【韓国アニメ時報】伝説的アニメ『テコンV』で紐解く"コリアンロボットアニメ史"
マグミクス / 2019年2月26日 18時0分
■一大ブームをおこした『ロボット テコンV』
『ロボット テコンV』というロボットアニメを聞いたことがありますか?
1976年から1990年まで韓国で展開されていた巨大ロボットの『テコンV』が活躍するアニメ映画シリーズ。韓国国内で70年代後半から80年代にかけて非常に高い人気を獲得していました。
『テコンV』は、韓国アニメの歴史において独特の存在感を示しています。韓国の国技テコンドーを駆使して戦う主人公と巨大ロボット、という組み合わせ。テコンVは、搭乗者と混然一体となり、搭乗者の強さがそのままテコンVの強さになるというシステムのロボットです。
ロボットが華麗にテコンドーで戦うだけでも興奮しますが、物語の登場する主人公キム・フンはテコンドーの韓国代表となりテコンドー世界大会に出場するほどの達人。シリーズ初期では、敵のロボットを粉砕した後は生身で敵の首領を倒すのが定番でした。
また、突出したドラマ性の高さもテコンVの特徴のひとつ。最初の敵であるカープ博士は、自分の背の低さをコンプレックスに悪の道に堕ちた科学者です。シリーズ第1作と第2作に登場するアンドロイド少女メリーは、自分を作ったカープ博士と主人公キム・フンとの間で揺れ動き、悲劇的な最期を遂げます。
そして、当時の韓国アニメとしては重厚でバラエティーに富んだ世界観も見逃せません。シリーズが進むにつれて、闇落ちした科学者から宇宙からの侵略者や海底人、自我を持ったアンドロイドなどさまざまな敵がテコンVの前に登場。これらの特徴のおかげで同作品は韓国を代表するキャラクターとなっていきます。
一方で同作品には、日本のアニメ『マジンガーZ』、『グレートマジンガー』などのキャラクターの盗作ではないかという指摘があります。2018年夏に、『テコンV』は『マジンガーZ』の盗作ではないと韓国地裁が判断したことが、日本国内でも話題になりました。
こういった経緯から、韓国を代表するキャラクターである『テコンV』には、常に複雑な感情が付きまとうことになります。韓国の若い世代には同作品を古くさいと言って嫌う人もいるといいます。
■下請けで培ったアニメ技術が花開く
しかし『テコンV』が非常に優れたコンテンツであったことに変わりはありません。同作品は韓国のアニメの歴史とも密接に関連しているのです。
最初の韓国アニメは、1956年にCM映像として制作されたアニメ「ラッキー歯磨き」とされています(最近では『OBシナルコ』のCMが最初のアニメという説もあります)。そして、1967年には韓国初のカラー長編アニメ映画『ホン・ギルドン』が製作されています。
『ホン・ギルドン』監督のシン・ドンホンさんは、眞露焼酎CM(1960年)などアニメCMで知られる人物。同作品のヒットにより1960年代末にはいくつかのアニメ映画が製作され”韓国第一次アニメブーム”が到来します。
日韓合同で制作された映像が見られる『妖怪人間ベム 初回放送('68年)オリジナル版 DVD-BOX<通常版>』(ビクターエンタテインメント)
1965年に日韓国交回復条約が締結されると、日本と韓国両国間の交流の一環としてアニメが制作されます。初の日韓合作作品として、1967年には『黄金バット』が、1968年には『妖怪人間ベム』が製作され、東洋放送で放送されました。アニメーターの森川信英さんが韓国に渡り、上の2作品の作画監督として技術指導を行いました。
これが契機となり、韓国で下請会社が多く作られるようになります。70年代初期には、タツノコプロダクションや日本アニメーション、東映動画といった日本のスタジオが下請によるアニメ制作を開始。そうした中で『ロボット テコンV』が、1976年に上映されます。
テコンVシリーズ『’84テコンV』(1984年)の制作協力として名前がクレジットされている教育動画は、日本が韓国に下請を行い始めた最初期から関わっている会社です。
東映動画(現在の東映アニメーション)の下請けを行っていた教育動画には、日本のアニメノウハウがあったとされ、そこで培った技術で制作した『’84テコンV』は、非常に見ごたえのある作品に仕上がっています。
『テコンV』の大ヒットにより70年代後半から80年代前半まで多くのアニメ映画が作られ、その大多数がロボットものだったことから同作品の影響が大きいをうかがい知れます。
2010年代に入り、韓国では『変身自動車 トボット』のヒットなどによりロボットアニメのブームが再熱中。21世紀のアニメだけあって、デザインもオリジナルであり洗練された作品が多くみられます。
具体的には『最強戦士ミニ特攻隊』、『バイクロンズ』、『ハローカーボット』、『燃えないでバスター』、『ロボテックス』、『鋼鉄消防隊ファイヤーロボ』、『ジオメカ』、『ダイノコア』といった作品が名を連ねています。
* * *
日本の下請けから始まった韓国アニメの歴史。そこからノウハウを蓄積し、独自の特色を開花させてきました。現在では韓国のアニメCGは、日本の技術を超えると言われるほどになりました。これから先、いったいどのようなアニメが誕生するのでしょうか。引き続き、韓国アニメをさまざまな視点から取り上げていきたいと思います。
(かに三匹)
(マグミクス編集部)
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