「ファミコン世代」の親にゲームを買ってもらう交渉術 「仲間外れにされちゃう!」
マグミクス / 2023年1月24日 12時10分
■ゲームをめぐる、親と子供の攻防戦!
ゲームの面白さは老若男女を問わず、幅広い世代の人々が多彩なゲームライフを楽しんでいます。ですが、肝心のゲームそのものを購入するハードルの高さは、世代によってまちまち。社会人なら日々の稼ぎから購入費の捻出が可能ですし、大学生や高校生はバイトの有無で買いやすさに大きな差が出てきます。
これが中学生や小学生となると、そのハードルは一気に跳ね上がることに。お小遣いを貯めるとしても、その間ゲーム以外の誘惑に耐え続けなければなりません。また、誕生日やクリスマスのプレゼントとしてリクエストするのもアリですが、年に数回しか使えない手段なので、多くのゲームを遊びたい場合は他の手立ても必要です。
近年に限れば低価格で楽しめるインディーゲームが数多く出ているので、そうしたゲームを中心に遊べばさほど懐は痛みません。しかし、安価なダウンロードゲームなどがない時代……特に、ファミコンが現役だった頃の小学生たちは、新たなゲームを手に入れるのにかなり苦労しました。
小学生のお小遣いだけで賄(まかな)うには、少々高嶺の花だったゲームソフト。そのため新しいゲームを手に入れるには、親との交渉がほぼ必須でした。果たして当時の少年少女は、どんな交渉術で親を説得したのか。在りし日の彼らの行いを振り返ってみます。
●取り引き、泣き落とし、駆け引き……ゲームのために頑張ったあの日々
発売直後のゲームや人気の高い作品を買うには、ざっと4、5千円ほどかかります。小学生のお小遣いではなかなか太刀打ちできない額なので、親(もしくは祖父母など)に出してもらうのが基本的な道のりとなります。
しかし「ゲームが欲しい」と言ったところで、ほいほい買ってくれるような親はまずいません。むしろ当時は、家庭用ゲーム機そのものが目新しく、当時の親世代には「よく分からないけど、勉強もせずに没頭する悪しき存在」といった認識が少なからずありました。
そこで、まず順当な交渉術として選ばれたのが、いわば取り引きの提案。「毎日勉強する」「宿題済ませてから遊ぶから」「お風呂掃除を毎日やるよ!」と、お手伝いや勉強に励むといった条件と引き換えに、新たなゲームの購入をおねだりしました。
親からすれば、ゲームに熱中して勉強しなくなるのが最大の懸念事項。その不安が払拭されるなら……と考え、その交渉に応じる場合もあります。しかし、有限実行となるかどうかはケースバイケース。まったく約束を守らずに遊び続けてしまい、同じ手が二度と使えなくなる子供も後を絶ちませんでした。まさに自業自得です。
また、泣き落としで迫る交渉術もありました。「みんな持ってるのに、自分だけ持ってない」「一緒に遊べなくなっちゃう」など、学校での人間関係に影響すると告げ、情に訴える手です。
今と違い、当時はインターネットなどありません。子供たちの間で何が流行っているのか、それを知らないと話題に入れず人間関係に影響を及ぼすほどなのか。そうした情報は今ならネットで調べやすいものの、当時は判断しにくい一面がありました。
親から見れば、実態を図りかねる子供社会。その不透明性を活かし、「遊んでないと仲間外れにされちゃうから」と迫る交渉術は、親の弱みを突いたやり方と言えるでしょう。こうした盛り過ぎる訴えは、今考えれば問題しかありません。反省しきりです。
■兄弟をダシにすることも!?
子供たちがねだるゲームの多くは、人気の高い作品でした。画像は初代『ドラゴンクエスト』
●取り引きだけが交渉術じゃない! 味方を増やし、時には引くことも
ゲームを買ってもらう攻防は、シンプルな取引だけでは済まない場合も多々あります。「家のお手伝いとゲームソフトではつり合いが取れない」「勉強はご褒美がなくてもするべきもの」といった考えを持つ親が相手だと、条件を提示する取り引きはなかなか通用しません。
しかし、子供たちがゲームに傾ける情熱はこの程度で挫けたりはせず、別の手段を模索。「その熱意を勉強に向けて欲しい」という親の願いは届かないまま、交渉は新たな局面へと移行しました。
交渉で大事なのは、提案の内容だけではありません。状況を整えることで、話を有利に運ぶこともできます。その代表的な例として、味方を増やす──という手も有効でした。
交渉の多くは子供と親の1対1で始まりますが、ここで望ましい結果が得られなかった場合、もうひとりの親を味方につけることで状況の打開に繋がることがあります。父親なり母親なりが反対していても、もう片方の親が味方になれば勢力は2対1。数的有利の態勢です。
また、味方にする候補は親だけではなく、兄弟や祖父母なども貴重な戦力足り得ます。新しいゲームがくれば自分も遊べるため、兄弟はかなり手が組みやすい相手です。また祖父母を味方につければ、その関係性から親側も抵抗しにくくなります。
家族を味方につけて有利な状況を作るだけでなく、逆に家族をダシにする手もありました。例えば、兄が何かを買ってもらった時は、絶好の機会と言えます。「お兄ちゃんばっかりずるい」と不公平感をアピールし、その埋め合わせを狙うという展開です。
ですが、こういった攻めの姿勢による交渉は、頻度が多いと効果が薄れてしまうもの。ワンパターンな攻めは読まれやすく、慣れてしまえば簡単に聞き流されてしまいます。そんな時は、押すばかりでなく引いてみるのもひとつの手でした。
敢えておねだりを控え、言いつけを守って「いい子」で過ごしていると、親側が「何か欲しいものはないの?」と歩み寄ってくることがあります。しかし、ここで飛びつくのはやや早計。この段階だとちょっとしたご褒美程度の意識なので、数千円もするゲームソフトはまだ視野に入っていません。
何かを買って欲しい気持ちをぐっと押さえつつ、「今は特にないかな」と返してその場をやり過ごすと、そのあっさり対応がかえって気になり、親の記憶に残ります。こうしたやりとりを数回繰り返した後、満を持して「欲しいものがあるんだけど」と切り出すと、やっと言ってくれたという気持ちが沸くため、親側がOKを出しやすい心境になります。
もちろんこれは、個人差や環境差があるので、上手くいかない場合もありました。ですが、押しても効果がない時は、引くことで状況の好転を狙うのもひとつの手。忍耐と覚悟を必要としますが、回り道こそ一番の近道というのも案外真理です。
* * *
親も子供も、お互い目の届く範囲でしか情報を集められなかった時代。だからこそ、立ち回りひとつで状況を有利に運ぶこともできました。とはいえ、やはり安いものではないので、成功率はむしろ低め。何度もチャレンジを繰り返すことが最大の秘訣だったのかもしれません。
ファミコンの時代からずいぶん時が経ちましたが、子供が親にゲームをねだる流れは今も変わらずに続いています。ですが、スマホゲームの課金アイテムなど、欲するものの形には変化が訪れている模様。10年後、20年後はどんなものをねだっているのか、想像してみるのも面白そうです。
(臥待)
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