『FEエンゲージ』吹き荒れる賛否両論! クリアして見えた、評価点と課題点とは
マグミクス / 2023年2月4日 19時30分
■最新作を遊んだユーザーの評価がまっぷたつ!
2023年1月20日(金)にNintendo Switchで発売された、任天堂のシミュレーションRPGシリーズ最新作『ファイアーエムブレム エンゲージ』。しかし、ユーザーの間では賛否両論が巻き起こっています。何がウケて、何が問題視されているのか。そして、なぜそうなってしまったのかをネタバレなしで解説します。
●賛否の「否」ストーリーや設定が受け入れられない!?
『FEエンゲージ』は、邪竜復活の兆しに合わせるかのように千年の眠りから目を覚ました主人公リュールが、母である神竜王ルミエルの願いを受け継いで「紋章士」たちが宿る12の指輪を集める旅路を描くシミュレーションRPGです。
いざプレイを始めると、「竜の守人」の少女・フランが「目線をください!」と憧れのアイドルにするかのような接し方をしてきたりなど、本作はシリーズ屈指のレベルで「序盤のノリがアッパーで軽い」特徴を持ちます。
また、敵との戦闘中に紋章士の力をその身に宿す「エンゲージ」を行うと、主人公や仲間たちは髪の色や服装が大きく変化します。平たくいうなら「変身」です。
2015年に発売されたアトラスの開発によるコラボタイトル『幻影異聞録 #FE』は現代の芸能事務所に所属する少年少女たちが、異世界の英雄(=過去のシリーズ作の主人公や味方キャラたち)の力で変身して謎の侵略者に立ち向かう物語でしたが、中世風のファンタジー世界を舞台にこのノリを引き継いでいるのが『FEエンゲージ』だといえます。
シリーズ前作の『FE風花雪月』を「かつて学び舎を共にした仲間たちが戦争でそれぞれの祖国のために敵対する戦記モノ」とするなら、本作は「世界を旅して仲間を増やし、みんなで悪を討つ勧善懲悪の変身モノ」といえるでしょう。一概に良し悪しでは語れませんが『風花雪月』とかなりの温度差があるのは間違いありません。これに多くのユーザーが戸惑いを露わにしました。
●賛否の「賛」シミュレーション部分がシリーズ最高峰のデキ
一方、本作が多くのユーザーから称賛されているのは、シミュレーション(戦闘)部分の絶妙なバランス調整です。紋章士たちをエンゲージすると使えるようになる「エンゲージスキル」は「最大10マス離れている敵に命中率100%で5連発の攻撃」など、”ぶっこわれ”に思える効果が多く見られます。
しかし、遊んでみると”ぶっこわれ”どころか、そうしたスキルを活用することを前提とした絶妙なバランス調整がなされているのが本作。シミュレーション部分は「シリーズのなかでも最高峰」と称える声も見られます。
また、敵ユニットとのバトルにおける戦闘アニメも『風花雪月』から大幅に強化されました。『風花雪月』のバトルは大勢の一般兵も描画する「軍対軍」を重んじていたことに対し、『エンゲージ』は設定上は兵を引き連れつつも、バトルの描写は「1対1」に的を絞るという以前のスタイルに回帰しています。
表示されるキャラの数を絞った分、描写に力が入っているというわけです。『エンゲージ』のバトルで味方と敵がお互いの攻撃をかわしながら斬り結ぶ様は「勝手に動いている良質なアクションゲーム」を見ているかのようで、そのクオリティは特筆に値します。
難度の絶妙なバランス調整と戦闘アニメのかっこよさ、ふたつの要素のクオリティが非常に高いものとなっているので、本作に「シミュレーションゲームとしての歯ごたえ」を求める人には好評を博しています。
■『風花雪月』との温度差のワケは「開発会社の違い」
『ファイアーエムブレム 風花雪月』紹介映像より (C)2019 Nintendo / INTELLIGENT SYSTEMS Co-developed by KOEI TECMO GAMES CO., LTD.
『風花雪月』と『エンゲージ』がここまで毛色の異なるゲームになった理由は、開発会社(の座組)の違いにあります。『風花雪月』は、企画やコンセプト、キャラ、楽曲などは「FE」をずっと手がけてきたインテリジェントシステムズ(IS)によるものですが、それらを元にしたシナリオ、グラフィック、バトルのバランス調整など開発の大部分はコーエーテクモゲームスが担当しました。
ISが共同開発に至った経緯はコーエーテクモゲームスが数多くの戦記モノ(歴史モノ)を手がけてきた実績を買ってのことで、その目論みは大当たり。重厚なシナリオや設定、それらを土台としたキャラクターの関係性などが多くのユーザーの心をとらえました。しかし、その一方で「難度を高く設定しても、シミュレーション部分の歯ごたえが足りない」という声も一部では見られました。
そして、シナリオとシミュレーション部分への評価が正反対になったのが『エンゲージ』といえるでしょう。こうしたギャップの大きさが、今の賛否両論を巻き起こしています。
●クリアしての感想(ネタバレなし)
筆者は難度ハード+クラシック設定で本作の1周目を終えました。シミュレーション部分は、いい意味で何も言うことがありません。非常に悩みがいがありました。前述の通り戦闘アニメは本当にすばらしく、戦闘での雄姿を見ていて好きになったキャラもいたほどです。
ストーリーや設定面は、当初はかなり面食らいました。しかし、終盤になってくると「FE」シリーズらしいシリアスな展開になったほか、筆者が思わず首をかしげた設定やキャラの嗜好も、その一部はストーリーで「場当たり的なウケを狙ったものではない」と感じられる”拾い方”をされていたこともあり、現在の個人的な評価は「100点ではないがいいゲーム」、「これはこれでアリ」に落ち着きつつあります。
●本作はこんな人にオススメ
「ファイアーエームブレム♪ てーごわーい シミュレーション♪」とメインテーマに歌を乗せたテレビのCMソングが印象的だった本シリーズ。その歌の通りに「手強いシミュレーション」を求める人、『#FE』を楽しめた人、「中世風ファンタジー+変身モノ」のようなジャンルが気になる人などに本作は強くオススメできると感じています。
「FE」は『風花雪月』がシリーズ最高の売り上げを誇ったことも手伝い、ユーザーから「シリアスな戦記モノ」を求められているタイトルでもあります。そうしたストーリーやキャラクター同士の関係性の描写などを強く求める人には、本作はミスマッチかもしれません。
ただ、序盤のノリが軽いから悲壮感がないかというとそうではなく、クラシック設定でプレイして仲間が戦死すると、マップをクリアした時の散策会話で生き残った仲間たちがその死を惜しむ惜別のセリフが用意されています。これはいい意味でえげつないと感じました。
『ファイアーエムブレム エンゲージ』がどのような特徴を持つゲームであるかを知ることで、プレイ前のイメージや期待に振り回されることなく楽しめる人が少しでも増えてくれることを祈るばかりです。
(蚩尤)
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