月刊、青年誌に移籍して「進化」した人気マンガ 作者「メリット多い」
マグミクス / 2023年2月3日 19時10分
![月刊、青年誌に移籍して「進化」した人気マンガ 作者「メリット多い」](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/magmix/magmix_135643_0-small.jpg)
■月刊連載で攻めまくり!
2022年の年末、「週刊少年ジャンプ」2023年4・5合併号(集英社)で『HUNTER×HUNTER』が、「週刊連載ではない掲載形態」になるという発表があり、大きな話題となりました。好きな作品を毎週読みたいと思うファンにとっては、少し寂しい部分もあるかもしれませんが、マンガファンならば、まずは冨樫先生の体調回復と今後の作品発表をじっくり待ちたいものです。
今回は、掲載方式が変わっても……いや変わったあとの方がむしろ勢いがスゴいのでは? と思わせてくれる人気マンガを紹介します。
●『To LOVEる -とらぶる- ダークネス』
まずは「To LOVEる」シリーズの『To LOVEる -とらぶる- ダークネス』(マンガ:矢吹健太朗 脚本:長谷見沙貴)です。もともとは男子高校生の主人公・結城梨斗が美少女たちにモテまくる、お色気要素満載のラブコメ作品『To LOVEる -とらぶる-』が、2006年から2009年まで「週刊少年ジャンプ」で連載されていました。その後、スピンオフ作品として『To LOVEる -とらぶる- ダークネス』が、「ジャンプスクエア」にて2010年から月刊連載でスタートします。
すると、雑誌タイトルから「少年」が外れたからなのか、お色気要素も大人の階段を上ってパワーアップ。ストーリーも絵のセクシーさも、どこまで攻めることができるのか、表現の限界に挑戦しているかのような勢いで、発売されるたびにネットなどで話題になっていました。挙句の果てには「ジャンプSQ.」が作品に「乳首が登場した回数」を発表するなど、公式側がネタにしてしまうほどです。特に男性読者にとっては、嬉しい連載方式の変更だったと言えそうです。
●『ヴィンランド・サガ』
続いては「月刊アフタヌーン』で連載中の、『ヴィンランド・サガ』(著:幸村誠/講談社)です。11世紀のヨーロッパを舞台にヴァイキングたちの生きざまを描き、そのなかで主人公・トルフィンがやがて虐げられし者たちを救うため、新天地「ヴィンランド」を目指す物語が描かれます。
もともとは「週刊少年マガジン」にて2005年から連載されていましたが、同年10月に連載を終了し、12月から「月刊アフタヌーン」で連載が再開されました。もともと緻密で迫力ある描写が、ファンから熱狂的に支持されている作品でしたが、月刊に移ったことで一度に読めるページ数も増し、大胆な構成による読み応えも抜群です。
■作者自身が語る月刊連載移行のメリットとは?
『UQ HOLDER!』第28巻(講談社)
●『UQ HOLDER!』
現在は参議院議員としても活躍している、赤松健先生の『UQ HOLDER!』も週刊連載から月刊連載に移った作品のひとつです。『UQ HOLDER!』は、同じく赤松先生が描いた『魔法先生ネギま!』の未来の世界を舞台に、不死者となった主人公・刀太の冒険が描かれます。赤松先生が得意とするラブコメ要素はもちろんですが、バトルファンタジーとしての迫力も満載で、月刊連載でページ数が多くなったことで、能力者同士の細かい心理戦も読みごたえ抜群です。
そして、移籍の理由については、赤松先生が自身のツイッターで「もう私も48才ですし(^^;)、23年間もマガジンでやってきて、体力的には相当厳しくなってきました。そろそろ後進に席を譲り、今後は6割くらいの仕事量で、少し余裕を持って作家活動をやっていければと思います。」と、マンガ界全体も考えた理由を語っていました。
●『ジョジョの奇妙な冒険』
最後は言わずと知れた名作『ジョジョの奇妙な冒険』(著:荒木飛呂彦)です。1986年から2004年までは「週刊少年ジャンプ」で連載され、第7部「スティール・ボール・ラン」連載中の2005年からは、月刊マンガ雑誌である「ウルトラジャンプ」に移籍して連載されています。もともと独創的世界観と芸術的な絵で大きな支持を得ていましたが、連載方式が月刊になったことによるメリットを作者の荒木飛呂彦先生自身が過去に語っています。
2006年に文化庁メディア芸術祭10周年記念企画の「日本のメディア芸術100選」に選ばれた後の2008年のインタビューによると、荒木先生は「週刊連載というのは、短いページのなかで起承転結の妙を読者にみせていかなければならない」「(月刊連載で)ページが多いと、起承転結を2回いれる余裕がうまれ、こまかい心理描写もできる」と両者の違いを語っています。
さらに、掲載誌が変わり、読者の年齢層が上がったことを受けて「40歳をこえて、倫理性にまつわる表現も描かなくちゃダメだろう、と思った」「ぼくもターゲットを若い読者だけに限定していたら、作品が窮屈になるんじゃないかな、と思った」と、自身の意識の変化についても語っています。事実、『ジョジョ』の7部、8部は少年誌では描けない過激シーンも増えていきました。
作品・作者によって、それぞれ合っている連載方式は変わって来ると思いますが、今ではネットを通じて独自に作品を発表する人びとも増えているため、今後はさらに新たな連載方式が生まれて来るかもしれません。
(吉原あさお)
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