにも参加している前田真宏氏です。アニメ&特撮界のやる気に満ちた精鋭たちが、金子監督のもとに集結しました。
子供向けの印象が強かった昭和版ガメラから、平成ガメラはがらりとイメージが一新されます。SF的リアリティに裏付けされた平成ガメラが、宿敵ギャオスを追って福岡、木曽、富士山麓、東京と日本列島を横断しながら戦うことになります。テンポのよい演出です。
鳥類学者・長嶺真弓役に中山忍さん、ガメラと心で交流する女子高生・草薙浅黄役に藤谷文子さんが起用されています。Wヒロインのかれんさも忘れられません。
■ 「自分たちが観たかった怪獣映画をつくろう」
『ガメラ 大怪獣空中決戦』で、ガメラと怪鳥ギャオスが東京タワーを前に戦うシーン (C)KADOKAWA 日本テレビ 博報堂DYメディアパートナーズ/1995
超古代文明が「生物兵器」として生み出したギャオスが現代に蘇り、ギャオスに対抗する力を持つガメラも同時に復活するという設定です。これなら亀の怪獣ガメラが火を吹きながら、空を飛ぶことも納得できるのではないでしょうか。SF的リアリティに加え、特撮シーンも迫力あるものとなっています。
クライマックスとなるガメラとギャオスの東京での対決シーンは、精巧なミニチュアワークが見ものです。ギャオスは東京タワーに巨大な巣を作るのですが、ガメラが吐き出した火球を浴びて、東京タワーは炎上。巣からギャオスの卵が落ちてくるなど、細かいシーンに特撮スタッフの並々ならぬこだわりが感じられます。
今では当たり前のように思えますが、怪獣同士のバトルシーンが地上にいる人間の視点から描かれている点が、当時はとても新鮮に感じられました。怪獣たちの巨大さが臨場感たっぷりに伝わってきます。
「自分たちが観たかった怪獣映画をつくろう」。怪獣映画を愛する金子監督や樋口特技監督らの熱気が、他のスタッフやキャストにも伝わり、クオリティの高い作品に仕上がっています。制作予算がわずか5億円だったとは信じられません。
大の大人たちが、子供の頃に夢中になった「怪獣映画」にありったけの情熱を注ぎ込んだ爽快感が作品全体からほとばしっています。徹夜作業が続くと「ブラック職場」と言われてしまう現代では、こうした作品は生まれにくくなっているのかもしれません。
■エンタメ界に新時代の到来を告げた「瑞獣」
公開された『ガメラ 大怪獣空中決戦』は、興収的には大ヒットに至りませんでした。しかし内容は高く評価され、数々の映画賞を受賞します。さらにシリーズ第2作『ガメラ2 レギオン襲来』(1996年)、第3作『ガメラ3 邪神〈イリス〉覚醒』(1999年)と続き、平成ガメラ三部作としてファンから愛されています。『ガメラ2』は2月19日(日)、『ガメラ3』は3月5日(日)にBS12で放映されるので、ぜひチェックしてください。
樋口特技監督は大ヒット作『シン・ゴジラ』にも参加し、『シン・ウルトラマン』を監督することになります。平成ガメラでの体験が、『シン・ゴジラ』や『シン・ウルトラマン』に生かされています。
金子監督は『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』(2001年)を撮った後、藤原竜也さんと松山ケンイチさんが共演した実写映画『デスノート』二部作(2006年)で大きな話題を呼び、人気マンガの実写化ブームを招きます。
平成ガメラの企画にGOサインを出した大映の徳間康快社長は、『ガメラ2』に内閣官房長官役で出演しています。また、劇場アニメ『もののけ姫』(1997年)、『千と千尋の神隠し』(2001年)の製作総指揮も務め、日本映画の興収記録を塗り替えることになります。
平成ガメラは、日本のエンタメ界に新時代の到来を告げる「瑞獣(ずいじゅう)」だったのかもしれません。Netflixで配信されることが発表されている令和版ガメラは、はたしてどんな時代を招くのでしょうか。
(長野辰次)
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