ファミコン少年が「バレンタインデー」に目もくれず遊んだゲームは?「チョコよりも世界救いたい」
マグミクス / 2023年2月14日 14時10分
■チョコよりもファミコンが楽しかった!
本日2月14日は、改めて言うまでもなくバレンタインデーです。海外では国によってその意味合いが異なったりもしますが、日本国内では「好きな人や大事な人に、その想いや感謝を込めながらチョコレートなどを渡す日」といった認識が一般的です。
しかし、認識と実体験はまったく別の話。本命、義理、友チョコなどをもらえる人がいれば、当然無関係の人もいます。それは、令和だけでなく、平成、そして昭和でも変わりません。バレンタイン当日に呼び出されることなく、家でひたすらファミコンを遊んでいた少年たちも数限りなくいました。
チョコとは無縁だったファミコン少年たちは、当時どんなゲームをプレイしてバレンタイン当日を過ごしていたのか。80年代の当日前後に発売されたファミコンソフトを眺めつつ、当時の思い出を振り返ってみてはいかがですか。
●限られた選択肢のなかで遊びつくした1984年のバレンタイン
ファミコンが発売されたのは、1983年7月です。つまり、1984年の2月14日が、ファミコン誕生以来初めて迎えるバレンタインです。
しかし、当時はまだファミコンが出たばかりで、ゲームソフトのラインナップもまだ乏しい頃でした。1984年2月14日までに発売されたゲームは、10本をようやく超えた程度。そのなかには大人向けの『麻雀』や、勉強要素の濃い『ポパイの英語遊び』や『ドンキーコングJR.の算数遊び』なども入っていたので、選択肢は自ずと限られていました。
ファミコン少年たちが特に好んだのは、マリオの名が初めてタイトルに入ったファミコンソフト『マリオブラザーズ』や、ファミコンと同時発売だった『ドンキーコング』、『ドンキーコングJR.』、『ポパイ』の3本などが人気でした。当然、バレンタイン当日もこうしたタイトルの稼働率が高かったのは、火を見るよりも明らかです。
●1985年のバレンタインは、シューティングやアクションが台頭
そんなファミコンの初年度を経て、ラインナップが少しずつ増えていきます。1984年の年末向けには、ファミコンシューティングの代表格『ゼビウス』が発売。無敵コマンドの発見でさらに盛り上がったり、「バキュラ」(ゲーム内の空飛ぶ障害物)が壊せるといったデマに踊らされたりと、何かと話題になったゲームです。
また、独特の動きを制するプレイがクセになる『バルーンファイト』と『アイスクライマー』が、1985年1月に発売。この2本は、「協力プレイをしていたはずなのに、気がつくと対戦になってた」という体験を味わわせてくれる、非常にユニークなゲームでした。ちなみに『マリオブラザーズ』もその傾向があり、ファミコン初期は友達との仲を時に危うくしながら遊んだものです。
また当日ではありませんが、翌日の2月15日に『ギャラガ』が登場。この年のバレンタインは、シューティングや協力アクション(からの対戦アクション)などのプレイに明け暮れていました。
ちなみに、「数ヶ月に発売されたゲームを、バレンタインに遊んでたの?」と思われるかもしれませんが、当時の少年から見てファミコンソフトはかなりの高嶺の花。小遣いで買うには高く、親にねだるにしても誕生日やクリスマス以外だと没交渉もしばしば。そのため、手元にあるゲームをとことん遊び続けるのが、基本的なプレイスタイルだったのです。
●ストイックvs勝ち組!? 1986年のバレンタインは、格差が浮き彫りに……
ファミコン発売から2年ほど経つと、そのラインナップはかなりの充実を見せます。個々人で事情は異なりますが、ファミコンのプレイ体験は広がりを見せ、選択肢が増えていきました。
そんな1985年の末に、かなりパンチのあるゲームが登場しました。その名は『スペランカー』。本作は、ちょっとした段差を踏み外したり、コウモリの糞に当たるだけで死んでしまう、かなり繊細な主人公を操作するアクションゲーム。その難易度の高さに、投げ出す少年たちが続出しました。
そんな硬派なゲームもあれば、ふたり同時プレイができるシューティング『ツインビー』が1986年1月4日に発売。この『ツインビー』は自機に手がついており、お互いに手を繋ぐことも可能です。そのため、恋人同士がゲームのなかで手を繋ぎ合いながら遊ぶことも……! 同じファミコンを遊んでいるはずなのに、とんでもない格差が横たわっている気がしてなりません。
また、バレンタイン直前の2月8日には、西遊記をモチーフにしたアクションシューティング『ソンソン』が登場しました。ちなみに、こちらもふたり同時プレイが可能。友達と遊ぶのか、恋人同士でプレイするのか。はたまた、ひとりで『スペランカー』を楽しむのか。方向性の違いが如実に表れた年と言えます。
ちなみに、RPGブームの先駆けとなった『ドラゴンクエスト』は、この年の5月27日に発売。バレンタインの時期とは大きく離れており、その縁はかなり薄めでした。
■同じゲーマーでも「格差」が広がった?
チョコに目もくれず、世界を救っていたあの頃。画像は『ドラゴンクエストII 悪霊の神々』
●チョコよりも冒険! 王女との旅に胸をときめかせた1987年
初代『ドラクエ』のおかげでRPGの楽しさが徐々に広がり、満を持したタイミングとなった1987年1月26日に、『ドラゴンクエストII 悪霊の神々』が発売されました。シリーズ初のパーティ制が採用され、主人公たるプレイヤーの冒険は、もうひとりの王子と王女が支えてくれます。
特に王女はビジュアルも愛らしく、また犬の姿に変えられていたところを助けるなど、印象深い出会いもあったため、彼女に惹かれるファミコン少年が続出。「チョコなんてもらってる場合じゃない!」と言い放った……かどうかはさておき、彼女を作るよりも世界を救う冒険にのめり込み、ひたすら『ドラクエII』の世界を駆け巡りました。
ちなみに前年12月には、『マドゥーラの翼』や『レイラ』といったパッケージを美少女が彩ったゲームの登場も目を引きます。思えば、ゲームの美少女に惹かれていったのは、この頃からだったのかもしれません。
●冒険が忙し過ぎて、チョコをもらってる暇もない!? 充実したゲームライフに満ちた1988年
1988年は、後にメガドライブが発売され、前年にはPCエンジンも登場。ライバル機の登場も相まって、ゲーム業界はさらなる活気に包まれていきます。
前年12月には、パソコンで大ヒットを遂げた『ウィザードリィ』がファミコンに上陸。物語は最小限ながら、自らの手でダンジョンを攻略する手応えと、より強いアイテムを求めて戦い続けるハック&スラッシュ要素がプレイヤーを虜(とりこ)に。その魅力の高さはファミコン版でも変わらず、ファミコン少年たちもひたすらダンジョンに潜り続けました。
しかし、同じRPGというジャンルで、『ウィザードリィ』の独走を阻む協力なライバルも同時期にリリースされました。今も活躍を続ける人気シリーズの原点、『ファイナルファンタジー』が登場したのも1987年12月でした。映画のようなOPシーンや、意外な結びつきで驚かせたラスボスの存在など、こちらもファミコン少年たちの心を掴んで放しません。
そして1988年のバレンタインが間近に迫った2月10日、『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』が発売。シリーズ初の自由なパーティ編成や転職などの要素で、冒険に新たな深みが加わった名作が登場となれば、この年もチョコをもらってる場合ではありません。『ウィザードリィ』、『FF』、『ドラクエIII』と、RPG三昧の日々を過ごすのみです。
●80年代が終わっても、冒険の日々は終わらない……ファミコン全盛期が続く1989年
80年代も最後の1989年。翌年にはスーパーファミコンが登場し、ファミコンの活躍は徐々に少なくなっていき……と思いきや、1991年まではまだまだ最盛期のうち。1992年になっても100本近いファミコンソフトがリリースされ、ファミコンの現役時代は90年代にも及ぶほどでした。
前年の12月だけでも、令和でも大ヒットを遂げたボードゲームシリーズの1作目『桃太郎電鉄』、脱力系な世界観が唯一無二の『半熟英雄』、力の入った幕間と心を折る高難易度を両立する『忍者龍剣伝』、落ちものパズルの大ヒット作『テトリス』と、多彩なジャンルで人気作が続出。目移り必至のラインナップで、嬉しい悲鳴が上がる状態です。
ですが、ここでもやはり根強かったのがRPGです。前年のヒットを受け、待望の続編『ファイナルファンタジーII』が12月17日にリリースされました。この頃すでに『FF』人気も着実に積み上げられており、学校でも『ドラクエ』派と『FF』派に分かれるほどです。
年末に登場した『FFII』にゲーム少年たちは没頭し、1989年のバレンタインもプレイに熱中。結果、1987年から1989年までのバレンタインは、いずれも『ドラクエ』か『FF』で過ごした……という少年たちも少なくありません。2月14日は、彼らにとって普段と変わらぬ「冒険の日々」だったのです。
* * *
80年代のバレンタインは、RPGと共にあった──と表現するのはさすがに言い過ぎかもしれませんが、当時はこれらのゲームが特に人気を博しました。あれから30年以上の時間が経った2023年のバレンタイン、あなたはどのように過ごしますか? ちなみに筆者は、『ホグワーツ・レガシー』で魔法魔術学校に入学する予定です。……チョコ? なんですかそれ?
(臥待)
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