『ボトムズ』装甲厚はバーベキュー用の鉄板並? 傑作メカ・ATの「ヤバすぎる」設計思想
マグミクス / 2023年1月29日 6時10分
■ミリタリー系リアルロボットの傑作、アーマードトルーパー
ミリタリーSFロボットアニメの傑作『装甲騎兵ボトムズ』。放送40周年を迎える2023年現在でも根強い人気を誇る名作で、2月10日には原作・監督を務めた高橋良輔氏(「高」は「はしごだか」が正式表記)の小説がリリースされるほどです。
『ボトムズ』の魅力はなんと言ってもミリタリー要素満載のハードな世界観にあります。特にアストラギウス銀河を二分する100年戦争末期に登場した人型兵器アーマードトルーパー(以下、AT:Armored Trooper)は多くのファンの心をつかみ、その後の作品に多大な影響を与えました。
この記事ではATの危険な魅力と、その極端な設計について紹介します。
●超兵器AT
ATは極めて汎用性の高い超兵器です。その全長は約4mほどで、最高速度時速約80kmで疾走し、手足を使った3次元的な機動が可能です。さらに機銃やミサイルなど数多くの武装を使いこなし、アタッチメントを付ければ宇宙空間で活動できます。
そして何より生産性に優れ低コスト。町工場程度の設備でも修理できるメンテナンス性の高さも魅力です。
●鉄の棺桶AT
経済性と汎用性に優れたATですが、同時に極めて生還率の低い兵器としても知られています。ATの装甲は機銃が貫通してしまうほど薄く、満足な生命維持装置すら備わっていません。まさに鉄の棺桶であり、ATとAT乗りはいつしかタイトルテーマのボトムズ(Bottoms:最低野郎)と呼ばれるようになったほどです。
ATには多くのバリエーションがありますが、ここではギルガメス軍の主力ATであり、その代表とも言えるATM-09-ST スコープドッグを例にして紹介します。
■装甲の厚さはバーベキュー用鉄板と同じくらい?
無骨な外観だが乗員の生命を守るには頼りない装甲 画像は「1/20 スコープドッグ メタルスペックVer.」(BANDAI SPIRITS)
スコープドッグのスペック表でまず目につくのは装甲厚です。なんと6~14mmしかありません。最薄部はバーベキュー用に販売されている鉄板と同程度の厚さです。
参考までに第二次世界大戦の戦車を例にすると、アメリカのシャーマン戦車が50~70mm程度、ドイツの4号戦車が50~80mm程度の装甲をまとっており、現在のMBT(Main Battle Tank:主力戦車)の正面装甲は500mm程度と言われています。
スコープドッグの装甲は最厚部でも14mmしかありませんから、作中で弾丸がスパスパ貫通していたのもうなずけます。
●良く燃えるのに消火装置がない
ATはマッスルシリンダーと呼ばれる人工筋肉で駆動し、その内部にはポリマーリンゲル液と呼ばれる極めて可燃性の高い液体が詰まっています。ところがATには消火装置や機密構造がありません。
つまり被弾したら高確率で火ダルマになってしまうのです。
●生命維持装置は与圧服頼み
アタッチメントを装着することで宇宙空間でも活動できるATですが、コクピットが与圧されておらず、生命維持装置もついていません。パイロットは与圧服を着用する必要があります(TV版)。スタンディングタートルのように水中で活動できるATもありますが、局地戦用だと言えるでしょう。
●人命よりもコストを優先した設計思想
このようなATの特徴から見て取れるのは、機体どころか人命まで消耗品と見なす極端な設計思想です。新品の機体を生産し続ける方が、修理するよりも低コストで手間がかかりません。問題はAT乗りまで同様の扱いをしている点です。
おそらくATの設計段階でシミュレーションをしたのでしょう。その結果、コストをかけて乗員が生還できるATを生産するよりも、コストを抑えて大量生産し、AT乗りごと補充した方が「大局的にはお得」だと判断したに違いありません。
兵器よりも人命が安くなってしまう戦場のリアリズム。アニメとしてデフォルメされていますが、実際にあったことですし、条件さえ揃えば21世紀にも起きえるでしょう。いや、もしかしたら…。
放送開始から40年を迎えてなお『装甲騎兵ボトムズ』のテーマは少しも色褪せていないのです。
(レトロ@長谷部 耕平)
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