異常な火薬量だった『ダイナマン』放送40周年 モチーフが「野球」から「爆発」になった理由とは?
マグミクス / 2023年2月5日 9時20分
■最初のモチーフだった野球から一転、爆発に切り替わった経緯
本日2月5日は1983年に「スーパー戦隊シリーズ」第7作目に当たる『科学戦隊ダイナマン』が放送された日。今年が40年目にあたります。それまでになかった作風の変化などで、シリーズの分岐点となった作品でした。
本作は『野球戦隊』という仮タイトルからスタートしています。そのため決定されたデザインでも、野球のユニフォームとの共通点が多くなりました。ちなみにデザイン変更は撮影直前まで行われており、最初の撮影会では胸にチーム名がある、野球のユニフォームに近いものが公開されています。
しかし、この野球モチーフには内部から不安視する声が多く、「爆発」「ダイナマイト」という新たなモチーフを加えて『科学戦隊ダイナマン』というタイトルが決定されました。
一転して「爆発」「ダイナマイト」というモチーフが出てきたことを不思議に思う人もいるかもしれません。しかし考えてみれば、野球では「打線が爆発する」、「ダイナマイト打線」という言い回しがありますので、案外そういったところからの連想だった可能性があります。
完全な余談ですが、ダイナマイト打線で知られるプロ野球チーム「阪神タイガース」のニューダイナマイト打線が誕生したのがこの数年後のこと。1985年4月にはランディ・バースさん、掛布雅之さん、岡田彰布さんの「バックスクリーン3連発」がありました。
この爆発というモチーフが加わったことで本作の方向性は決まります。特撮ヒーロー番組では定番である爆発をメインに据えた作風でした。過去最高の火薬量を使った画面作りは「派手」の一言。色粉を使ったカラフルな爆発と相まって、インパクト絶大の画面作りに貢献しています。
オープニング画像から爆発の連発で、当時のファンからは「爆発戦隊」、「火薬戦隊」とまで言われていました。この後も火薬を大量に使った作品はありましたが、本作を超える量を使用したことはないそうです。つまり、シリーズでもっとも火薬を使った作品は本作ということになるでしょう。
ちなみに本来の「科学戦隊」の方は、ダイナマイトの発明によって化学が著しく進化したことからと思われます。そのためか、ダイナマンに変身する5人の若者は発明家のタマゴで、敵の「ジャシンカ帝国」の使う怪物は進化獣といったところに生かされたと考えられるでしょう。この科学と進化というキーワードは、最終回間際の決戦の時にクローズアップされています。
■子供だけでなくアニメファンも夢中にさせた魅力とは?
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本作がそれまでのシリーズと一線を画するのはアニメ的な作風の導入です。これには本作からキャラクターデザインとなった出渕裕さんの起用が大きく影響しました。出渕さんの抜擢は、本作のかじ取り役である鈴木武幸プロデューサーによるもので、TVアニメ作品『闘将ダイモス』で一緒だったことがきっかけだったそうです。
アニメ作品で通称「ブチメカ」と呼ばれるやられ役を生み出してきた出渕さんのデザインは、それまでの特撮作品とは違ったアニメ的な線でした。そのため、対象年齢の子供たちの受けはもちろん、一度は特撮番組を卒業したアニメファンが戻ってくるきっかけになったとも言われています。
もちろんデザイン面だけでなく、作劇にもアニメ的な要素を加えていました。それがヒーローたちと同年代の敵役の登用です。それまでのシリーズでは悪役と言えば強面のベテランというイメージでしたが、本作ではメギド王子というアニメの美形キャラにあたるキャラを登場させました。
さらに王女キメラというメギドのライバル的存在も登場させています。このキメラの人気は高く、前述のような作品本来のターゲットとは違う高校生や大学生の話題になりました。こういった人気からか、以後のシリーズではベテラン俳優の悪役と同じくらい若手悪役が登用されるようになります。
もちろん、戦隊側のメンバーも高い人気を誇っていました。特に星川竜/ダイナブラックを演じた春田純一さんは前作『大戦隊ゴーグルファイブ』(1982年)での人気により続けてのレギュラー役で、本作でもふたたびブラック役を演じています。当時の人気は高く、特撮ファンなら誰もが知ってる人気俳優でした。
本作の紅一点である立花レイ/ダイナピンクを演じた萩原佐代子さんも本作の活躍で、ファンから高い人気を得ています。後年、『超新星フラッシュマン』(1986年)では一転して悪役のレー・ネフェル役を熱演、近年では『ゴーカイジャー ゴセイジャー スーパー戦隊199ヒーロー大決戦』(2011年)でダイナマンの代表として、ふたたび立花レイ役を演じました。
しかし良いことばかりではなく、本作は急な時間短縮という思わぬトラブルに見舞われています。キー局であるテレビ朝日系列の番組編成上の都合で、30分番組だった枠が25分になりました。これは以降のシリーズも25分枠となり、『電磁戦隊メガレンジャー』(1997年)で日曜朝に時間枠が変更されるまで続きます。
この時間短縮により予告編を短くする、ダイナロボ合体シーンをマルチ画面にするなどのバンクシーンの簡略化といった方法で対処していきました。こういった形が結果的にテンポのいい画面作りにつながり、以降のシリーズに渡って引き継がれることになります。
オモチャ的にも好調だったシリーズでした。意外なことですが、実は戦隊シリーズで銃を持つようになったのは本作からです。もちろん、この銃になるダイナロッドはオモチャとして商品化されていました。もちろんメインアイテムだったダイナロボも、前作を上回る好調なセールスを記録しています。
本作は同時期に放送された特撮番組『宇宙刑事シャリバン』とともに幼児層だけでなく、ハイティーンの注目を集める作品となりました。その結果、戦隊シリーズが今日までつながる要因のひとつとなったと思います。
(加々美利治)
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