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マンガを読んで「国境」を飛び越えろ! 「MANGA ART HOTEL, TOKYO」代表が熱く語る理由とは

マグミクス / 2019年2月18日 18時0分

マンガを読んで「国境」を飛び越えろ! 「MANGA ART HOTEL, TOKYO」代表が熱く語る理由とは

■施設コンセプト「漫泊」とは何か

 2019年2月1日(金)、神保町エリアにオープンしたホステル形式の宿泊施設「MANGA ART HOTEL, TOKYO(マンガ アート ホテル トーキョー)」。5000冊の通好みなマンガに一晩中浸れる空間として、国内外問わず多くの注目が集まっています。

「MANGA ART HOTEL, TOKYO」はビルの4階と5階の2フロアから成り、広さは計170平方メートル、4階に女性専用の16室、5階に男性専用の19室が入っています。

 本棚が見え隠れしながら立体的に広がるフロアは、洞窟のような作りに。加えて、ベッドユニットの向きを上下左右に振ることで、空間に奥行きを持たせつつ、居心地の良さも実現しています。ベッドの広さはシングルが100cm×200cm、セミダブルが120cm×200cm。全部屋に貴重品を収納・保管できるセキュリティボックスが設置されています。

 5000冊のうち、800~900冊はインバウンド(訪日外国人)なども楽しめるよう、英語で書かれた作品となっています。「題材がニッチだったり、主人公の立場が珍しかったり、マイノリティーだったりする作品を選びました」(運営企業dot〈ドット/東京・中央〉の共同代表取締役・御子柴雅慶さん)

「MANGA ART HOTEL, TOKYO」の内観(画像:dot)

 施設のコンセプトは「漫泊(まんぱく)」。「MANGA ART HOTEL, TOKYO」のウェブサイトには、次のように説明されています。

「何かのついでとか、片手間とか、暇つぶしではなく。ただひたすら、マンガの世界に浸る“一晩中マンガ体験”です。他にしなきゃいけないことがあるのに、つい手が伸びて、時間も忘れて読み耽(ふけ)る。そんな、マンガへの心地いい敗北感が、ここにはあります。出会ってしまったら、最後。読めば読むほど引き込まれていく空想の世界へ。さあ今夜は、マンガの吸引力に負けてしまいましょう」

■御子柴共同代表の理念は「相互不理解の解消」

 そんな「MANGA ART HOTEL, TOKYO」の内覧会が行われたのは、オープン4日前の1月28日(月)。御子柴さんは会の冒頭で、今回の開業を支えた自身の理念についてこう語りました。

「MANGA ART HOTEL, TOKYO」の内覧会で話すdotの御子柴さん(マグミクス編集部撮影)

「僕は『世界平和』的な理念を持っています。その世界平和を達成するためには(他者との)相互不理解を解消しなければなりません。そのプロセスとして、共通のコミュニケーションをとれる場所を増やしていきたいです」

「相互不理解の解消」のプロセスとしてのマンガ――。いったいどのような意味でしょうか。

■新卒で楽天入社、営業ランキング全国1位

 陸上自衛官の父親と、シベリア抑留を経験した祖父(母方)を持つ御子柴さん。そのような家庭環境から、幼いころから戦争や社会問題に自然と関心を持つようになりました。大学時代は国際紛争のゼミを専攻しました。

「そこで勉強して、仲間たちとコミュニケーションを重ねるにつれ、国際紛争や戦争の重要な解決策のひとつが『相互不理解の解消』と感じたのです。そういえば、『機動戦士ガンダム』も、地球連邦軍とジオン軍が分かりあえないということがテーマですよね」

ビルの4、5階に入る「MANGA ART HOTEL, TOKYO」(マグミクス編集部撮影)

 御子柴さんは2010(平成22)年4月、新卒で楽天に入社し、全国営業ランキングで1位を達成。その後、楽天シンガポール立上げに参画後、同社を退職しました。

「楽天シンガポール時代はシンガポール人だけでなく、マレーシア人や中国人、ベトナム人、韓国人など、さまざまな人たちと働いていました。苦労も多かったですが、やりがいはありましたし、何よりコミュニケーション能力が鍛えられました」

 2014年11月に独立し、東京や名古屋を拠点に、コンサルティングやシェアリングエコノミーに携わったのち、吉玉泰和さん(現dot共同代表取締役)とともにdotを設立。現在では、日本全国で不在型簡易宿泊所やホテル旅館、有人型ホステルなど累積400部屋の運営を手掛けるまでに成長しました。

■「国家」に依存しないプラットホームとは

 そのような経験を通して、ふたたびがよみがえってきた大学時代に抱いた思い。「相互不理解の解消」。自分には何ができるのか――。そう考えた御子柴さんは「個人外交」に活路を見いだすようになりました。

 個人外交とは「『国家』に依存しないグローバルなプラットホームで、個人が自由に国境を越え、人種や宗教、言語を超え、さまざまな人々と交流すること」です。そこで御子柴さんが注目したのは、大手民泊サービス「Airbnb(エアビーアンドビー)」。時は2014年5月の日本法人「Airbnb Japan」設立以前のことでした。

蛍光イエローと乳白のアクリル板を入れ子構造で仕上げたエントランス(マグミクス編集部撮影)

 Airbnbの宿泊部屋のタイプは「まるまる貸切」「個室」「シェアルーム」の3つに分類されます。御子柴さんが注目したのは、部屋を丸ごと貸切る「まるまる貸切」ではなく、ホスト(宿泊場所を提供する人)がいる「個室」タイプでした。

「そこに個人外交の可能性を感じたのです。それから世界50都市は巡ったでしょうか」

 バンクーバーの絵描きのシングルマザー、ポートランドの彫刻家、世界中の猫好きの人たち。さまざまな人たちと個人外交を行った御子柴さん。その際に気づいたことがあります。

「個人外交を行うためには、相手と漫然と会話をしているだけではダメなんです。ネタがすぐに尽きてしまいますから。必要なのは、相手と自分の『共通言語』を見つけること。サッカーだったり、音楽だったり、ネタは何でもいい。共通言語を見つけて、お互い好きな話をすれば、深いコミュニケーションにつながります」

 その後、吉玉さんとdotを設立。宿泊事業の企画開発を手掛ける一方、今回、「グローバルに通用する共通言語を持った新しい宿泊施設」を展開するため、「MANGA ART HOTEL, TOKYO」を開業することに。そのツールになぜマンガを選んだのは「日本が誇る文化産業のひとつだからです。あと、私たちがもともとマンガ好きだったということもあります(笑)」

■マンガを通して「多様性を楽しもう」

 2018年9月ごろから4か月間、秋葉原のマンガ喫茶で毎日30~50冊のマンガを日々読みふける日々を送った御子柴さん。マンガ喫茶に置いていない作品も知るため、インターネットで調べつくしました。奮闘の結果、約600タイトル・5000冊を選びました。マンガを通して「相互不理解の解消」を実現すべく、各マンガにコメントカードを付けることに。その思いを必死に文字にしました。

「『読む』という行動をうながすには、ストーリーの内容を客観的に書いたりするだけではダメだと思い、読み手の感情に訴えかける、感情を揺さぶることを念頭に置きました」

約600作品に添えられたコメントカード。日本語と英語の2パターンで書かれている(マグミクス編集部撮影)

 マンガを人々の「共通言語」に据えたホテル、それが「MANGA ART HOTEL, TOKYO」。

 フロアに置かれたマンガの主人公は先述のとおりマイノリティーなどで、そのような目線から描いた作品が多くなっています。御子柴さんは開業を振り返って、最後にこう訴えます。

「LGBTをはじめとして、現在、マイノリティーに関するさまざまな事柄があります。僕はマンガを通して、彼らのような人たちに対して、『寛容になろう』『リベラルになろう』と言いたいです。『多様性を認めよう』という偉そうな言い方でなく、一緒に『多様性を楽しもうよ』と」

 相互に不理解を解消し、相互に寛容になることで、多様性を楽しもう――。それが御子柴さんの言いたいこと。

 御子柴さんは共同代表という立場ですが、「MANGA ART HOTEL, TOKYO」に当面の間、常駐し、利用者との「共通言語」を模索し続けていきます。

(マグミクス編集部)

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